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高齢者と糖尿病

2017年12月15日掲載2021年3月31日改定版掲載

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私たちのからだは年齢を重ねると、視力や聴力などの感覚機能や筋力を含めた運動機能、心臓や呼吸の機能などが低下してきます。膵臓から出ているインスリンの分泌も同様で、加齢とともに減少していきます。また筋肉量の低下や内臓脂肪の増加、活動量の低下などから、血糖を下げるインスリンの効果が得られにくくなり、結果として糖尿病を持つ方の割合が増加します。高齢の方が糖尿病の治療に取り組む際には、からだの特徴に合わせた目標を設定し、安全を念頭においた治療方針を決める必要があります。

目次

高齢の糖尿病の方にはどんな特徴があるの?

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高齢の糖尿病の方は食後の血糖が高くなる傾向にあります。また、低血糖のときであっても、発汗、動悸、手のふるえなどの低血糖症状が出現しにくくなり、糖分をとるなどの対応をしないうちに重症な低血糖になることがあります。高齢の方の低血糖は、糖尿病の治療を続けることの負担感が増えたり、生活の質が低下したりすることにつながります。さらには、重症の低血糖は転倒・骨折や、認知症、心血管疾患の発症につながるといわれています。
加齢とともに薬がからだにたまりやすくなるなどの理由で、以前よりも効果が強くなって低血糖につながる、副作用が出るなどの危険性が高まります。また脳梗塞や虚血性心疾患、下肢末梢動脈疾患になる頻度が高く、症状が出ないこともあるので注意が必要です。

高齢の糖尿病の方の血糖コントロールの目標は?

糖尿病治療の目的は合併症を起こさないこと、合併症が進まないようにすることで、糖尿病のない人と変わらない生活の質が保てるようにすることです。そのためには、血糖値や体重、血圧、血清脂質などを適切な値に保つことが大切です。

高齢でない糖尿病患者さんの血糖コントロールは、合併症の発生と進行を抑えるために、治療強化が困難な場合を除き、できるだけHbA1c7.0%未満を目指します。
血糖コントロールの効果はどうやってわかるの?をご参照ください)

しかし、高齢の方では、年齢や認知機能・身体機能、併存疾患、重症低血糖のリスク、推定される余命などが様々であり、一律の目標設定が困難です。また、低血糖のリスクがある薬を使用する中で血糖コントロールを厳しくすることは、前述の通り高齢者では特に危険であり、血糖を下げすぎないように目標の下限値を決めることが適切と考えられます。これらの考え方をもとに、2016年に高齢者糖尿病の血糖コントロール目標が作成されました(図1)。主治医に血糖コントロールの目標を確認するとよいでしょう。

(図1)高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)
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治療目標は, 年齢, 罹病期間, 低血糖の危険性, サポート体制などに加え, 高齢者では認知機能や基本的ADL, 手段的ADL, 併存疾患なども考慮して個別に設定する.ただし, 加齢に伴って重症低血糖の危険性が高くなることに十分注意する.

注1) 認知機能や基本的ADL(着衣, 移動, 入浴, トイレの使用など), 手段的ADL(IADL:買い物, 食事の準備, 服薬管理, 金銭管理など)の評価に関しては, 日本老年医学会のホームページ(外部リンク)を参照する.エンドオブライフの状態では, 著しい高血糖を防止し, それに伴う脱水や急性合併症を予防する治療を優先する.

注2) 高齢者糖尿病においても, 合併症予防のための目標は7.0%未満である.ただし, 適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合, または薬物療法の副作用なく達成可能な場合の目標を6.0%未満, 治療の強化が難しい場合の目標を8.0%未満とする.下限を設けない.カテゴリーIIIに該当する状態で, 多剤併用による有害作用が懸念される場合や, 重篤な併存疾患を有し, 社会的サポートが乏しい場合などには, 8.5%未満を目標とすることも許容される.

注3) 糖尿病罹病期間も考慮し, 合併症発症・進展阻止が優先される場合には, 重症低血糖を予防する対策を講じつつ, 個々の高齢者ごとに個別の目標や下限を設定してもよい.65歳未満からこれらの薬剤を用いて治療中であり, かつ血糖コントロール状態が図の目標や下限を下回る場合には, 基本的に現状を維持するが, 重症低血糖に十分注意する.グリニド薬は, 種類・使用量・血糖値等を勘案し, 重症低血糖が危惧されない薬剤に分類される場合もある.

【重要な注意事項】 糖糖尿病治療薬の使用にあたっては, 日本老年医学会編「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を参照すること.薬剤使用時には多剤併用を避け,副作用の出現に十分に注意する.
日本老年医学会・日本糖尿病学会 編・著:高齢者糖尿病診療ガイドライン2017,P.46,南江堂,2017より引用

血圧にもコントロールの目標があるの?

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 脳卒中や腎障害を進行しないようにするために、血圧の管理は重要です。一方で、特に後期高齢者や合併症のある患者さんでは、血圧を下げすぎるとかえってイベントが増えるとされています。そのため、糖尿病の有無に関わらず高齢の高血圧患者においては、65~74歳では140/90mmHg未満、75歳以上では150/90mmHg未満を目標とします(75歳以上で忍容性がある場合には140/90mmHg未満を目標)。加えて、糖尿病患者で更なる降圧が可能な場合には、130/80mmHg未満を目指します。いずれにせよ、過度の血圧降下は良くないとされています。主治医にあなたの血圧の目標を確認するとよいでしょう。サルコペニア、フレイルがある場合は、血圧を下げると転倒や骨折の危険性が高くなりますので、血圧を測る習慣や、転ばないように予防をするなど、日頃から注意が必要です。

高齢の糖尿病の方の目標体重は?

 これまで、目標体重は一律BMI22が望ましいと考えられていましたが、高齢の方の場合はかならずしも当てはまらず、痩せすぎも良くないことがわかってきました。
ご年齢によって、目標体重は以下のように異なります。
今のご自分の目標体重はどのくらいが望ましいのか、主治医と確認しておきましょう。

目標体重(kg)の目安
総死亡が最も低いBMIは年齢によって異なり、一定の幅があることを考慮して以下の式から算出する。
  65歳未満:[身長(m)]2×22
  65歳から74歳:[身長(m)]2×22~25
  75歳以上:[身長(m)]2×22~25
※:75歳以上の後期高齢者では、現体重に基づき、フレイル、基本的ADL低下、併発症、体組成、身長の変化、食事状況や代謝の状況を踏まえて判断します。
糖尿病診療ガイドライン2019 参照

高齢の糖尿病の方の食事療法の注意点は?

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食事療法は高血糖や脂質異常症、肥満の改善に有効です。性別・年齢、肥満度、血糖値、合併症の有無、活動量などから、必要なエネルギー量が決まります。一般的にはエネルギー比率は炭水化物を50~60%、タンパク質を20%以下から摂取し、残りを脂質で摂取することを目安にするとよいでしょう。実際には目安に比べてたんぱく質の摂取が少なくなりやすいと言われており、たんぱく質摂取が少ないと筋力が落ちやすくなるため、注意が必要です。

総エネルギー量は、年齢ごとの目標体重、身体活動量によって異なり、以下の計算式で計算します。

   〇目標体重については、前の項を参照ください。

   〇身体活動量
   軽い労作 :25~30kcal/kg (座っていることがほとんど)
   普通の労作:30~35kcal/kg (座っていることが多いが、通勤・家事・軽い運動を行う)
   重い労作 :35~kcal/kg (力仕事、活発な運動習慣がある)

例えば、70歳で身長155 cm、日常的に買い物や家事などをご自身で行っている方の場合、
身長(m)×身長(m)×22~25で計算すると、
目標体重は、1.55×1.55×22~25 = 52.9~60.1 kg となります。
ここから、1日の総エネルギー摂取量は、
52.9~60.1×30~35 = 1587~2104 kcal
程度となります。

同じ身長の方でも、体の状態に応じて必要なエネルギー量が変わります。医師・管理栄養師と相談しながら、食事の内容を確認しましょう。
サルコペニア・フレイル(加齢に伴う筋力低下や虚弱状態のこと)の予防のためには、重度な腎障害がなければ十分なタンパク質を摂ることが推奨されています。高齢者の方は食事制限による体重減少でサルコペニアになりやすいと言われます。低栄養の方は栄養バランスに配慮した上で、比較的多めにエネルギー摂取することが望ましいとされています。

また、ビタミンやミネラル、カルシウムも適正に摂る必要があります。血糖コントロールの観点からは緑黄色野菜の摂取がすすめられています。一方で、腎障害が進んでいる方は、カリウムを取りすぎないように注意する必要があります。

糖尿病の食事療法は、“この食材は絶対食べてはいけない”というものはなく、全体のバランスが大切です。食事療法を続けていくために、主治医や管理栄養士へ好みや長年の食習慣について伝えながら、ご自分にあった食事療法について確認するとよいでしょう。食事療法については、こちらも併せてご覧ください。

高齢の糖尿病の方の運動療法の注意点は?

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定期的な運動習慣は血糖コントロール・脂質コントロールだけでなく、体力維持、気分転換につながります。しかし、糖尿病以外の病気がある場合は、運動を行う前に主治医に運動の可否や運動の強度について確認してください。体力には個人差がありますので、運動を行う際は、急激な運動は避け、医師に許可された範囲内で、軽い運動から始めて無理をせず安全に行うことが大切です。具体的には家事や買い物など日常生活での動作を増やしながら散歩や体操などの有酸素運動を行うとよいといわれています。また、運動により脱水になる可能性がありますので、しっかり水分補給をしながら行いましょう。

高齢の糖尿病の方の薬物療法の注意点は?

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高齢の方には腎臓や肝臓の機能が低下している方が多く、そのような方が血糖を下げる薬を使うと、薬を排泄・分解する力が弱いために、薬が以前よりも効きすぎて低血糖になったり、副作用がでたりすることがあります。
また、高齢者の方では低血糖のときに、自律神経症状である「汗をかく」「ドキドキする」「手がふるえる」などの症状がはっきり出ない場合があります。また、「頭がくらくらする」「目がかすむ」「ろれつが回らない」「元気がない」など典型的でない低血糖症状を示すため、低血糖が見逃されやすく、結果として重症低血糖を起こしやすくなります。
SU薬やグリニド薬を飲んでいる方、インスリン治療を受けている方は、重症低血糖を起こす可能性があります。血糖コントロールの目標について主治医と相談し、ご自分が自覚されている症状についてよく主治医に伝えましょう。また、食事が十分にとれていない状況や、体調が悪いときに(シックデイ)これらの薬を使い続けると、血糖が下がりすぎることがありますので特に注意が必要です。低血糖にならないようにするための注意、低血糖になったときの対応方法について、主治医や薬剤師、看護師に確認をしたらよいでしょう。ご自身の使用しているお薬がわからない方は、一度確認するようにしてください。

サルコペニア・フレイル・認知症のお話

サルコペニアという言葉を聞いたことはありますか?加齢とともに生じる骨格筋の質・量の低下を「サルコペニア」といいます。サルコペニアは身体の機能とともに、血糖を調節する機能が低下するため、糖尿病になりやすいといわれています。また、体重が減ったり、筋力が低下したりするので、糖尿病の方は1.4~4倍で転倒しやすいといわれています。

一方、フレイルとはfrailty(虚弱)に由来するもので、高齢になり筋力・活力が衰えて、からだの予備能力が低下した状態をいいます。高齢者の健康と病気の中間的な段階で、要介護になる前の状態をいいます。このように、サルコペニアとフレイルは密接に関連し、高齢者がフレイルに至る大きな要因がサルコペニアです。 サルコペニア・フレイルがある場合は、体重を減らさないようにし、十分なエネルギーとたんぱく質を摂取するようにしましょう。

また、糖尿病の方がアルツハイマー病になる可能性は、糖尿病がない方と比較すると約1.5倍、血管性の認知症になる可能性が約2.5倍近く高いといわれています。糖尿病の方は注意力や記憶力などの低下が起こりやすいといわれているため、治療の調整やご家族のサポート、地域の支援が必要になることがあります。不安なことがあったら、主治医に相談するとよいでしょう。

認知症と糖尿病をおもちの方の療養については、こちらのコンテンツもご覧ください。 また、認知症という疾患についてさらに詳しく知りたい方は、「国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 認知症情報サイト(外部リンク)」もご覧ください。
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参考文献

  • 日本糖尿病学会 編著:糖尿病診療ガイドライン2019. 南江堂, 2019
  • 日本糖尿病療養指導士認定機構 編著:糖尿病療養指導ガイドブック2021. 日本糖尿病療養指導士認定機構, 2021
  • 日本糖尿病学会 編著:糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂, 2020
  • 日本老年医学会・日本糖尿病学会 編著:高齢者糖尿病診療ガイドライン2017. 南江堂, 2017

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