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妊娠と糖尿病

2017年2月6日掲載

お母さんの血糖値が高いと、赤ちゃんやお母さんの体に負担がかかると言われています。
妊娠をすると、糖尿病をお持ちの方もそうでない方も血糖値は高くなりやすいので注意が必要です。
ここでは、妊娠中の高血糖とその管理について詳しくお話します。

目次

妊娠中の糖代謝異常はどんな種類があるの?

妊娠すると、胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリン抵抗性(詳しくは、「インスリンが十分に働かない」ってどういうこと?をご覧ください)が強くなります。

それは妊娠後期になるにつれ増していき、血糖を正常に保つために必要なインスリンの必要量が増えていきます。

妊娠中の糖代謝異常には、妊娠前から糖尿病がある方の糖尿病合併妊娠と、妊娠中に初めて発見される糖代謝異常の2種類があります。

さらに、後者の妊娠中に初めて発見される糖代謝異常には、正常よりも血糖値が高いが糖尿病と診断するほどは高くない妊娠糖尿病(GDM)と、明らかに血糖値が高くて妊娠中に判明した糖尿病(妊娠中の明らかな糖尿病)の2つに分かれます。

また、ごく稀に妊娠中に1型糖尿病を発症する方もいます。

妊娠糖尿病・妊娠中の明らかな糖尿病・糖尿病合併妊娠

表1:診断基準
(1)妊娠糖尿病 gestational diabetes mellitus(GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
 ①空腹時血糖値≧92mg/dL
 ②1時間値≧180mg/dL
 ③2時間値≧153mg/dL
(2)妊娠中の明らかな糖尿病 overt diabetes in pregnancy(注1)
以下のいずれかを満たした場合に診断する。
 ①空腹時血糖値≧126mg/dL
 ②HbA1c値≧6.5%
*随時血糖値≧200mg/dLあるいは75gOGTTで2時間値≧200mg/dLの場合は、妊娠中の明らかな糖尿病の存在を念頭に置き、①または②の基準を満たすかどうか確認する。(注2)
(3)糖尿病合併妊娠 pregestational diabetes mellitus
 ①妊娠前にすでに診断されている糖尿病
 ②確実な糖尿病網膜症があるもの
注1. 妊娠中の明らかな糖尿病には、妊娠前に見逃されていた糖尿病と、妊娠中の糖代謝の変化の影響を受けた糖代謝異常、および妊娠中に発症した1型糖尿病が含まれる。いずれも分娩後は診断の再確認が必要である。血糖値もしくはHbA1c上昇のいずれか一回で診断可能である。
注2. 妊娠中、特に妊娠後期は妊娠による生理的なインスリン抵抗性の増大を反映して糖負荷後血糖値は非妊時よりも高値を示す。そのため、随時血糖値や75gOGTT負荷後血糖値は非妊時の糖尿病診断基準をそのまま当てはめることはできない。
これらは妊娠中の基準であり、出産後は改めて非妊娠時の「糖尿病の診断基準」に基づき再評価することが必要である。
日本糖尿病・妊娠学会と日本糖尿病学会との合同委員会:
妊娠中の糖代謝異常と診断基準の統一化について.
糖尿病治療ガイド2016-2017 P.94,文光堂,2016 日本糖尿病学会編・著より引用 一部改変

劇症1型糖尿病

ごく稀ですが、妊娠に関連して発症する糖尿病に劇症1型糖尿病があります。劇症1型糖尿病は、膵臓にあるβ細胞が急速に破壊されることで急激に血糖値が高くなり、ケトーシスあるいはケトアシドーシス(詳しくは、「糖尿病ケトアシドーシス」をご覧ください)をきたします。お母さんにとって致命的となることもあります。そのため、妊娠中や出産後などにとても喉が渇いて水分を多量に飲む、多量に尿が出るなどの症状のほか、悪心、嘔吐、腹痛などのケトーシスに伴う症状を認めたときは、劇症1型糖尿病を念頭に入れて検査を行う必要があります。
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妊娠前として望ましい血糖管理

糖尿病を持つ女性が妊娠を希望する場合は、事前に血糖を十分に管理した上で計画的に妊娠することが望ましいとされています。
以下の管理目標を参考にしてください。

表2:妊娠前の管理
血糖コントロール HbA1c7.0%未満
網膜症 単純網膜症までは妊娠を避けなくてもよい。
妊娠中に悪化することもあるため、重症の場合は眼科医と相談が必要です。
腎症 腎症2期まで
腎症がある場合は、妊娠中に悪化することがあります。一過性で出産後改善することもありますが、注意する必要があります。
その他 妊娠中使用するのに適したインスリン製剤の種類や、中止した方がよい飲み薬があります。
1型糖尿病では、甲状腺疾患を合併することが多いといわれます。
妊娠をきっかけに病状が進んだりすることがあるため、注意が必要です。
日本糖尿病学会編・著:糖尿病診療ガイドライン2016,P375,南江堂,2016を参考に作表

妊娠・出産を考える方はきちんと糖尿病の治療を行い(具体的にはバランスのよい食事・運動と、必要な場合糖尿病治療薬の使用を考慮する)HbA1c<7.0%未満にしておくと良いとされています。
合併症をお持ちの場合は、妊娠により悪化する可能性もあります。
合併症の管理や、使用できる薬剤の相談も含め、糖尿病をおもちで妊娠を希望する方は事前に担当医と相談しましょう。

妊娠中の血糖コントロール

もともと糖尿病をお持ちの方や、妊娠中に妊娠糖尿病(GDM)と言われた方は、赤ちゃんやお母さんが安全に妊娠を継続し出産するために、血糖値を良い値に保つ必要があります。
妊娠中は、望ましい血糖コントロールにするために、食事の工夫やインスリン注射が必要になることがあります。(詳しくは、「妊娠中の食事療法と体重管理」「妊娠と薬物療法」をご覧ください)

表3:お母さんの血糖コントロール目標値
  日本糖尿病学会 日本産科婦人科学会
空腹時(mg/dL) 70~100 ≦95
食前(mg/dL) ≦100
食後1時間(mg/dL)
食後2時間(mg/dL) <120 ≦120
HbA1c(%) <6.2 ≦6.2
日本糖尿病学会編・著:糖尿病診療ガイドライン2016,P377,南江堂,2016

妊娠中の食事療法と体重管理

食事は適切なエネルギー摂取や栄養バランスを心がけます。肥満がある方は、エネルギー制限をする場合があります。一回の食事で食後の血糖値が高くなってしまう場合は、一日三食を分割して、朝食、10時(おやつ)、昼食、15時(おやつ)、夕食、夜食にするなど、総カロリー数は多くなりすぎないようにしながら、少量ずつ食べる工夫(分食)をします。
間食はヨーグルトやフルーツなど、軽食でも大丈夫です。
妊娠後期になるに従って必要なカロリー量が増えますので、食事や血糖の記録をつけ、担当の先生や管理栄養士と相談しながら食事をコントロールしましょう。

表4:糖代謝異常妊婦における食事エネルギー量
妊娠時期 日本糖尿病学会 日本産婦人科学会
妊娠初期 非肥満(非妊時BMI<25):
 標準体重×30+50kcal
肥満(非妊時BMI≧25):
 標準体重×30kcal
普通体格の妊婦(非妊時BMI<25):
 標準体重×30+200kcal
肥満妊婦(非妊時BMI≧25):
 標準体重×30kcal
妊娠中期 非肥満(非妊時BMI<25):
 標準体重×30+250kcal
肥満(非妊時BMI≧25):
 標準体重×30kcal
妊娠末期 非肥満(非妊時BMI<225):
 標準体重×30+450kcal
肥満(非妊時BMI≧25):
 標準体重×30kcal
日本糖尿病学会編・著:糖尿病診療ガイドライン2016,P378,南江堂,2016

母体の肥満や妊娠中の体重増加は赤ちゃんが大きくなりすぎてしまう巨大児の原因になります。過度に体重が増加をしないように注意が必要です。

表5:お母さんの適正な体重増加
体格  適正体重増加
 BMI<18.5  9~12kg
 18.5≦BMI<25  7~12kg
 25≦BMI  個別対応(およそ5kgを目安)
日本糖尿病学会編・著:糖尿病診療ガイドライン2016,P379,南江堂,2016

BMIの計算方法は「体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))」です。

妊娠と薬物療法

妊娠前~妊娠中、出産後の授乳期の治療にはインスリンの治療を行います。糖尿病の飲み薬やインスリン以外の注射製剤を使用している方は、原則インスリンへの切り替えが必要です。インスリンの中でも、妊娠中の使用の安全性がほぼ確立しているものと、そうでないものがあります。
また、インスリンポンプ持続血糖測定器を使用して、血糖値を詳細に確認しながら細やかな血糖管理を行うことがあります。

表6:各種インスリンと妊婦への安全性についての添付文書上の記載内容
分類名 一般名 一般的商品名 RCT1)/メタアナリシス2)
速効型
インスリン
ヒトインスリン ノボリンR RCT/メタアナリシスはないが、他インスリンとの比較研究に使用されており、安全性は確立している。 
ヒューマリンR
超速効型
インスリン  
インスリンアスパルト ノボラピッド RCTにより、速効型インスリンとの比較により児転帰に差がないこと、重症低血糖の頻度が減少すること、生活の質が改善することなどが示されている。 
インスリンリスプロ ヒューマログ メタアナリシスにより、速効型インスリンとの比較により児転帰に差がないこと、重症低血糖の頻度が減少すること、生活の質が改善することなどが示されている。 
インスリングルリジン アピドラ 妊娠中の有用性・安全性を示したRCTはない。 
中間型
インスリン 
ヒトイソフェンインスン水性懸濁  ノボリンN RCT/メタアナリシスはないが、他インスリンとの比較研究に使用されており、安全性は確立している。 
中間型インスリンリスプロ ヒューマログN 
混合型
インスリン
ヒト二相性イソフェンインスリン水性懸濁  ノボリン30R *
ヒューマリン3/7 *
二相性プロタミン結晶性インスリンアナログ水性懸濁 ノボラピッド30ミックス *
ノボラピッド50ミックス *
ノボラピッド70ミックス *
インスリンリスプロ混合 ヒューマログミックス25 *
ヒューマログミックス50 *
配合溶解
インスリン
インスリンデグルデク/インスリンアスパルト配合 ライゾデク *
持効型溶解
インスリン
インスリンデテミル レベミル 中間型インスリンと比較したRCTによって、低血糖頻度を増やさずに空腹時血糖値が改善することなどが報告されている。
インスリングラルギン ランタス注100単位/
mL 製剤
メタアナリシスで中間型と比較して周産期合併症に差がなかったことが報告されている。
ランタス300単位/mL *
ランタスXR *
インスリングラルギンBS *
インスリンデグルデク トレシーバ *
1)RCT:ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)とは、評価のバイアス(偏り)を避け、客観的に治療効果を評価することを目的とした研究試験の方法である。
2)メタアナリシス:複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことである。
*RCT/メタアナリシスなし

また、糖尿病がおありの方は、高血圧や脂質異常症を合併していることがあります。
一般的に、糖尿病に合併して糖尿病腎症や高血圧をおもちの方は、1)アンギオテンシン変換酵素阻害薬や 2)アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬という種類の薬が投与されることがありますが、両薬剤は妊娠中の服用に関して安全性が確立していないため、他の血圧を下げる薬に切り替える必要があります。
また、脂質異常症に対する、3)HMG-CoA還元酵素阻害薬や 4)フィブラート系という薬剤も妊娠中には使用を控えた方がよいので、担当医には糖尿病の治療薬だけでなく、その他の服薬内容も正確に伝えましょう。
1)アンギオテンシン変換酵素阻害薬:レニベース錠、ロンゲス錠、エースコール錠など
2)アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬:ニューロタン錠、ブロプレス錠、ディオバン錠、ミカルディス錠、オルメテック錠など
3)HMG-CoA還元酵素阻害薬:メバロチン錠、リポバス錠、リピトール錠、リバロ錠、クレストール錠
4)フィブラート系:ベザトール錠、リピディル錠など
*上記 1)~ 4)は内服薬の一部です。内服治療中の方は飲んでいる薬を継続してよいか、担当医師に確認をしてください。

周産期のお母さんと赤ちゃんの合併症にはどんなものがあるの?

お母さんの高血糖は、胎盤を通して赤ちゃんに伝わりますが、インスリンは胎盤を通過できないため赤ちゃんに届けることができません。高血糖は母体や赤ちゃんに影響を及ぼしますので、お母さんの血糖を適切な値にコントロールすることが大切です。血糖コントロールが高い時に起きる合併症としては、以下のようなものが知られています。

表7:血糖コントロールが悪いときに起こりうるお母さんと赤ちゃんの合併症
お母さんの合併症 赤ちゃんの合併症
1)糖尿病合併症
  糖尿病ケトアシドーシス
  糖尿病網膜症の悪化
  糖尿病腎症の悪化
  低血糖(インスリン使用時)
2)産科合併症
  流産
  早産症
  妊娠高血圧症候群
  羊水過多(症)
  巨大児に基づく難産
1)周産期合併症
  胎児仮死・胎児死亡
  先天奇形
  巨大児
  肩甲難産による分娩障害
  新生児低血糖症
  新生児高ビリルビン血症
  新生児低カルシウム血症
  新生児多血症
  新生児呼吸窮迫症候群
  肥大型心筋症
  胎児発育遅延
2)成長期合併症
  肥満・耐糖能異常・糖尿病
日本糖尿病学会編・著:糖尿病診療ガイドライン2016,P367,南江堂,2016

出産とその後に気をつけて欲しいこと

赤ちゃんが大きくなりすぎてしまう巨大児の場合や、お母さんの合併症が重度な場合は、お母さんや赤ちゃんを守るために、帝王切開が選択されることもあります。

出産後は、ホルモンを出していた胎盤がお母さんの体から出るため、インスリンの必要量は速やかに減ります。授乳によりさらに血糖が低下することがあるため、出産後も注意深く血糖管理を行うことが大切です。
授乳期間中もインスリン治療を継続する場合は、授乳の際に低血糖が生じないよう、授乳前に補食が必要になることがあります。

妊娠糖尿病と診断された方は、産後6~12週の間に75gOGTT検査が必要です。お母さんの糖代謝異常が出産後一旦改善しても、一定期間後に糖尿病を発症するリスクが高いため、定期的な経過観察が重要です。
合併症をお持ちの方も、引き続き担当医とよく相談しながら管理していきましょう。
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 参考:糖尿病治療ガイド2016-2017
:糖尿病診療ガイドライン2016

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