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糖尿病の治療ってどんなものがあるの?
2015年10月27日掲載2016年6月3日改定版掲載/2017年5月24日更新
「糖尿病を治療しましょう!」といっても、なにから始めればよいのでしょうか?
ここでは、糖尿病の治療をどうしてするのか、どのようにするのか、目標はどう設定するのか、といったことについてお話しいたします。
治療を続けるためのコツもとても大切です。「糖尿病とともに生きる」では、患者さんごとの状況に応じた、より具体的な項目もまとめています。
目次
- 糖尿病の治療の目的はなんですか?
- 具体的には、どうやって血糖値をコントロールするの?
- 血糖コントロールの方法は人によって違いますか?
- 血糖コントロールの効果はどうやってわかるの? 治療の目標は?
- 血糖コントロール以外に気をつけることはありますか?
- 糖尿病治療を成功させるコツ
糖尿病の治療の目的はなんですか?
- 糖尿病の治療の目的はなんですか?
- 糖尿病があっても、血糖をコントロールして、糖尿病がない人と同じ健康寿命(注)を保つことが、糖尿病の治療の目的です。
注:健康寿命...健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間
健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料 より
糖尿病とは、慢性的に血糖値が高くなる病気です。(糖尿病ってなに?)慢性的に血糖値が高いと、糖尿病の合併症によって生活の質(QOL:キューオーエル)が低下し、さらには寿命に影響をします。ですから、血糖値を良い値に保つ事が治療の基本です。これを、「血糖値をコントロールする」といいます。
- なぜ血糖値をコントロールする必要があるの?
- 糖尿病による合併症を起こさないために、また、合併症のある方はそれを今より悪くしないために、血糖コントロールが大切です。
血糖値が高いままでいると、時間をかけて神経や眼、腎臓などからだの様々なところに病気を起こします。これを、糖尿病の慢性合併症といいます。糖尿病は、病気が進んでいない時期にはあまり症状のない病気ですが、ひとたび合併症が出てしまうと、様々な症状や不都合を伴うことがあります。痛みやしびれを感じること、感覚が鈍くなることでケガをしやすくなること、感染が起きやすくなること、視力の低下が起きることなどがその例です。また、腎臓の病気が進んでしまうと人工透析が必要になることもあり、生活が制限されます。
現在、合併症のある方も、血糖値を適切な範囲に保っていくことで、合併症をさらに進めることや、他の合併症を起こすのを防ぐことができます。合併症を起こ さない、悪くしないで、健康寿命をのばすことが血糖値をコントロールする目的です。
また、合併症を起こさない、悪くしないことによって医療費をおさえることにもつながります。
具体的には、どうやって血糖値をコントロールするの?
- 具体的には、どうやって血糖値をコントロールするの?
- 血糖値をコントロールするには、まず食事、運動が大切です。そして薬による治療があります。
糖尿病の食事療法
食事によって、糖がからだに取り込まれます。からだに取り込まれる糖の量やエネルギーのバランスなどを調整するのが食事療法です。詳しくは、糖尿病の食事のはなしをご覧ください。
糖尿病の運動療法
運動によって、糖が使われます。また、筋肉の量が増えることで、糖をからだに取り込みやすくします。その上、脂肪が減ることで、血糖値を下げるインスリンが効果を発揮しやすい環境を作ります。
詳しくは、糖尿病の運動のはなしをご覧ください。
糖尿病の薬物療法
糖尿病の薬にはいろいろな種類があります。薬の種類としては、飲み薬と注射薬があります。 飲み薬では、インスリンの分泌を良くするもの・効きを良くするもの、食事でとった糖の分解・吸収を遅らせるもの、糖の排泄を促すものがあります。注射に は、インスリンの分泌を促す注射や、インスリンそのものを外から補う注射があります。
血糖コントロールの方法は人によって違いますか?
- 血糖コントロールの方法は人によって違いますか?
- その方の、糖尿病の種類や状態により、違います。
糖尿病の血糖コントロールの基本は、まず食事と運動と言われています。
特に、2型糖尿病では、まずは食事と運動を行い、血糖値を見ながら必要に応じて、飲み薬を使うことが多いです。薬の種類は、その方の体格(肥満があるかどうか)やインスリンを作る力がどのくらい残っているかなど、一人一人の糖尿病の状態によって決められます。2型糖尿病であっても、自分で出すインスリンの量が不十分なとき、飲み薬で十分な血糖コントロールが得られない時はからだの外からインスリンを補う注射が必要となることもあります。
多くの1型糖尿病の方は、自分のからだでインスリンを作れなくなるため、インスリン注射による薬物療法が必須です。必要なインスリン治療を継続すれば、1型糖尿病の方は、食事や運動などを厳しく制限することはありません。食事では、食後の血糖値の上昇に大きく影響する炭水化物の摂取量に着目するなどの方法もあります(カーボカウント)。運動については、重い合併症がなく、血糖値が落ち着いていれば、どんな運動をすることも可能です。ただし、運動中の低血糖には十分注意が必要です。
血糖コントロールの方法は、人によって様々です。ご自身の血糖コントロールの方法について、詳しくは主治医や医療スタッフにご確認ください。
血糖コントロールの効果はどうやってわかるの?治療の目標は?
- 血糖コントロールの効果はどうやってわかるの?
- 血糖コントロールとは血糖値を適切な範囲に維持することですから、血糖値が適切な範囲に維持されていることを確認することで治療の効果を確認します。具体的には、血液検査で、血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)などを測って、確認します(糖尿病と関連する検査)。
- 血糖コントロールの目標は?
- 糖尿病の合併症をおこさない、または悪くさせないためには、HbA1cを7%未満にしておくのがいいと言われています。
目標 | 血糖正常化を注1) 目指す際の目標 |
合併症予防注2) のための目標 |
治療強化が注3) 困難な際の目標 |
HbA1c (%) |
6.0未満 | 7.0未満 | 8.0未満 |
治療の目標は、年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定する。
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日本糖尿病学会 編・著 糖尿病治療ガイド2016-2017 27頁 文光堂 2016 より改変
実際には、一人一人からだの状態や治療内容が違うため、目標値はその方に合わせたものを考えます。ご年配の方や合併症が進んでいる方では、血糖コントロールの目標を少し緩やかにした方がよいとされ、若い方や妊娠中の方はより厳しい方がよいとされます。ご自身の目標を主治医と確認しておきましょう。
血糖コントロール以外に気をつけることはありますか?
- 血糖コントロール以外に気をつけることはありますか?
- はい、あります。
体重、血圧、血清脂質(血液中のコレステロールの値)
肥満や高血圧、脂質異常症は糖尿病と同じように、動脈硬化や内臓の障害に影響します。体重は、標準体重(BMI=22)より多い方は標準体重を目標として減量しますが、現時点でそれよりかなり体重が多い方は、今の体重を5%減らすことを当面の目標とします。
体重 |
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標準体重(kg)= 身長(m)×身長(m)×22 |
血圧 |
糖尿病の方の目標値
*脳血管障害・冠動脈疾患のある方 *75歳以上の高齢者の方 無理なく下げられるのであれば |
血清脂質 |
*冠動脈疾患のある方:100 mg/dL未満
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合併症の状態
定期的に合併症の状態を確認するための検査を受けることも大切です。
糖尿病の合併症を調べる検査
- 神経障害:アキレス腱反射、振動覚、神経伝導検査、心拍変動検査(CVRR)
- 網膜症:眼底検査
- 腎症:血液検査(BUN、クレアチニン)、尿検査(尿中アルブミン、尿タンパク)
- 足病変:足の定期チェック(ひび割れ、白癬(水虫)、たこ、うおのめ、足の変形、など)フットケア
- 大血管症:頸動脈エコー、心電図、胸部X線、血圧脈波検査(ABI+PWV)
- 歯周病:歯科診察
禁煙
糖尿病の方は、ぜひ禁煙をしてください。タバコを吸うことは血管がかたくなったり、狭くなったりする動脈硬化(いわゆる血管の老化)をすすめます。
動脈硬化は、糖尿病の慢性合併症である、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患、足病変などの大血管症をすすめます。さらには、腎臓の障害をはじめ、細小血管症もすすめます。
糖尿病治療を成功させるコツ
継続しましょう
糖尿病は、「治す」よりも「コントロールする」病気です。がんばりすぎず、あきらめず、長くお付き合いしていくことが最も大切です。上手にお付き合いをすれば、重い合併症を防ぐことができます。特に食事療法、運動療法は、急激にがんばりすぎると続かないことがあります、できることから少しずつ継続していきましょう。
セルフモニタリングをしましょう
糖尿病は、よほどひどくないと症状がありません。症状があてにならない病気ですので、定期的に血糖値、体重や血圧などを測定して、記録しておきます。これらの値が望ましいコントロールの範囲だと、治療を継続するための励みになります。運動の継続のために、万歩計を活用したりするのも良いでしょう。
サポーターをつくりましょう
糖尿病の治療は、生活習慣の改善が必要であり、そして長く続けることが大切です。食事をはじめ、生活にかかわるご家族、友人、職場の方で、糖尿病を 理解し、あなたを支えてくれるサポーターをみつけましょう。もちろん、治療方針をあなたと一緒に決める主治医、治療をうまく生活に取り入れる工夫を一緒に 考える看護師や保健師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師や歯科医師など、医療機関のスタッフも、あなたのサポーターです。
糖尿病の治療は、糖尿病の方を主役とした、チームで取り組むことが成功の秘訣です。
それぞれの治療法について、詳しくはこちらをご覧ください。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編著:糖尿病診療ガイドライン2019. 南江堂, 2019
- 日本糖尿病学会 編著:糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂, 2020