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腎症

2020年11月6日掲載2020年12月4日改定版掲載

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糖尿病腎症(糖尿病性腎症と呼ぶこともあります)は、糖尿病がある方の慢性合併症のひとつです。

腎臓の機能が落ちてくると、早期の段階では無症状ですが、進行するとからだの余分な水分や老廃物を尿としてからだの外に排泄する機能が弱まることで、からだがむくんだり、気分が悪くなったりするなどのさまざまな症状を引きおこします。また貧血をおこすなど、さらなる合併症を引きおこすことがあります。

ここでは、糖尿病が関連する腎症についてのはなしをします。

目次

糖尿病腎症ってどんなもの?

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腎臓はソラマメ状の形をしており、位置は腰の上あたりで左右に一対あります。主に尿を作る臓器として知られていますが、それ以外にもさまざまな働きを担っており、からだにとって重要な仕事をしています。

表1:腎臓の主な仕事
①からだの水分量を調節する ⑤血圧を調整する
②老廃物を排泄する ⑥血液を産生する為のホルモン(エリスロポエチン)を
分泌する
③電解質(ミネラル)のバランスを保つ ⑦骨を作るビタミンDを活性化する
④血液を弱アルカリ性に保つ  
糖尿病が関連する腎症とは、どんなものでしょうか。
糖尿病腎症は、糖尿病が発症してすぐに生じるわけではなく、高血糖の状態が長く続いた場合に腎臓が傷んでしまうことで発症します。腎臓に傷みが生じて腎臓の機能が低下することを「腎機能低下」、「腎症」などと呼びますが、特に糖尿病が原因で腎臓の機能が低下した場合を、「糖尿病腎症」と呼びます。

糖尿病腎症の発症早期は無症状であることが多いですが、腎機能が低下すると、前述したからだの調節機能が弱まることでさまざまな症状・合併症がおこります。 さらに機能低下が進行し末期腎不全に至ると、腎臓の機能を代行する治療である「透析療法」が必要になります。2018年末の時点で透析患者の原因疾患のうち糖尿病腎症が最も多い状況であり1)、国をあげて糖尿病腎症の重症化予防に取り組んでいます(図:慢性透析患者 原疾患割合の推移、1983-2018)。

図:慢性透析患者 原疾患割合の推移、1983-2018
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最近では、糖尿病のみが直接的な原因である「糖尿病腎症」に加えて、糖尿病が腎機能悪化の一因ではあるものの糖尿病以外の要因が主原因である腎障害も含めた「糖尿病性腎臓病」という疾患概念も作られています。

糖尿病腎症の診断と病期


腎症は無症状で進行することが多いため、症状のあるなしにかかわらず糖尿病がある方には定期的に尿検査や血液検査を実施します。

それでは、尿検査や血液検査では腎臓のどのようなことがわかるのでしょうか?

尿検査でわかる項目

腎臓は血液をろ過し、からだに必要なものを残し不要なものは排泄するという機能を持っています。フィルターやザルなどで必要なものと不要なものを分けるようなイメージです。 表2にも記載されているアルブミン、タンパク質といった成分は、本来からだに必要な栄養素なので、正常な腎臓から尿に排泄されることはあまりありません。腎症となりフィルターがうまく機能しないと、こうした成分がとりこぼされて尿に出てきます。尿に出てくるアルブミン、タンパク質が多いほど、腎臓が傷んでいるということになります。

血液検査でわかる項目

腎機能が低下すると、フィルターに目づまりがおきるイメージで、ろ過できる血液の流量が減ります。これを、糸球体ろ過量(GFR: Glomerular Filtration Rate)と呼びます。血液検査では、クレアチニンという項目でGFRの値がわかります。(通常の血液検査では、eGFRという血液検査項目でも確認できます。)

尿検査、血液検査の結果から尿病腎症の病期2)を決定し、治療方針の参考にします(表2:糖尿病腎症の病期分類)。
糖尿病腎症の病期ごとに使用したほうがよい薬や使用を控えたほうが安全な薬があります。また、食事や運動療法などの内容を変更したりすることがあります。


表2:糖尿病腎症の病期分類
病期 尿検査でわかる項目 血液検査でわかる項目
尿アルブミン値(mg/gCr)
あるいは
尿タンパク値(g/gCr)
GFR(eGFR)
(mL/分/1.73FRm2)
第1期
(腎症前期)
正常アルブミン尿(30未満) 30以上
第2期
(早期腎症期)
微量アルブミン尿(30~299) 30以上
第3期
(顕性腎症期)
顕性アルブミン尿(300以上)
あるいは
持続的タンパク尿(0.5以上)
30以上
第4期
(腎不全期)
問わない 30未満
第5期
(透析療法期)
透析療法中  

(糖尿病性腎症合同委員会:糖尿病性腎症病期分類の改訂について
(http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=46)より一部改変)


また、肥満症、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症等を合併している方では、アルブミン尿の増加を伴わずに腎機能が低下することがあります。このように典型的な糖尿病腎症の特徴を持たない腎症を含めた広い概念として「糖尿病性腎臓病」という呼び方もあります。

糖尿病腎症の治療

糖尿病腎症では病期に応じた治療が行われます。血糖値だけでなく、血圧や脂質のコントロールなど、さまざまな側面から治療していくことが大切です。

血糖コントロール

・ 糖尿病腎症の予防や悪化を防ぐために大切なのが血糖コントロールです。目標値は一人ひとり異なりますので主治医に確認しましょう(治療の目標は?)。高齢の方の場合は低血糖による危険をさけるため、血糖の目標値を緩めに設定します(高齢の糖尿病の方の血糖コントロールの目標は?)。低血糖を避け、食事療法、運動療法、薬物療法を行います。

・ 腎機能が低下すると薬の成分やインスリンがからだの中に残りやすくなり低血糖や副作用のリスクが高まるため、糖尿病の薬の用法・用量の調整が必要な場合があります。

・ 腎機能が低下している方の場合、HbA1c値は実際の血糖コントロールを適切に反映しない場合がありますので、適宜グリコアルブミンや血糖値による血糖管理を考慮します(血糖値を調べる検査)。

血圧・脂質コントロール

・ 血圧コントロールにより腎症の悪化が抑えられることがあります。家庭血圧の測定もとても大事で、減塩食に取り組んだ上で、降圧薬の内服を行います。また、脂質のコントロールも大切です(体重、血圧、血清脂質)。

生活習慣の改善

・ 適正な体重を維持すること、禁煙、過剰なアルコールを避けることが重要です。

食事療法

・ 塩分やタンパク質のとりすぎによって腎臓に負担がかかることがあります。また、腎臓の排泄機能が低下してカリウムというミネラルがからだにたまってしまい、不整脈の原因になることがあります。腎症の段階によって食事療法のポイントがあるので、主治医や管理栄養士と相談しましょう(腎臓の合併症がある場合)。

運動療法

・ 適度な運動療法は減量や身体機能の維持に大切です。ただし、重症な腎症がある方や、血圧を高く上げてしまうような激しい運動については注意が必要ですから、主治医に相談しましょう(糖尿病の運動のはなし)。

透析療法について

腎臓にはさまざまな働きがありますが、腎臓の機能が著しく低下した場合には、人工的に腎臓の機能を補う「透析療法」という治療を行います。

透析療法は「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。

表3:血液透析と腹膜透析
  血液透析 腹膜透析
方法

血液ポンプを使って血液をからだの中から外へ出し、機械を通して血液中の老廃物と余分な水を取り除いたのち、再びかだらの中に戻します。

血液透析を行うには、血液の出入口となる血管(シャント)を腕に作製し、透析用の注射針を使用します。

お腹の中にもともとある「腹膜」を利用して、老廃物や水分の調整を行います。

お腹の中に透析液を注入して、一定時間程度ためておき、その液をからだの外に出すことで老廃物を取り除きます。

透析液を交換するためのチューブ(カテーテル)をお腹に埋め込む手術を行います。
透析頻度

週に3回 1回3~5時間

そのつど通院が必要

自宅などにおいて、自分や家族が毎日行う(就寝中など)

通院は1ヵ月に1回程度
副作用など シャントトラブル(閉塞や感染症など)、不均衡症候群(腹痛・吐き気・嘔吐)、低血圧など 腹膜炎やカテーテルのトラブルによる細菌感染症など

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透析療法を行っている方への医療費や介護サービスに関する公的支援には、「特定疾病療養受療証」、「身体障害者手帳」、「高額療養費制度」、「介護保険制度」などがあります。病院の看護相談・各自治体の相談窓口などでご確認ください。
糖尿病がある方が受けられる社会保障に関しては、糖尿病と社会保障(糖尿病の方が受けられる公的支援)もご参照ください。

糖尿病腎症の予防

糖尿病腎症の予防は血糖コントロールと動脈硬化予防の両方を行うことが重要です。

以下のものが糖尿病腎症の発症や進行と関連があるとされています。

・ 血糖コントロールの不良
・ 高血圧
・ 脂質異常
・ 喫煙

生活習慣の改善を心がけ、糖尿病腎症の予防を目指しましょう。血糖コントロール、血圧や脂質異常症などの治療については糖尿病の治療ってどんなものがあるの?をご覧ください。

感染症や脱水も腎症を進行させることがありますので、感染症対策や水分摂取を心がけましょう。
また腎機能が低下すると使えなくなる薬や用法・用量の調整が必要となる薬がありますので、市販薬を使用する場合は、事前に主治医に相談しましょう。
糖尿病腎症がある方は、神経障害網膜症、大血管症などの発症や進行につながりやすいと言われています。定期的に受診し、糖尿病の他の合併症についてもチェックするようにしましょう。

引用文献

1)日本透析医学会:わが国の慢性透析療法の現況「2018年末の慢性透析患者に関する集計」
https://docs.jsdt.or.jp/overview/index.html(最終閲覧日:2020年5月29日)

2)糖尿病性腎症合同委員会:糖尿病性腎症病期分類2014の策定(糖尿病性腎症病期分類改訂)について. 日腎会誌 56: 547, 2014

参考文献

  • 日本糖尿病学会 編著:糖尿病診療ガイドライン2019. 南江堂, 2019
  • 加藤明彦:若手医師のための透析診療のコツ. 文光堂, 2011
  • 日本腎臓学会 編:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018. 東京医学社, 2018

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