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糖尿病とは
更新・確認日:2024年10月24日
掲載日:2015年10月27日
糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。
血糖の濃度(血糖値)が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、より重い病気(糖尿病の慢性合併症)につながります。また、著しく高い血糖は、それだけで昏睡(こんすい)などをおこすことがあります(糖尿病の急性合併症)。
ここでは糖尿病についての基本的なお話をします。
目次
血糖とインスリンについて
私たちが食事をすると、栄養素の一部は糖となって腸から吸収されます。寝ている間など、食事をしない時間が続くときには、主に肝臓により糖が作られています。糖はからだにとって大切であり、食事をしたときも、食べていないときも、常に血液中を流れています。糖は血液の流れに乗って、からだのあらゆる臓器や組織へめぐります。
血液中をただよい、筋肉などの細胞までたどり着いた糖は、同じく血液中に流れていたインスリンの助けを借りて細胞に取り込まれます。取り込まれた糖は、私たちのからだが活動するためのエネルギーの源となります。
インスリンは細胞のドアを開ける鍵のような役割を果たしています(図1:糖とインスリンの働き)。インスリンの働きによって、細胞の前まで到着した糖はすみやかに細胞の中に入り、糖は血液中にあふれることなく、血液中の糖の濃度は一定の範囲におさまっています。
図1:糖とインスリンの働き
- 糖はからだのエネルギー源です
- 糖をエネルギーとして使うにはインスリン(鍵)が必要となります
「インスリンが十分に働かない」ってどういうこと?
糖尿病になるとインスリンが十分に働かず、血糖をうまく細胞に取り込めなくなるため、血液中に糖があふれてしまいます。これには、2つの原因があります(図2:インスリンが十分に働かない)。
- インスリン分泌低下:膵臓の機能の低下により、十分なインスリンを作れなくなってしまう状態。細胞のドアを開けるための鍵が不足しているので、糖が中に入れず、血液中にあふれてしまいます。
- インスリン抵抗性:インスリンは十分な量が作られているけれども、効果を発揮できない状態。運動不足や食べ過ぎが原因で肥満になると、インスリンが働きにくくなります。鍵であるインスリンがたくさんあっても、細胞のドアのたてつけが悪く、開けることができません。この場合も、血液中に糖があふれてしまいます。
糖尿病ではこの2つが影響して、血糖値が高くなってしまいます。
図2:インスリンが十分に働かない
1.インスリン分泌低下
インスリン(鍵)が不足していて、糖が細胞の中に入れない。糖の取込みがうまくいかない。
2.インスリン抵抗性
インスリン(鍵)があっても、細胞のドアのたてつけが悪いため、開きにくい。効率よく糖を取り込めない。
糖尿病の症状ってどんなもの?
症状がなく糖尿病になっていることに気がついていない方も多くいます。糖尿病では、かなり血糖値が高くなければ症状が現れません。
高血糖における症状は、
- 喉が渇く、水をよく飲む
- 尿の回数が増える
- 体重が減る
- 疲れやすくなる
などです。
さらに血糖値が高くなると、
- 意識障害
に至ることもあります。
症状がまったくないまま健診などで糖尿病が判明する方もいれば、急に高血糖の症状が現れて糖尿病が判明する方もいます。また、眼や腎臓の合併症の症状が現れて、初めて糖尿病と診断される方もいます。糖尿病の診断について、詳しく知りたい方は 糖尿病は早くみつけましょう をご覧ください。
糖尿病ってどんな種類があるの?
糖尿病は、その成りたちによっていくつかの種類に分類されますが、大きく分けると「1型糖尿病」、「2型糖尿病」、「その他の特定の機序、疾患によるもの」、そして「妊娠糖尿病」があります。
1型糖尿病
1型糖尿病では、膵臓からインスリンがほとんど出なくなる(インスリン分泌低下)ことにより血糖値が高くなります。生きていくために、注射でインスリンを補う治療が必須となります。この状態を、インスリン依存状態といいます(表1:1型糖尿病と2型糖尿病の特徴)。
詳しくは、1型糖尿病をご覧ください。
2型糖尿病
2型糖尿病のある方では、インスリンが出にくくなったり(インスリン分泌低下)、インスリンが効きにくくなったり(インスリン抵抗性)することによって血糖値が高くなります(表1:1型糖尿病と2型糖尿病の特徴)。2型糖尿病となる原因は、遺伝的な影響に加えて、食べ過ぎ、運動不足、肥満などの環境的な影響があるといわれています。(こんな人は糖尿病に気をつけて)
すべての2型糖尿病のある方に生活習慣の問題があるわけではありませんが、血糖値を望ましい範囲に調整するためには、食事や運動習慣の見直しがとても重要です。飲み薬や注射なども必要に応じて利用します。
表1:1型糖尿病と2型糖尿病の特徴
1型糖尿病 | 2型糖尿病 | |
---|---|---|
若年に多い (ただし何歳でも発症する) |
発症 年齢 |
中高年に多い |
急激に症状が現れて、糖尿病になることが多い | 症状 | 症状が現れないこともあり、気が付かないうちに進行する |
やせ型の方が多い | 体型 | 肥満の方が多いが、やせ型の方もいる |
膵臓でインスリンを作るβ細胞という細胞が壊れてしまうため、インスリンが膵臓からほとんど出なくなり、血糖値が高くなる | 原因 | 生活習慣や遺伝的な影響により、インスリンが出にくくなったり、インスリンが効きにくくなったりして血糖値が高くなる |
インスリンの注射 | 治療 | 食事療法・運動療法、飲み薬、場合によってはインスリンなどの注射を使う |
その他の特定の機序、疾患によるもの
糖尿病以外の病気や、治療薬の影響で血糖値が上昇し、糖尿病を発症することがあります。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めてわかった、まだ糖尿病には至っていない血糖の上昇をいいます。
糖は赤ちゃんの栄養となるので、多すぎても少なすぎても成長に影響を及ぼすことがあります。そのため、お腹の赤ちゃんに十分な栄養を与えながら、細やかな血糖管理をすることが大切です。
妊娠中は絶えず赤ちゃんに栄養を与えているため、お腹が空いているときの血糖値は、妊娠していないときと比べて低くなります。
一方で、胎盤からでるホルモンの影響でインスリンが効きにくくなり、食後の血糖値は上がりやすくなります。
多くの場合、高い血糖値は出産のあとに戻りますが、妊娠糖尿病を経験した方は将来糖尿病になりやすいといわれています。
詳しくは、妊娠と糖尿病をご覧ください。
参考:糖尿病の分類
- 1型(膵β細胞の破壊、通常は絶対的インスリン欠乏に至る)
- 自己免疫性
- 特発性
- 2型(インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体で、それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがある)
- その他の特定の機序、疾患によるもの
- 遺伝子として遺伝子異常が同定されたもの
- 膵β細胞機能にかかわる遺伝子異常
- インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常
- 他の疾患、条件に伴うもの
- 膵外分泌疾患
- 内分泌疾患
- 肝疾患
- 薬剤や化学物質によるもの
- 感染症
- 免疫機序によるまれな病態
- その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うことの多いもの
- 遺伝子として遺伝子異常が同定されたもの
- 妊娠糖尿病
参考:日本糖尿病学会:糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告(国際標準化対応版). 糖尿病55:490, 2012より
参考文献
- 日本糖尿病学会 編著:糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024
- 日本糖尿病学会 編著:糖尿病治療ガイド2022-2023. 文光堂, 2022