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大血管症

2016年8月26日掲載

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糖尿病の慢性合併症の一つとして、大血管症があります。大血管とは、ここでは心臓の血管や脳の血管、足の血管のことをいいます。
慢性合併症の総論については、こちらをご覧ください。

目次

冠動脈の病気(心筋虚血=狭心症、心筋梗塞のこと)

冠動脈とは心臓に酸素や栄養を運んでいる血管のことです。その血管が細くなることで心臓に必要な酸素が行き渡らなくなる狭心症や、心臓の組織が死んでしまう心筋梗塞が引き起こされます。心臓の筋肉への血流が少なくなるので、心筋虚血と言ったりもします。

糖尿病の方は糖尿病ではない方と比べると心筋梗塞の危険度は数倍高いと言われています。

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狭心症 血管が細くなり心臓に必要な酸素や栄養が行き渡らない
心筋梗塞 血管が詰まり必要な酸素や栄養が届かなくなることで心臓の組織が死んでしまう

また、糖尿病の方に合併した冠動脈の病気は

  • 狭心症や心筋梗塞を発症しても胸痛などの痛みがでないことがある
  • 心臓の血管が同時に何本も広い範囲で傷ついていることが多い
  • 心臓の血液を送りだす力が低下しやすく、心筋梗塞後の死亡率も高い

  などの特徴があります。

特に症状がなくても、糖尿病の合併症が進んでいる方や心電図・心臓超音波検査で異常を認める方は、冠動脈の病気の合併に注意する必要があります。

冠動脈疾患(心筋虚血)の検査
心電図
(安静時、トレッドミル運動負荷試験)
心臓から発信される電気信号の記録が心電図です。心筋虚血に特徴的な変化を認める場合は、より詳しい検査を行う必要があります。
心臓超音波 超音波で心臓の動きに異常がないかを確認します。
冠動脈CT 冠動脈のつまりや狭窄を評価する検査です。
負荷心筋SPECT 心臓の筋肉に血液がどのくらいめぐっているかを確認する検査です。つまりがある部分は、血液のめぐりが悪くなります。
冠動脈造影 カテーテルを用いて冠動脈を直接映し出し、つまりや狭窄を評価します。

 

冠動脈疾患(心筋虚血)の予防と治療

冠動脈の病気を予防するには、動脈硬化症が進まないようにします。

具体的には、

  • 糖尿病・血圧・脂質のコントロール
  • 減量
  • 禁煙

  に配慮します。

冠動脈の病気を早い時期に発見した場合は、血液をさらさらにする薬や血液中のコレステロール値を下げる薬を新たにはじめたり増量したりすることで、動脈硬化をこれ以上進めないように努めます。また、あらかじめカテーテルで心臓の血管を広げる治療や外科的に心臓の血管を別の血管とつなぎ合わせる治療を行うことで血液の流れを改善させ、心臓の血管がさらに狭くなったりつまったりしたときに心臓の組織が死んでしまうのを防ぐこともあります。

冠動脈疾患が原因で胸の痛みや息苦しさが急に現れた場合、命に関わることがありますので、救急車を呼ぶなど迅速に対応しましょう。搬送先の病院では、酸素・薬物を投与したり、緊急のカテーテル治療を行ったりします。

 

脳血管障害

脳血管障害とは脳に栄養を送る血管に生じた障害です。脳の血管がつまったり、血管が破れたりすることです。脳血管障害の中で脳梗塞とは脳の血管がつまって脳の組織が死んでしまった状態をいい、また、脳出血とは脳の血管が破れて出血したものをいいます。糖尿病の方では脳出血よりも脳梗塞が多いと言われています。

糖尿病の方は糖尿病でない方と比べ、脳の血管が傷つきやすく、また、脳血管障害後に死亡する危険が高いことなども指摘されています。

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脳血管障害では意識が低下したり、手足が麻痺したり、感覚に異常が生じたり様々な症状がでます。脳血管障害かも知れないと思う症状が出現した際は早くに医療機関を受診し、治療することが大切です。

脳血管障害の検査
頸動脈超音波 頸の血管を超音波で確認し、血管のつまりや、プラーク(血管の中にたまったコレステロールを主体とする動脈硬化巣)の有無などの動脈硬化の評価を行います。
頭部MRI・MRA 脳の血管の狭窄や、脳梗塞を評価します。
頭部CT 脳の血管の狭窄や、脳梗塞を評価します。発症してすぐの脳出血の評価に優れています。
脳血流シンチグラフィ 脳の血液のめぐりが滞っていないかを確認する検査です。

 

脳血管障害の予防と治療

脳血管障害を予防するには、動脈硬化症が進まないようにします。
具体的には、

  • 糖尿病・血圧・脂質のコントロール
  • 減量
  • 禁煙

  を気をつけます。

脳梗塞の症状で多いのは、手足の片側が動かせなくなる「片麻痺」と呼ばれる症状、うまく話せなくなる「構語障害」と呼ばれる症状などです。その他にも、めまいや意識障害が起こる方もいます。脳梗塞を起こして間もない場合は、詰まった血栓を溶かす治療を行うことがあります。症状が出始めてから、3~6時間以内に治療を開始することが重要とされており、疑ったらすぐに救急車を呼ぶなど行動しましょう。

脳梗塞が起きてから時間が経過している場合は、血液をさらさらにする薬を投与して、脳梗塞が再度起こるのを予防します。

 

末梢動脈の病気

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末梢動脈の病気とは手や足の血管の動脈硬化が進行し、血管が狭く細くなった状態です。糖尿病では、心臓の血管や脳の血管と同じように、手足の血管も障害されやすくなります。そして、手足の血管、特に足の血管が細くなることで多くの症状を引き起こしていきます。

足の血液の流れが悪くなるため、足先が冷たくなったり、しびれたり、休み休みでないと歩けなくなるなどの症状がでてきます。また、さらに足の血管が細くなると、安静にしていても痛みが出現するようになり、最悪の場合は足の組織が死んでしまう“壊疽”など、重篤な合併症につながることがあります。一般的に使われている症状の分類にはFontaine分類があります(表1)。

表1  Fontaine分類 (1→ 4の順に虚血は重症化)

1 冷感、しびれ 足が冷たい、しびれる (軽度虚血)
2 間欠性跛行 しばらく歩くと、足が重くなったり痛みを感じたりする (中等度虚血)
3 安静時疼痛 じっとしていても、足に痛みを感じる (高度虚血)
4 潰瘍・壊疽 足への血流が悪いために足に潰瘍ができたり、組織が死んだりする (重症虚血)

足の血管が細くなっているかどうかの検査として手と足の血圧の比を調べる方法があり、簡便に血管が狭くなっているかどうかをチェックすることができます。

末梢動脈疾患の検査
下腿―上腕血圧比(ABI) 下腿・上肢の血圧の比を確認し、下肢の血管のつまりを予測します。
心臓―足首血管指数(CAVI) 血管の硬さを予測する検査です。測定時の血圧に影響されない特徴があります。
脈波伝播速度(PWV) 血管の硬さを予測する検査です。
下肢動脈エコー 超音波検査で下肢の動脈血流を確認します。
MRA 下肢の血管のつまりや狭窄を評価する検査のひとつです。
下肢動脈CT 下肢の血管のつまりや狭窄を評価する検査のひとつです。
下肢動脈造影 血管にカテーテルを通して直接造影剤を流し、下肢の血管のつまりや狭窄を評価する詳しい検査です。
皮膚還流圧 皮膚にある細い血管の血流を評価します。

 

末梢動脈疾患の予防と治療

末梢動脈疾患の予防も心臓や脳の場合と同じように、

  • 糖尿病・血圧・脂質のコントロール
  • 減量
  • 禁煙

  が重要です。

症状がある場合、血をさらさらにする薬や血行を良くする薬を飲むことで症状が軽くなる場合があります。さらに重症の場合は、足の血管を拡げる治療を行うことがあります。

足が壊疽になった場合、傷が広がったり細菌感染を招くことがあるため、傷口を削ったり、やむなく足の一部を切断したりすることがあります。(足病変

 

参考文献

  • 日本糖尿病学会 編著:糖尿病診療ガイドライン2019. 南江堂, 2019
  • 日本糖尿病学会 編著:糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂, 2020

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