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糖尿病の方の旅行
2016年2月15日掲載2016年2月17日改定
旅行は楽しいものですが、ふだんの生活と比べると変化がつきものです。
糖尿病のある方は、いつもの血糖コントロールを崩さないで、旅行を安心して楽しむために、いくつか気にかけておきたい点があります。
目次
旅行中の血糖値の変化
旅行中は、いつもの生活と異なるため、血糖値が上がる事もあれば、下がる事もあります。
表1:旅行中の血糖値の変化
食事は、できる限りいつものカロリーを意識してとるようにしましょう。
運動が少ない時はホテルの周りを散歩するなどがおすすめです。
血糖をご自身で測定できる方は、血糖測定器を持参して、活用しましょう。
旅行を楽しむための準備・持ち物
しっかり準備して、旅行を楽しみましょう!
計画
糖尿病の方は、スケジュールに余裕を持たせた計画を立てましょう。事前に旅行会社や航空会社と連絡を取ったり、訪問先の医療事情や医療機関などを調べたりしておくといざという時にも安心できます。
持ちもの
糖尿病患者用IDカード(緊急連絡カード)
糖尿病の薬
数日分の予備を持つようにします。
インスリン・GLP-1受容体作動薬、注射針、アルコール綿、血糖測定の道具は、旅行の日数に必要な量の倍を、分けて持ち、注射薬は必ず手荷物に入れて預け荷物に入れないようにします。
簡単な常備薬
胃腸薬、風邪薬、吐き気止めなど
補食
食事が遅れた時に役立つビスケットなどを準備します。
低血糖の対策
ブドウ糖など、すぐ手に届くところに入れて持ち歩きます。
糖尿病治療薬セットの機内持ち込み証明書(海外旅行なら英語で)
必ずしも航空会社より要求されるわけではないようですが、あればもしもの時に心強いです。
万が一の時に備えて、薬などは半分を家族に持ってもらうなど、分けておくと有効です。
海外旅行保険に入りましょう
保険に加入する際に持病の申告が必要なものでは、糖尿病である事をきちんと伝える事が大切です。また、クレジットカードに付いている保険の場合も、申告が必要かどうかを事前に確認しましょう。
必要時、予防接種を受けておきます
行き先によっては、感染症に注意が必要です。糖尿病の方は感染を起こすと治りにくく、重い状態になりやすいので、予防が一番です。予防接種の無い感染症についても、蚊よけスプレーなどの準備をしておくと安心です。
飛行機に乗るとき
航空会社に連絡
飛行機に乗る際には、事前に糖尿病である事を伝えておきます。多くの航空会社では機内食に糖尿病食を準備していますので、あらかじめ依頼できます。
糖尿病の注射薬を使用中の方へ
注射薬の機内持ち込みについて
インスリンやGLP-1受容体作動薬の注射は、手荷物として機内に持ち込みます。預け荷物にすると、注射薬が凍ってしまい成分が有効でなくなってしまうとも言われます。また、荷物が目的地に届かず、渡航先で困る可能性もあります。注射薬や針、アルコール綿、血糖測定に必要な道具を持ち込む事などをあらかじめ航空会社に連絡しておくことで、トラブルを未然に防ぐ事ができます。
セキュリティチェックについて
注射薬の持ち込みの際は、薬剤とわかるようにパッケージははがさず、液体の持ち込みの基準に従ってチャック付きビニールに入れます。処方箋や診断書を一緒に持ち歩く事で、注射が治療上必要な事がわかると対応も早いです。
インスリンポンプをお使いの方は、金属探知機で行うセキュリティチェックは装着したままできますが、X線による検査の際には外す必要があります。日本国内では、人へのセキュリティチェックは金属探知機で行うのが一般的ですが、海外ではX線ボディスキャナーによる検査をしていることがあります。X線による検査はポンプの作動に影響しますので、事前に係員へ「インスリンポンプを装着していて、X線の影響を受けてしまう」ことを伝えましょう。また、担当医やインスリンポンプの会社へ予め相談し、英語でかかれた注意書きを準備しておくのもいいでしょう。万が一、X線に通してしまった場合は、それぞれの機種の説明書きに従って、インスリンポンプに異常がないか確認しましょう。(詳しくは、「空港利用時・飛行機に乗る際の注意点」 をご覧ください。)
また、注射器への切り替えが必要になる場合もありますので、準備をしておきましょう。詳しくは、主治医、医療スタッフや機器メーカーに事前に確認しておきましょう。
機内では旅行者血栓症(従来のエコノミークラス症候群)に気をつけましょう
飛行機の中は非常に乾燥していて、狭いところです。長時間同じ姿勢でいたり、脱水になったりすると、足の静脈に血栓ができやすくなると言われています。血栓が肺に飛ぶと、呼吸困難などの重篤な病気になり、これを旅行者血栓症(正式には深部静脈血栓症、肺塞栓)といいます。糖尿病の方は深部静脈血栓症になるリスクが高いと言われています。機内ではアルコールを控え、水分をしっかりとることで、脱水になるのを予防することができます。また、長時間のフライトでは、こまめに姿勢を変える、足首の運動をする、歩くなど定期的に体を動かしましょう。
海外旅行
時差
海外旅行では、時差によって食事や薬の時間がずれることがあります。飲み薬について、一般的には、食直前の速攻型インスリン分泌促進薬やαグルコシターゼ阻害薬はそのまま食事の前にとる事が多いです。他の薬は、1日の量を可能な限り同じ時間間隔でとります。具体的には、主治医と旅行が決まった時点で相談しておいてください。
インスリン注射についても食前に打つ超速効型インスリン製剤や速効型インスリン製剤はそのまま食前に打つのが一般的ですが、作用時間の長いインスリンはフライト中、時差によって増やしたり減らしたりする必要があると言われます。
これはあくまで参考です。旅行が決まった時点で主治医と相談する事も大事な計画のひとつです。
英文診断書・英文カード
特に海外では、糖尿病である事、使用している薬、緊急連絡先が英文でわかるものが重宝します。あらかじめ、主治医に記載してもらい、いざという時に備えましょう。
英文カード(Diabetic Data Card) 日本糖尿病協会(外部サイトにリンクします)
体調管理
旅行を十分に楽しむためには、なんといっても体調を整える事が大切です。
旅先でも十分にからだを休める時間をとります。
また、糖尿病の方は靴ずれなど起こさないように、旅行は履き慣れた靴で行きましょう。
もしも、旅行中に体調を崩してしまったら無理をせずに、
- 休息をとる、睡眠時間を多くとる
- 下痢などでは水分をしっかりとる
- 早めに現地の医療機関にかかる
ようにします。
こんな時はシックデイルールを活用しましょう。
万全の準備で、楽しい旅行を!