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糖尿病予備群といわれたら

2016年10月18日掲載

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目次

糖尿病予備群・糖尿病の境界型ってなに?

糖尿病予備群と言われるのは、どのようなときでしょうか?

2型糖尿病の場合、ある日突然、血糖値が高くなるのではありません。
多くの場合、ゆっくり、何年もかかって血糖値が高くなり、糖尿病に至ります。
まだ糖尿病と診断されるほど高くないけれど、正常より血糖値が高くなってきた状態を「糖尿病の境界型」や、「糖尿病予備群」と言ったりします。

血糖値の高さを確認する代表的な検査としては、空腹時血糖値75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)HbA1cの3つがあります。
糖尿病の境界型は、HbA1c6.5%未満で、1) 空腹時血糖値が110~125mg/dL、2) 75gブドウ糖負荷後2時間の血糖値が140~199mg/dLのいずれかを満たしている方をいいます。

図1:正常型・境界型・糖尿病型の血糖値とHbA1cの関係
図1:正常型・境界型・糖尿病型の血糖値とHbA1cの関係
注1)空腹時血糖が110~125 mg/dLの方、HbA1cが6.0~6.4%の方は、「糖尿病の疑いが否定できない」グループとされ、75gOGTTの検査が推奨されています。
注2)空腹時血糖100~109 mg/dLの方、HbA1cが5.6~5.9%の方は、「将来糖尿病を発症リスクが高い」グループとされ、特に高血圧・脂質異常症・肥満などがある方は75gOGTTの検査をするのが望ましいとされています。

血糖値が境界型の方は、正常型の6~20倍も多く糖尿病を発症すると言われており、将来糖尿病を発症する確率が高い状態です。

糖尿病予備群は症状がないから、からだはなんともないの?

糖尿病予備群と言われた事のある方のなかには、
「まだ糖尿病になったわけじゃないから、今は食生活を改善したり、運動をしたりする必要はない」
と思っている人がいるかもしれません。

糖尿病予備群の段階ではなんの症状もないので、そう考えるのも無理はないです。しかし、糖尿病の境界型になると、からだの中では、すでに変化が起き始めています。

例えば、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが出にくくなったり、効きづらくなったりする変化は、糖尿病と診断されるずっと前の段階からあると言われています。(「インスリンが十分に働かない」ってどういうこと?)予備群と言われる状態から糖尿病になるにつれて、インスリンの働きは徐々に弱まっていきます。

また、血糖値が高い状態が続くことで全身の血管にダメージを与えます。そのため、血管の老化である動脈硬化は、予備群の段階から生じており、心臓や脳血管の病気になりやすくなります。75gOGTTの2時間値が高くなるタイプの境界型の方は正常型と比較すると、2.2倍も心血管病による死亡が多いとも言われています。

動脈硬化は境界型の時から始まる

さらに、糖尿病予備群は名前の通り糖尿病に進行しやすい状態であり、ひとたび糖尿病を発症し、それが進行すると、神経症、網膜症、腎症などさまざまな合併症を引き起こします。糖尿病の方の場合、糖尿病が無い方と比べて心臓や血管の病気の発症率が3.5倍も上昇するという研究もあります。糖尿病の方は心筋梗塞や脳梗塞の発症率もぐんと上がってしまうのです。(糖尿病の慢性合併症ってなに?

太い血管の障害 (大血管合併症)

 境界型の方にとって、糖尿病を発症しないことが大血管合併症を予防する一番の方法です。

2型糖尿病の発症リスクを高める要因は?

糖尿病の発症リスクを高める要因は大きく分けて、二つあります。
一つは、遺伝的素因であり、お父さん、お母さんから引き継いだ遺伝子による性質で、血糖を下げるためのホルモンである“インスリン”が遺伝的に分泌しにくい方がいます。(インスリン分泌不全
もう一つは、環境因子で、肥満や食べ過ぎ、運動不足などがこれにあたります。こうした生活習慣は、インスリンが十分に効果を発揮するのを妨げます。(インスリン抵抗性
また、遺伝的な要因でもインスリン抵抗性が起こることもあり、環境の要因でも、インスリン分泌不足になることもあります。
遺伝的な素因は持って生まれたものですから、残念ながら変えることはできません。しかし、環境因子はご自分のちょっとした心がけで変えることができます。

糖尿病の2つの要因

2型糖尿病の発症リスクを高める要因としては、日本人の40~59歳の男女を10年間追跡した調査により、以下のことがわかりました。

年齢…1歳年を取るごとに男性・女性ともに2%上昇
肥満指数…BMIが1kg/m²増えるごとに、男性・女性とも17%上昇
糖尿病の家族歴…家族歴があると、男性で2.0倍、女性で2.7倍上昇
高血圧…高血圧があると、男性で1.3倍、女性で1.8倍上昇
喫煙…1日20本以上吸う方は吸わない方と比べて、男性で1.4倍、女性で3.0倍上昇
飲酒…1日1合以上呑む方は、飲まない方と比べて男性で1.3倍上昇

などがあります。
詳しく知りたい方は、『糖尿病のリスクを高める要因は?』『飲酒・肥満と糖尿病発症の関係は?』をご覧ください。

また、妊娠糖尿病や巨大児出産歴がある女性も、将来、2型糖尿病になりやすいと言われます。睡眠時間や夜間のシフト制勤務、精神的ストレスやうつ病も糖尿病と関連していると言われます。
では、2型糖尿病の発症を予防するにはどうしたらよいのでしょうか?

2型糖尿病にならないためにはどうしたらいいの?

生活習慣を見直しましょう

糖尿病予備群では、生活習慣の改善により糖尿病の発症のリスクを減らすことができます。

  • 食事は腹八分目でやめる
  • 野菜を積極的に摂取する
  • 散歩などの運動を少しずつでも始める
  • 体重を5~10%減らす
  • 禁煙する
  • 健康状態の確認のために健診を受ける
  • ストレスと上手につきあう

これらの取り組みは、脳梗塞や心筋梗塞などの病気のリスクを減らすことにもつながります。

2糖尿病の発症を予防するための研究

糖尿病の予防のために、糖尿病をどうやったら予防できるか、世界各国でも考えられています。

具体的には、フィンランド(Finish Diabetes Prevention Study)、アメリカ(Diabetes Prevention Program)、中国(Da Qing Study)、インド(Indian Diabetes Prevention Program)、日本(Toranomon Study)などで行われています。
これらの結果では、食事・運動療法や減量をきちんと行った方は、行わなかった方と比べて2糖尿病の発症を29~67%程度予防できると言われており、発症を予防するために、日々の生活改善がとても重要であることがわかっています。

また、薬によって2型糖尿病の発症を予防する方法も考えられており、日本では、心血管病のリスクが高く、75gOGTTの2時間値が高いタイプの境界型の方に対して、ボグリボースというαグルコシダー阻害薬が保険適用になっています(0.2mgのみ)。ボグリボースの糖尿病の発症をおさえる効果は40.5%程度とされています。
このように薬によっても2型糖尿病の発症予防ができると言われていますが、その効果は生活習慣の改善をしっかりするのと変わらない程度です。また、薬を飲んでも生活習慣を改善しないでいるとその効果も十分ではありません。
医療費などコストの点や、薬を飲まなくてすむという点からも、まずは食事や運動習慣、体重などを見直し、健康で長生きできるように生活習慣を改善しましょう。

食事や運動の工夫に関しては、糖尿病の方と同じです。
以下のページを参考にしてください。

糖尿病の食事のはなし糖尿病の運動のはなし

参考文献

  • 日本糖尿病学会 編 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013第3刷 南光堂 2014
  • 日本糖尿病学会 編・著 糖尿病専門医研修ガイドブック 改訂第6版 診断と治療社 2014
  • Tominaga M, Eguchi H, Manaka H, Igarashi K, Kato T, Sekikawa A. Impaired glucose tolerance is a risk factor for cardiovascular disease, but not impaired fasting glucose. The Funagata Diabetes Study. Diabetes Care. 22(6):920-4. 1999
  • Waki K, Noda M, Sasaki S, Matsumura Y, Takahashi Y, Isogawa A, Ohashi Y, Kadowaki T, Tsugane S; JPHC Study Group. Alcohol consumption and other risk factors for self-reported diabetes among middle-aged Japanese: a population-based prospective study in the JPHC study cohort I. Diabet Med. 22(3):323-31. 2005
  • Kawamori R, Tajima N, Iwamoto Y, Kashiwagi A, Shimamoto K, Kaku K; Voglibose Ph-3 Study Group. Voglibose for prevention of type 2 diabetes mellitus: a randomised, double-blind trial in Japanese individuals with impaired glucose tolerance. Lancet. 9;373(9675):1607-14. 2009

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