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ビグアナイド薬と乳酸アシドーシス
2014年4月3日掲載
医療関係者向け情報
ビグアナイド薬(メトホルミン塩酸塩、ブホルミン塩酸塩)は、2型糖尿病の治療に広く用いられるようになった薬剤です。ビグアナイド薬は極めてまれに乳酸アシドーシスをおこすことがあります。
以下に示す状態の患者への使用は、乳酸アシドーシス発症のリスクが高いため禁忌あるいは慎重投与とされています。
禁忌(次の患者には投与しないこと)(抜粋)
次に示す状態の患者[乳酸アシドーシスを起こしやすい]
- 乳酸アシドーシスの既往
- 中等度以上の腎機能障害 [腎臓における本剤の排泄が減少する]
- 透析患者(腹膜透析を含む)[高い血中濃度が持続するおそれがある。]
- 重度の肝障害 [肝臓における乳酸の代謝能が低下する。]
- ショック、心不全、心筋梗塞、肺塞栓など心血管系、
- 肺機能に高度の障害のある患者及びその他の低酸素血症状を伴いやすい状態
- [乳酸産生が増加する。]
- 過度のアルコール摂取者 [肝臓における乳酸の代謝能が低下する。]
- 脱水症、下痢、嘔吐等の胃腸障害
使用上の注意
慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)(抜粋)
- 感染症
- 高齢者
- 軽度の腎機能障害
- 軽度~中等度の肝機能障害
- ヨード造影剤(ヨード造影剤を用いて検査を行う場合には、本剤の投与を一時的に中止すること)
- 腎毒性の強い抗生物質等(ゲンタマイシン等)
重要な基本的注意(抜粋)
- まれに重篤な乳酸アシドーシスを起こすことがあるので、以下の内容を患者及びその家族に十分指導すること
- 過度のアルコール摂取を避けること
- 発熱、下痢、嘔吐、食事摂取不良等により脱水状態が懸念される場合には、いったん服用を中止し、医師に相談すること。
- 乳酸アシドーシスの初期症状があらわれた場合には、直ちに受診すること。
- ヨード造影剤を用いて検査を行う患者においては、本剤の併用により乳酸アシドーシスを起こすことがあるので、検査前は本剤の投与を一時的に中止すること(ただし、緊急に検査を行う必要がある場合を除く)。ヨード造影剤投与後48時間は本剤の投与を再開しないこと。なお、投与再開時には、患者の状態に注意すること
- 脱水により乳酸アシドーシスを起こすことがある。脱水症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
- 腎機能障害のある患者では腎臓における本剤の排泄が減少し、本剤の血中濃度が上昇する。投与開始前及び投与中は以下の点に注意すること。
- 腎機能や患者の状態に十分注意して投与の適否や投与量の調節を検討すること。腎機能は、eGFRや血清クレアチニン値等を参考に判断すること。〔国内臨床試験における除外基準は、血清クレアチニン値男性1.3ミリグラム/デシリットル、女性1.2ミリグラム/デシリットル以上であった〕
- 本剤投与中は定期的に、高齢者等特に慎重な経過観察が必要な場合にはより頻回に腎機能(eGFR、血清クレアチニン等)を確認し、腎機能の悪化が認められた場合には、投与の中止や減量を行うこと。
- 肝機能障害のある患者では肝臓における乳酸の代謝能が低下する可能性があるので、本剤投与中は定期的に肝機能を確認すること。
メトグルコ添付文書より抜粋
頻度は極めて低いものの、ビグアナイド薬服用者の乳酸アシドーシス事例が出ています。乳酸アシドーシス発症例のほとんどが上記禁忌あるいは慎重投与に該当例であったことをうけて、「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」が、2012年2月1日にこれらの薬剤を安全に使用するための勧告(ビグアナイド薬の適正使用に関するRecommendation)を発表しました(2014年3月38日改訂版発表)。その中で 1) 血清クレアチニン値(酵素法)が男性1.3ミリグラム/デシリットル、女性1.2ミリグラム/デシリットル以上の患者には投与を推奨しないこと、2)シックデイの際には脱水が懸念されるので、いったん服薬を中止し主治医に相談すること、3) 経口摂取が困難な患者や寝たきりなど全身状態が悪い患者には投与すべきではないこと、4) 原則として75歳以上の高齢者では新規の投与は推奨しないこと、などを述べています。
これを踏まえ、厚生労働省では2012年3月19日付けでビグアナイド薬の添付文書上の「使用上の注意」を改訂し「乳酸アシドーシス」に関する記載を強化するよう、医薬食品局安全対策課長通知(薬食安発0319第1号)を出し、関係各社はこれに沿ってビグアナイド薬の添付文書の改訂を行いました。
ビグアナイド薬を含め、医薬品は、禁忌・慎重投与を確認して使用してください。
リンク先
厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知(薬食安発0319第1号)
「使用上の注意」の改訂について
別紙11 ピオグリタゾン塩酸塩・メトホルミン塩酸塩
メトホルミン塩酸塩(1日最高用量 750ミリグラム の用法・用量を有する製剤)
別紙12 ブホルミン塩酸塩
別紙13 メトホルミン塩酸塩(1日最高用量 2,250ミリグラム の用法・用量を有する製剤)
医薬安発第319号(PDF:217KB)