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インスリングラルギン(ランタス)についてのお知らせ
2013年6月17日掲載
患者・一般向け情報
2009年6月26日に欧州糖尿病学会の学会誌Diabetologiaオンライン版にインスリングラルギン(商品名:ランタス、サノフィ・アベンティス社)のインスリン製剤としての単独使用と一部の癌の発生との関連についての一連の論文が発表されました。
Diabetologiaオンライン版に掲載されている4つの論文は異なる地域の住民を対象にした結果ですが、論文により、また一つの論文の中でランタスの1日使用量や他のインスリンの併用の有無などの条件の違いにより、ランタスの使用が他のインスリンの使用に比べて発癌と関係があるかもしれないとする結論と関係がなさそうだという結論が導かれています。これに対し欧州糖尿病学会、米国糖尿病学会、米国内分泌学会、日本糖尿病学会はこれらの論文には方法論上に問題(解析の対象となった患者さんの背景が使用しているインスリンごとに必ずしも同じではないことなど)と限界(観察期間が短いことなど)があり、また論文内、論文間で導かれた結論が相反することを指摘してきました。各学会はこれらの論文からは何らの結論を出すことは出来ないと考え、それぞれ声明を発表していました。その後2013年5月31日付けで、欧州医薬品庁(EMA)はその後発表された疫学研究論文の内容を検討した結果、インスリングラルギンが他のインスリンと比べて発癌のリスクが高いとはいえないと発表しました。
わが国はこの問題を、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が調査しました。インスリングラルギンを含むインスリン製剤の癌(悪性腫瘍)への影響の有無に関して、入手可能なすべての情報(疫学研究の論文、製剤承認申請時の試験データ、外国での添付文書の内容)を検討し、厚生労働省に報告、その内容が厚生労働省の見解として、当サイトでも2009年12月4日にご紹介いたしました医薬品・医療機器等安全性情報(No.263)の中に公表されました。
(インスリングラルギンを含む)インスリン製剤と悪性腫瘍のリスク増大との関連性は明らかではないことから、現時点での注意喚起は不要と考えるが、今後も新たな報告を注視し、必要な対応を引き続き検討する。
緻密な計画のもと、長期間にわたり多数の2型糖尿病の方を調査する研究により、2型糖尿病と癌のリスクについての正確な知識が深まることが望まれます。
新しい情報に注意を
上記の情報は現時点のものです。今後、随時状況が変わったり、情報が追加されたりする可能性がありますので、最新情報にご留意ください。当糖尿病情報センターでは今後も正確な情報を提供していく予定です。
リンク先
日本糖尿病協会
インスリングラルギン(商品名:ランタス)の安全性に関する厚生労働省の発表についてのお知らせ(外部リンク)
独立行政法人医薬品医療機器総合機構
ヒトインスリン及びインスリンアナログ製剤と悪性腫瘍のリスクとの関連について
医薬品・医療機器等安全性情報No.263, 厚生労働省 医薬食品局(PDF.317KB)
厚生労働省
平成21年度 第2回薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会資料(6)
ヒトインスリン及びインスリンアナログ製剤と発がん性の関連性について(外部リンク)
医療関係者向け情報
上の「患者・一般向け情報」に記載した事項に加え、下記のサイトが参考になります。
リンク先
- 欧州医薬品庁(EMA)Outcome of review of new safety data on insulin glargine Data from population-based studies and the scientific literature do not indicate an increased risk of cancer(外部リンク)
- Diabetes mellitus and the risk of cancer:results from a large-scale population-based cohort study in Japan.(Inoue M, Iwasaki M, Otani T, Sasazuki S, Noda M, Tsugane S.Arch Intern Med 2006;166:1871-7)(外部リンク)