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Bariatric Surgery versus Intensive Medical Therapy for Diabetes - 5-Year Outcomes.

最終更新日:2017年2月22日

タイトル

糖尿病治療を目指したメタボリック外科手術・5年経過

著者

Schauer PR et al.

掲載誌

N Engl J Med. 2017 Feb 16;376(7):641-651.(PubMedへリンクします。)

臨床問題

P (患者): 肥満のある2型糖尿病患者(全150人・男性34%・平均年齢49.8歳・平均BMI 37.5kg/m2・糖尿病罹患歴平均8.4年・平均HbA1c 9.2%)

I (介入): 胃バイパス術(Gastric Bypass Surgery全50人)、スリーブ胃切除術(Sleeve Gastrectomy全50人)

C (比較対照):栄養師やCDEのサポートのもと、専門医による強化内科的治療

O (アウトカム):一次エンドポイント:HbA1c 6.0%未満の達成率。二次エンドポイント:血糖コントロール、体重減少、血圧、脂質、腎機能、眼底検査の結果、薬剤の使用、SF-36で測定した生活の質調査。

研究方法

デザイン: 単施設、ランダム化割付、コントロールあり。

盲検化:なし
試験期間:最初のランダム化割付が2007年3月から2011年1月まで。

結果

  • 150人のうち、6ヶ月以内に9人が脱落(そのうち内科治療群が8人)。6人が更に脱落し、内科治療群に1人心筋梗塞による死亡が見られ、最終的に134人が解析に用いられた。
  • 一次エンドポイントである、HbA1c 6.0%未満達成は、内科治療群で2人(5%)、胃バイパス群で14人(29%)、スリーブ胃切除群で11人(43%)に見られた。多重群間の比較を補正すると、p値は内科治療群vs.胃バイパス群で、0.03、内科治療群 vs.スリーブ胃切除群で0.07となった。さらに脱落例を含めて、欠損値を補完してIntention-to-treat解析を行うと、それらp値は0.08、0.17と変化した。
  • 一次エンドポイントを達成する要素としては、糖尿病罹患歴8年未満(オッズ比3.95 [1.46-10.69])、胃バイパス術(オッズ比4.34 [1.11-16.90])のみが有意な要素である。
  • 血糖コントロールでも、糖尿病治療薬なしでHbA1c 6.0%未満、糖尿病治療薬なしでHbA1c 6.5%未満、糖尿病治療薬の有無にかかわらずHbA1c 7.0%未満のいずれの目標も、外科手術2群が内科治療群よりも達成率が高かった。
  • 5年後に糖尿病治療薬を使用していない率は、胃バイパス群45%、スリーブ切除群25%であり、胃バイパス群が最も高く、内科的治療群やスリーブ胃切除群と比べても高率である。
  • 体重減少は、胃バイパス術群、ついで胃スリーブ切除術群、内科治療群の順に大きく、3群に有意差がある。
  • 中性脂肪の低下、HDLの上昇は手術2群で内科治療群より優れていた。LDLコレステロールや、血圧の変化には群間差が見られなかったが、手術2群ではそれぞれの治療薬が減少していた。
  • SF-36による生活の質調査(分野ごとに0-100点で採点。点数が高いほど健康度が良好と解釈)では、総合的健康度(胃バイパス +17±20、スリーブ胃切除 +16±22、内科治療 0.3±16)、身体痛みスコア(胃バイパス -2.4±25、スリーブ胃切除 +0.5±21、内科治療 -17±25)に差が見られた。

表. 各アウトカムの群間比較
  内科治療
(38人)
胃バイパス術
(49人)
スリーブ胃切除術
(47人)
内科治療 vs. 胃バイパス 内科治療 vs. スリーブ胃切除 胃バイパスvs. スリーブ胃切除
HbA1c
6.0%未満
2人
(5.3%)
14人
(28.6%)
11人(23.4%) p=0.01
0.03
(補正後*)
p=0.03
0.07
(補正後*)
p=0.53
0.53
(補正後*)
HbA1c
6.0%未満(補完後†)
7.3% 26.4% 20.4% p=0.08 p=0.17 p=0.48
スリーブ胃切除
HbA1c
7.0%未満
8人
(21.1%)   
25人
(51.0%)
23人
(48.9%)
p=0.012 p=0.016 p=0.84
HbA1c
変化量%
-0.3 ± 2.0 -2.1 ± 1.8 -2.1 ± 2.3 p=0.003 p=0.003 p=0.67
体重変化量kg -5.3 ± 10.8 -23.3 ± 9.6 -18.6 ± 7.5 p=0.003 p=0.003 p=0.01
HDLコレステロール変化率% 7.0 ± 44.5 31.9 ± 29.1 29.6 ± 29.5 p=0.012 p=0.016 p=0.75
*:一行目のみ、補正前と多重群間補正後のp値を表示する。2行目以降はすべて補正後のp値である。
†:検査値や病歴などをもとに脱落例がもし5年継続した場合を推定して補完している。

コメント

  • 補正なしのHbA1c 6.0%未満達成率は、外科手術群でp値0.05未満であるが、多重群間比較補正や、Intention-to-treat解析を行うと、0.05を超える。本文の書き方では、このような補正はもともとの研究計画にないとされているが、多重比較の補正を行うことなどは真っ当な統計解析法である。
  • 糖尿病罹病歴が短い患者で、より糖尿病の「寛解」が得られやすいとするのは、メタボリック外科手術の臨床試験で一貫して認められることであるし、内科的治療でも早期から良好な血糖コントロールを得るのが、血糖コントロールが安定する要因である。
  • 胃バイパス術は、スリーブ胃切除に比べて、体重減少や代謝改善の面で長所があると考えられているが、この試験でも5年時点での体重減少や、糖尿病薬の減少などで胃バイパス術がスリーブ胃切除より優れているとする成績である。
  • 網膜症や視力は5年時点でも群間差は見られなかった。同試験の以前の報告(備考参照)と合わせると、メタボリック手術による急激な血糖改善でも網膜症の急激な悪化は見られないことになる。

備考

  • このthe Surgical Treatment and Medications Potentially Eradicate Diabetes Efficiently (STAMPEDE) 試験の1年後(N Engl J Med 2012;366:1567-76)、3年後(N Engl J Med 2014;370:2002-13)の結果がすでに発表されており、この試験と同じくメタボリック手術群が体重減少や血糖コントロールの面で優れるとする結果である。
  • 2年経過時点で、HbA1cの変化量は、内科治療群で-1.1%、胃バイパスで-2.8%、スリーブ胃切除で-2.7%と手術群の低下量が有意に大きい。ベースラインと2年時点で二人の眼科医による判定で、網膜症は変化がなかったと報告されている(Diabetes Care 2015;38:e32–e33)。

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