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Benefits for Type 2 Diabetes of Interrupting Prolonged Sitting With Brief Bouts of Light Walking or Simple Resistance Activities
最終更新日:2016年12月2日
タイトル
軽度の歩行・ウェイトトレーニングで座っている時間を中断すると血糖値が改善する
著者
Dempsey PC et al.
掲載誌
Diabetes Care 2016;39:964-972(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P (患者):肥満2型糖尿病患者(全24人・男性14人・平均年齢62歳・平均HbA1c 7.2%・平均BMI 33.0kg/m2・平均糖尿病罹患歴6.8年・座るなど不活動時間約560分/日)
I (介入): 実験日の7時間に、30分おきに3分間トレッドミル上で3.2km/時の軽度歩行を行うか、30分おきに自重を使ったウェイトトレーニングを3分間(ハーフスクワット、カーフレイズ、殿部収縮、ニーレイズを交代で20秒ずつ行い3分間体を動かし続ける)。
C (比較対照):実験日の7時間に、椅子に座ってトイレ以外の無駄な動きをしない。
O (アウトカム):7時間の実験中、30分ごとに血液サンプルを採取。これより血糖値と血中インスリン値の曲線下面積(incremental Area Under the Curve; iAUC)の群間差を求めた。
I (介入): 実験日の7時間に、30分おきに3分間トレッドミル上で3.2km/時の軽度歩行を行うか、30分おきに自重を使ったウェイトトレーニングを3分間(ハーフスクワット、カーフレイズ、殿部収縮、ニーレイズを交代で20秒ずつ行い3分間体を動かし続ける)。
C (比較対照):実験日の7時間に、椅子に座ってトイレ以外の無駄な動きをしない。
O (アウトカム):7時間の実験中、30分ごとに血液サンプルを採取。これより血糖値と血中インスリン値の曲線下面積(incremental Area Under the Curve; iAUC)の群間差を求めた。
研究方法
デザイン:クロスオーバー試験。被験者は座る(対照)、歩く、ウェイトトレーニングのすべてを経験する。試験日の7時間の観察時には、標準化された朝食と昼食を摂取する。
盲検化:なし
試験期間: 実験日間は、6~14日の間隔をあける。
盲検化:なし
試験期間: 実験日間は、6~14日の間隔をあける。
結果
- 呼気分析による間接熱量測定では、15分間座っている状態に比べて、この研究での歩行やウェイトトレーニングでは、熱量消費をそれぞれ毎分73%、121%上昇させた。ウェイトトレーニングは歩行に比べて、酸素消費量(差は0.13 L/分)、二酸化炭素排出量(差は0.08L/分)、熱量消費(0.58kcal/分)の増加を認め、呼吸交換比(respiratory exchange ratio)は、-0.02 の有意な低下を認めた。
- 試験日の7時間の血糖値、インスリン値、Cペプチドの曲線下面積(iAUC)は、歩行群でも、ウェイトトレーニング群でも対照群と比較して有意な低下が見られた。
- 血中中性脂肪のiAUCは、ウェイトトレーニング群のみ対照群と比較して有意な低下が見られた。
- 血中中性脂肪iAUC以外の、血糖値iAUC、インスリン値iAUC、CペプチドiAUCは、歩行群とウェイトトレーニング群で差が見られなかった。
- 血糖値iAUCは、歩行群で女性が男性より対照群と比較しての低下割合が大きかった(-58% vs. -26%, p=0.045)。ウェイトトレ―ニング群でも同様の傾向が見られたが有意差はなかった(-53% vs. -31%, p=0.17)
座り続ける (対照群) (95%信頼区間) |
歩行群 (95%信頼区間) |
ウェイトトレーニング群 (95%信頼区間) |
|
血糖値iAUC | 435.6 mg・h/dL (367.2~504.0) |
266.4 mg・h/dL (198.0~334.8) 対照群との比較 p<0.001 |
264.6 mg・h/dL (196.2~333.0) 対照群との比較 p<0.001 |
インスリンiAUC | 3293 pmol・h/L (2887~3700) |
2104 pmol・h/L (1696~2511) 対照群との比較 p<0.001 |
2066 pmol・h/L (1660~2473) 対照群との比較 p<0.001 |
コメント
- 精緻にデザインされて、少数の参加人数でも結果がでるようなクロスオーバー研究法が採用されている。
- 無理ない程度の、歩行か、自重を使ったウェイトトレーニングを短時間でも繰り返し、2型糖尿病患者で短期間ではあるが血糖値の改善が見られる。
- 実験条件は厳密に管理されているので、同じような運動を取り入れて、長期的に血糖コントロールが改善するかどうかは不明である。
- この実験条件下で、7時間じっと椅子に座っているのは、本を読んだり、テレビを見たりなどが許されているとはいえ、苦痛である可能性はある。
- この研究の歩行にせよ、ウェイトトレーニングにせよ、下肢の筋肉群を主に用いる運動であり、上肢優位の運動で同様の効果が出るかは不明である。
- 女性で、軽度の運動による血糖低下作用がより強く見られる結果だが、サンプル数が少ないこともあり、真に生理的メカニズムが存在するかは判断を待つ必要がある。
- 血中中性脂肪iAUCはウェイトトレーニング群で有意に低下しており、これはわずかではあるが熱量消費、呼吸交換比の変化から考えても脂肪酸燃焼の亢進によりもたらされた可能性がある。さらに7時間のうち総計36分の運動のみでこの変化が見られる。