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Metabolic Surgery in the Treatment Algorithm for Type 2 Diabetes: A Joint Statement by International Diabetes Organizations
最終更新日:2016年6月22日
タイトル
外科治療の2型糖尿病治療における位置づけ
著者
Rubiono F et al.
掲載誌
Diabetes Care 2016;39:861–877(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):肥満合併の2型糖尿病患者
I(治療):2型糖尿病治療目的に、肥満外科手術と同じ消化管手術を施す
C(比較対照):従来の生活習慣改善と薬物治療
O(アウトカム):血糖コントロールの改善や糖尿病合併症予防が見られるか?
研究方法
- 2005年1月1日から2015年6月15日までの文献を系統的に検索し、ランダム化比較試験の結果、それらを新たにメタ解析した結果、必要な場合には質の高い観察研究の結果を用いた。
- それらの結果を元に独立した研究者二名がエビデンスのまとめから Recommendationを作成、オンラインでデルファイ法を用い、48人の専門家(4分の3が内科系)からコンセンサスやフィードバックを求めた。一般の専門家も参加できる国際会議でアルゴリズム案を発表しさらなるフィードバックを得、最終的に48人の専門家が一同に介して最終案に到達、日本糖尿病学会を含む世界中の学会から賛同を取り、公表にいたった。
結果
短期間(1~2年)中期間(3~5年)の結果がほとんどだが、血糖コントロールの改善では、生活習慣改善・薬物療法に比して肥満外科手術に優位性がある。BMI40kg/m2以上の肥満2型糖尿病患者、BMI35kg/m2以上の肥満2型糖尿病患者で生活習慣改善・薬物療法で血糖コントロール不良例には外科手術を勧めるべきである。BMI30~34.9kg/m2の肥満2型糖尿病患者で生活習慣改善・薬物療法で血糖コントロール不良例では外科手術を考慮すべきである。アジア系患者ではBMI基準を2.5減じて適応すべきである。
コメント
- 日本ではBMI35kg/m2以上の肥満は人口の0.5%程度であることや、肥満外科手術の保険適用が術式・施設要件ともに厳格であることもあり、世界的にみても肥満外科手術が行われることが少ない。その現状から判断すると、高度肥満者に限定しているが外科手術を生活習慣改善・薬物療法よりも早期に勧めるべき、とするのは違和感を感じるが、それほどまでに高度肥満に糖尿病が合併した際の血糖コントールが難しく、外科手術が現実的な治療オプションとして捉えられていることが分かる。
- もともとが肥満の解消を目指した外科手術での成績を援用して、血糖コントロールの改善における外科手術の優位性を結論づけている。論文内で言及済みだが、BMIにかわる手術適応指標があるか不明である。
- 血糖コントロールが外科手術により改善するのは高度肥満者で明確であるが、細小血管症、大血管症、癌の発生などを抑制することができるかRCTで証明されているわけではない。
- 日本では胃柵状切除術(Sleeve Gasterectomy)のみが保険適用であるが、肥満外科手術としては胃バイパス術も多く行われており、どの術式が血糖コントロールに最適か不明である。
- アジア人ではBMI基準を2.5kg/m2減じて適応すべき、とは現実的な考え方であるが、代謝状態改善のための手術適応基準として妥当か検討が必要である。
- 限定的ではあるが、医療経済的観点からもMetabolic Surgeryが有効であるとする検討結果も引用されている。
備考
論文を通して、血糖コントロールのための外科手術を Metabolic Surgery とよび、肥満外科手術(Bariatric Surgery)と区別している。