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Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes.
最終更新日:2015年11月9日
タイトル
エンパグリフロジンは大血管症2次予防に有効である
著者
EMPA-REG OUTCOME Investigators.
掲載誌
N Engl J Med. 2015 Sep 17. [Epub ahead of print](PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者): 大血管症既往のある2型糖尿病患者(全7020人・男性72%・平均年齢63歳・平均HbA1c8.1%・平均BMI31)
I(治療):エンパグリフロジン(10mgまたは25mg/日)追加投与(4687人)
C(比較対照):プラセボ追加投与(2333人)
O(アウトカム):心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中(複合エンドポイント)の発症リスクに相違があるか?
I(治療):エンパグリフロジン(10mgまたは25mg/日)追加投与(4687人)
C(比較対照):プラセボ追加投与(2333人)
O(アウトカム):心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中(複合エンドポイント)の発症リスクに相違があるか?
研究方法
デザイン:無作為化比較試験
盲検化:あり
追跡期間:3.1年(中央値)・追跡率97%・服薬中断率25%
盲検化:あり
追跡期間:3.1年(中央値)・追跡率97%・服薬中断率25%
結果
エンパグリフロジン追加群では服用開始3ヶ月目からリスク低下を認め,試験終了時には有意な低下となった.
心血管死に有意差が出たが,非致死性心筋梗塞と非致死性脳卒中には有意差はなかった(後者は増加傾向).
さらに,全死亡リスクも32%有意に低下した.有害事象としては生殖器感染が増加した.
心血管死に有意差が出たが,非致死性心筋梗塞と非致死性脳卒中には有意差はなかった(後者は増加傾向).
さらに,全死亡リスクも32%有意に低下した.有害事象としては生殖器感染が増加した.
アウトカム | エンパグリフロジン 追加投与群 | プラセボ 追加投与群 | 相対リスク/絶対差 | 信頼区間,p値 |
---|---|---|---|---|
一次 エンドポイント |
10.5% | 12.1% | 0.86/-1.6% | 0.74~0.99, p=0.04 |
心血管死 | 3.7% | 5.9% | 0.62/-2.2% | 0.49~0.77, p<0.001 |
非致死性 脳卒中 |
3.2% | 2.6% | 1.24/+0.6% | 0.92~1.67, p=0.16 |
コメント
2型糖尿病治療薬ではメトホルミン以外に大血管症や死亡のリスクを有意に低下させることが実証された薬物はなかった.
SGLT2阻害薬が生命予後を改善することを実証した点で臨床的意義が大きい.
ただし,複合エンドポイントは有意に低下したが,内訳を見ることも重要であり,脳卒中は増加傾向(有意差なし)にある.
やはり脳卒中リスクの高い患者への投与は慎重である.
また,本研究のエンドポイントは二次予防であるため,大血管症リスクの低い患者に適応できるかは未知数である.
さらに,本研究のデザイン・データ解析・論文作成にはスポンサーが深く関与しているためかなり割り引いて解釈する必要もある.
再現性を確証する透明性の高いエビデンスが登場するまではSGLT2阻害薬の薬物選択順位はあまり高まらないであろう.
SGLT2阻害薬が生命予後を改善することを実証した点で臨床的意義が大きい.
ただし,複合エンドポイントは有意に低下したが,内訳を見ることも重要であり,脳卒中は増加傾向(有意差なし)にある.
やはり脳卒中リスクの高い患者への投与は慎重である.
また,本研究のエンドポイントは二次予防であるため,大血管症リスクの低い患者に適応できるかは未知数である.
さらに,本研究のデザイン・データ解析・論文作成にはスポンサーが深く関与しているためかなり割り引いて解釈する必要もある.
再現性を確証する透明性の高いエビデンスが登場するまではSGLT2阻害薬の薬物選択順位はあまり高まらないであろう.