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Effect of Sitagliptin on Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes.
最終更新日:2015年7月3日
タイトル
シタグリプチン追加投与による大血管症二次予防は無効
著者
TECOS Study Group.
掲載誌
N Engl J Med. 2015 Jun 8. [Epub ahead of print](PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者): 大血管症を合併した2型糖尿病患者(総14671人・男性糖尿病71%・平均年齢65歳・平均HbA1c7.2%)
I(治療):シタグリプチン100mg/日(腎機能低下者では50mg)追加投与(7332人)
C(比較対照):プラセボ追加投与(7339人)
O(アウトカム):心血管死・心筋梗塞・脳卒中・不安定狭心症による入院の発症リスクに相違があるか?
I(治療):シタグリプチン100mg/日(腎機能低下者では50mg)追加投与(7332人)
C(比較対照):プラセボ追加投与(7339人)
O(アウトカム):心血管死・心筋梗塞・脳卒中・不安定狭心症による入院の発症リスクに相違があるか?
研究方法
デザイン:無作為化比較試験
盲検化:あり
追跡期間:3年間(中央値)・追跡率95%・服薬中断率27%
盲検化:あり
追跡期間:3年間(中央値)・追跡率95%・服薬中断率27%
結果
シタグリプチン群とプラセボ群の最終HbA1c差は-0.29%であった.1次エンドポイントに両群間(11.% vs 11.6%)で有意差を認めなかった.
急性膵炎・膵癌・心不全による入院のリスクに有意差を認めなかった.
急性膵炎・膵癌・心不全による入院のリスクに有意差を認めなかった.
アウトカム | シタグリプチン群 | プラセボ群 | 相対リスク/変化差 | 信頼区間 |
---|---|---|---|---|
心血管死・心筋梗塞・脳卒中・不安定狭心症による入院 | 11.4% | 11.6% | 0.98 | 0.89~1.08 |
HbA1c変化 | -0.29% | -0.32~-0.27 |
コメント
DPP-4阻害薬は,食後高血糖を是正すること・低血糖リスクが小さいこと・体重増加を来しにくいことなどから大血管症予防効果が期待されていたが,サキサグリプチン・アログリプチンによる介入研究(いずれもプラセボと比較)と同様にその効果は否定的となり,クラスエフェクトが強く示唆される.一次エンドポイントからは「安全性」の印象があるが,服薬中断率が高いこと,追跡期間が比較的短いこと,プラセボとの比較であること,著者・解析者に試験薬の製薬会社員が含まれていることなどから割り引いて解釈する必要がある.そもそも糖尿病治療の目的は合併症予防であるため,無効であったことを安全だと主張するのは的外れな解釈である.
疫学的には食後高血糖は糖尿病合併症や死亡のリスクファクターであるが,食後高血糖是正による予防効果は現時点では超速効型インスリン・αグルコシダーゼ阻害薬・グリニド薬使用でも立証されていない.大血管症予防効果の指標としては血糖コントロールは有用性に乏く,大血管症を予防するためには血糖値以外のリスクファクターの積極的管理も重要であろう.
疫学的には食後高血糖は糖尿病合併症や死亡のリスクファクターであるが,食後高血糖是正による予防効果は現時点では超速効型インスリン・αグルコシダーゼ阻害薬・グリニド薬使用でも立証されていない.大血管症予防効果の指標としては血糖コントロールは有用性に乏く,大血管症を予防するためには血糖値以外のリスクファクターの積極的管理も重要であろう.