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Saxagliptin and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus.

最終更新日:2013年9月26日

タイトル

サキサグリプチン投与による大血管症二次予防は無効(アジア人を含む)

著者

SAVOR-TIMI 53 Steering Committee and Investigators.

掲載誌

N Engl J Med. 2013 Sep 2. [Epub ahead of print](PubMedへリンクします。)

臨床問題

P(患者): 大血管症の既往または高リスクの2型糖尿病患者(中国,台湾,香港を含む多国・全16492人・男性糖尿病67%・平均年齢65歳・大血管症既往79%・平均HbA1c8.0%) 
I(治療):サキサグリプチン5mg/日(腎機能低下者では半量)投与(8280人)
C(比較対照):プラセボ投与(8212人)
O(アウトカム):心血管死・心筋梗塞・脳梗塞の発症リスクに相違があるか?

研究方法

デザイン:無作為化比較試験
盲検化:あり
追跡期間:2.1年(中央値)・追跡率99%・服薬中断率20%

結果

サキサグリプチン群とプラセボ群の最終HbA1c(%)はそれぞれ7.7, 7.9であった.
両群とも体重変化はなかった.
1次エンドポイントに両群間(7.3% vs 7.2%)で有意差を認めなかった.
低血糖による入院・膵炎・膵癌のリスクに有意差を認めなかったが,心不全による入院(3.5% vs 2.8%)・低血糖(15.3% vs 13.4%)はサキサグリプチン群が有意に高かった.
アウトカムサキサグリプチン群プラセボ群相対リスク信頼区間,p値
心血管死・
心筋梗塞・脳梗塞
7.30% 7.20% 1 0.89~1.12, p<0.001(非劣性検定),
=0.99(優越性検定)
低血糖による入院 0.60% 0.50% 1.22 0.82~1.83,
p=0.33

コメント

血糖コントロールは僅差であったが,その結果,血糖降下以外のDPP-4の阻害による影響が評価しやすくなる.DPP-4阻害薬は,食後高血糖を是正すること・低血糖リスクが小さことい・体重増加を来しにくいことなどから大血管症予防効果が期待されていたが,本研究および同誌に同時発表されたアログリプチンによる介入研究(いずれも高リスク者を対象し,プラセボと比較)によりその効果は現時点では否定的となった.
一次エンドポイントからは「安全性」の印象があるが,心不全による入院が増加する可能性に注意すべきである.
疫学的には食後高血糖は糖尿病合併症や死亡のリスクファクターであるが,食後高血糖是正による予防効果は現時点では超速効型インスリン・αグルコシダーゼ阻害薬・グリニド薬使用でも立証されていない.大血管症予防効果の指標としては血糖コントロールは有用性に乏しく,大血管症を予防するためには血糖値以外のリスクファクターの積極的管理も重要であろう.
本研究で認められた低血糖リスクの増加や微量アルブミン尿の軽快は,血糖依存的であり他種薬でも同様の結果であると推測される.
本研究を解釈する上での注意点:服薬中断率が高いこと,追跡期間が比較的短いこと,プラセボとの比較であること,著者に試験薬の製薬会社員が含まれていることなどから割り引いて解釈する必要がある.

備考

サキサグリプチンとの併用可能薬については「糖尿病標準診療マニュアル」を参照
http://www.ncgm-dmic.jp/doc/diabetes_treatment_manual.pdf

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