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Comparative safety and effectiveness of metformin in patients with diabetes mellitus and heart failure: systematic review of observational studies involving 34,000 patients.
最終更新日:2013年8月8日
タイトル
心不全患者におけるメトホルミンの安全性は他の血糖降下薬と同等以上である可能性がある
著者
Eurich DT, et al.
掲載誌
Circ Heart Fail. 2013;6:395-402.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者): 心不全を合併した糖尿病患者
I(介入): メトホルミン服用(総6624人)
C(比較対照):他の血糖降下薬服用(総27880人・大多数はスルホニル尿素薬)
O(アウトカム):全死亡率・全入院率に差異があるか?
I(介入): メトホルミン服用(総6624人)
C(比較対照):他の血糖降下薬服用(総27880人・大多数はスルホニル尿素薬)
O(アウトカム):全死亡率・全入院率に差異があるか?
研究方法
デザイン:メタアナリシス(無作為化比較試験0件・コホート研究9件)
追跡期間:多くは1~2年
追跡期間:多くは1~2年
結果
無作為化比較試験は存在しなかった.全体の死亡率は34%であった.メトホルミン服用者は対照群より死亡率が低かった.LVEF<30%の患者やCKD合併患者における有意な死亡率差はなかった.メトホルミン群は入院率が有意に低く,乳酸アシドーシスの増加は認めなかった.
総死亡率 | 報告数 | リスク比 | 95%信頼区間 |
---|---|---|---|
心不全全体 | 9件 | 0.8 | 0.74~0.87 |
LVEF<30% | 2件 | 0.91 | 0.72~1.14 |
CKD合併 | 2件 | 0.81 | 0.64~1.02 |
コメント
一般に心不全では低酸素血症を起こしやすく乳酸アシドーシスのリスクが増加するためメトホルミンの投与は推奨されていない.本研究はメトホルミンの適応症の拡大と安全性を評価する上で臨床的意義がある.しかしすべてが観察研究であるため,本研究で仮説を立証することはできない.Confounding by treatment indicationのバイアスが残存するため,割り引いて読む必要がある.現時点では重度心不全・心不全急性増悪・中等度以上のCKD合併の場合にはメトホルミンは投与しない方が妥当である.
備考
サキサグリプチンとの併用可能薬については「糖尿病標準診療マニュアル」を参照 http://www.ncgm-dmic.jp/doc/diabetes_treatment_manual.pdf