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Pulmonary function over 2 years in diabetic patients treated with prandial inhaled Technosphere Insulin or usual antidiabetes treatment: a randomised trial.
最終更新日:2011年11月11日
タイトル
吸入インスリン使用による呼吸機能変化は非使用の場合より悪化はしない
著者
Raskin P, et al.
掲載誌
Diabetes Obes Metab. 2011 Sep 23. [Epub ahead of print](PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):北米・欧州の非喫煙糖尿病患者(平均年齢51歳・男性61%・平均HbA1c 8.7%・平均FEV1 3.259L・平均FVC 4.148L)
I(治療):吸入インスリン(Technosphere Insulin)毎食直前使用(730人)
C(比較対照):通常療法(824人)
O(アウトカム):呼吸機能変化に差異はあるか?
I(治療):吸入インスリン(Technosphere Insulin)毎食直前使用(730人)
C(比較対照):通常療法(824人)
O(アウトカム):呼吸機能変化に差異はあるか?
研究方法
デザイン:無作為化比較試験(非劣性検定)
盲検化:なし
追跡期間:24年(平均値),追跡率93%,治療中断率40%
盲検化:なし
追跡期間:24年(平均値),追跡率93%,治療中断率40%
結果
呼吸機能は両群とも低下した.吸入インスリン群のFEV1の低下は通常療法群と比較し同等以下であった(非劣性マージン50ml/年).投与開始後3ヶ月間は吸入インスリン群のFEV1,FVC,DLCOの低下率のほうが高値であったがその後は両群間に有意差はなかった.HbA1cの変化は吸入インスリン群-0.59%,通常療法群-0.50%で有意差はなかった.吸入インスリンの主な副作用は,吸入数分後の中等度の一過性の咳であった.悪性腫瘍発生率は吸入インスリン群で1.1%,通常療法群で0.3%であった.
アウトカム(通常療法群-吸入インスリン群) | FEV1(L) | FVC(L) | TLC(L) | DLCO(mL/min/mmHg) |
---|---|---|---|---|
差 | 0.037 | 0.034 | 0.005 | 0.269 |
信頼区間 | 0.014~0.060 | 0.008~0.061 | -0.042~0.031 | -0.037~0.574 |
コメント
糖尿病では呼吸機能が非患者より低下することが報告されてきている。吸入インスリンの副作用として呼吸機能低下が示唆されているため、この治療による糖尿病患者での呼吸機能悪化は深刻な副作用となる可能性がある。本研究は、両者の解明へつながる点で臨床的意義が大きい。
第1世代の吸入インスリン(Exubera)は針を使用しない点で使用満足度が高いと期待されていたが実臨床の場においては医療者からも患者からも敬遠され、アメリカでは発売1年度に販売終了となった。本研究で使用された第2世代吸入インスリンは肺の奥深くまで吸入するのに適した構造のパウダー形態であり、その効用が注目されていた。本研究の結果からは呼吸機能低下を助長する可能性は否定されたものの、脱落者が多い点や悪性腫瘍発生率が増加傾向を示した点で妥当性や安全性に疑問点が残る。また、非劣性マージンの臨床的意義も未確立である。糖尿病患者の呼吸機能低下率は非患者より大きいことが示されたが、両群間の年齢差が著明であることにも留意する。
第1世代の吸入インスリン(Exubera)は針を使用しない点で使用満足度が高いと期待されていたが実臨床の場においては医療者からも患者からも敬遠され、アメリカでは発売1年度に販売終了となった。本研究で使用された第2世代吸入インスリンは肺の奥深くまで吸入するのに適した構造のパウダー形態であり、その効用が注目されていた。本研究の結果からは呼吸機能低下を助長する可能性は否定されたものの、脱落者が多い点や悪性腫瘍発生率が増加傾向を示した点で妥当性や安全性に疑問点が残る。また、非劣性マージンの臨床的意義も未確立である。糖尿病患者の呼吸機能低下率は非患者より大きいことが示されたが、両群間の年齢差が著明であることにも留意する。
備考
アリスケン処方に関する最新情報:http://ncgm-dm.jp/naibunpitu/index.html