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Effect of B-vitamin therapy on progression of diabetic nephropathy: a randomized controlled trial.

最終更新日:2011年11月11日

タイトル

高用量ビタミンB投与により糖尿病腎症が悪化する

著者

House AA, et al.

掲載誌

JAMA. 2010 Apr 28;303(16):1603-9.(PubMedへリンクします。)

臨床問題

P(患者):糖尿病腎症合併したカナダ人糖尿病患者(平均年齢60歳・1型18%・男性75%・平均HbA1c 8.1%・平均GFR*54)
I(治療):葉酸(ビタミンB9)2.5ミリグラム・ビタミンB6 25ミリグラム・ビタミンB12 1ミリグラム合剤/日(119人)
C(比較対照):プラセボ(119人)
O(アウトカム):GFR*の低下に差異はあるか?

研究方法

デザイン:無作為化比較試験
盲検化:あり
追跡期間:32ヶ月(平均値),追跡率100%,治療中断率25%

結果

ビタミンB投与群ではプラセボ群より有意にGFRが低下した.血漿ホモシスチン値はビタミンB群で2.2μmol/l低下し,プラセボ群では2.6μmol/l増加した(有意差あり).2次エンドポイントとして,透析導入率に有意差はなかったが心筋梗塞・脳卒中・血行再建術・総死亡の複合評価項目はビタミンB群群で有意に高値であった.
アウトカム高用量ビタミンB群プラセボ群ハザード比(95%信頼区間/p値)絶対リスク差
GFR(1次エンドポイント) -16.5 -10.7   -5.8(-10.6から-1.1/p=0.02)
透析導入率(2次エンドポイント) 12.30% 11.70% 1.1(0.4から2.6/p=0.88) 有意差なし
心筋梗塞・脳卒中・血行再建術・総死亡(2次エンドポイント) 23.50% 14.40% 2.0(1.0から4.0/p=0.04) 9.10%

コメント

高ホモシスチン血症は動脈硬化性疾患のリスクファクターであり,糖尿病腎症に高頻度で合併する.ビタミンB(葉酸・B6・B12)はホモシスチンを低下させるため抗動脈硬化が期待されているが,現時点ではビタミンB投与による心血管イベント・死亡の低下は実証されていない.本研究は糖尿病腎症患者を対象とした点で斬新であり臨床意義が大きい.
本研究では高用量ビタミンB群投与によりホモシスチン値は有意に低下したもののGFRはプラセボと比較して有意に悪化を認めた.また,大血管症リスク増加の可能性も示唆された.この機序として腎機能低下者ではビタミンBの代謝が低下し,毒性を有することが想定されているが詳細は不明であり今後の究明が待たれる.なお,B6単独投与の臨床研究では血清クレアチニンの変化にプラセボと有意差がなかった(online October 27 in the Journal of the American Society of Nephrology).
統計学的解釈上の注意点は,標本数が中規模であること,治療中断率が高率であること,微量アルブミン評価がされていないことである.しかしGFR測定法はゴールドスタンダードであり,詳細機序が解明されるまでは糖尿病腎症患者へのビタミンB投与は推奨されない.

備考

GFR* :放射性核種にて測定

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