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The effects of lowering LDL cholesterol with simvastatin plus ezetimibe in patients with chronic kidney disease (Study of Heart and Renal Protection): a randomised placebo-controlled trial.
最終更新日:2011年7月4日
タイトル
シンバスタチンとエゼチミブの併用は慢性腎臓病患者の大血管症を予防する(糖尿病患者を含む)
著者
Baigent C, et al.
掲載誌
Lancet. 2011 Jun 8. [Epub ahead of print](PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):大血管症の既往のない慢性腎臓病患者 (多国・平均年齢62歳・男性63%・糖尿病23%・LDL-C110mg/dl・平均eGFR27・尿中微量アルブミン中央値約200mg/gCrea・透析33%)
I(治療):シンバスタチン20mg+エゼチミブ10mg(4650人)
C(比較対照):プラセボ(4620人)
O(アウトカム):大血管症(非致死性心筋梗塞・冠動脈死・非出血性脳卒中・動脈血行再建術)発生率は減るか?
I(治療):シンバスタチン20mg+エゼチミブ10mg(4650人)
C(比較対照):プラセボ(4620人)
O(アウトカム):大血管症(非致死性心筋梗塞・冠動脈死・非出血性脳卒中・動脈血行再建術)発生率は減るか?
研究方法
デザイン:無作為化比較試験
盲検化:あり
追跡期間:4.9年間(中央値)・追跡率:100%・服薬中断率:35%
盲検化:あり
追跡期間:4.9年間(中央値)・追跡率:100%・服薬中断率:35%
結果
LDL-Cは実薬群で36mg/dl,プラセボ群で3mg/dl低下した.大血管症発症率は実薬群で有意に低下した.総死亡・筋症・癌の発症率に有意差はなかった.大血管症は糖尿病患者でも有意に低下したが,透析患者では有意差がなかった.
アウトカム | シンバスタチンとエゼチミブの併用投与 | プラセボ投与 | 相対リスク | 信頼区間 |
---|---|---|---|---|
大血管症 | 11.30% | 13.40% | 0.83 | 0.74~0.94 |
死亡 | 24.60% | 24.10% | 1.02 | 0.94~1.11 |
癌 | 9.40% | 9.50% | 有意差なし |
コメント
慢性腎臓病患者は大血管症や死亡のリスクが高いが有効な予防法は確立していない.本研究は,慢性腎臓病患者でのLDL-C低下療法の効果と安全性を実証した点で斬新である.絶対リスク低下(2.1%)を鑑みると臨床上のインパクトも大きい.過去に3件の慢性腎臓病患者対象の大規模臨床研究があるが,いずれも大血管症の有意な低下は認めていなかった.本研究では過去の研究と併せたメタアナリシスも行っており,非致死性心筋梗塞と冠動脈再建において有意な低下を認めた.また,エゼチミブ投与による大血管症の有意な低下を認めた研究もなかった.ただし,本研究では筋症の出現を防ぐためという名目で実薬が2剤併用されたが,スタチンまたはエゼチミブいずれかによる脂質低下が有効だったのか併用による相乗効果のがあったのかは追究できない.さらに,透析患者での有効な予防法は未確立のままである,
解釈に際して次の点に注意する必要がある.
(1)服薬中断率が高い点で妥当性がやや低い,
(2)研究開始後にエンドポイントの変更がある(心臓死→冠動脈死・脳卒中→非出血性脳卒中).
本研究では変更は公表され,変更前後の解析結果とも有意差を認めたが,非公表のうちにエンドポイントが改変
(時に,有意差を捻出するために「改竄」)されることは国内外で少なくない(*)ため気をつけたい.
解釈に際して次の点に注意する必要がある.
(1)服薬中断率が高い点で妥当性がやや低い,
(2)研究開始後にエンドポイントの変更がある(心臓死→冠動脈死・脳卒中→非出血性脳卒中).
本研究では変更は公表され,変更前後の解析結果とも有意差を認めたが,非公表のうちにエンドポイントが改変
(時に,有意差を捻出するために「改竄」)されることは国内外で少なくない(*)ため気をつけたい.
備考
(*)JAMA. 2009;302(9):977-984