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Insulin degludec, an ultra-long-acting basal insulin, once a day or three times a week versus insulin glargine once a day in patients with type 2 diabetes: a 16-week, randomised, open-label, phase 2 trial.
最終更新日:2011年7月4日
タイトル
超持効型インスリン デグルデク(連日または週3回投与)はインスリン グラルギン(連日投与)と同程度の血糖降下作用を持つ(第II相試験)
著者
Zinman B, et al.
掲載誌
Lancet. 2011;377:924-31.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):メトホルミン服用中でインスリン使用歴のない2型糖尿病患者(カナダ/インド/南アフリカ/アメリカ・総数245人・平均年齢約54歳・平均BMI約29.5・平均HbA1c 8.7%)
I(治療):[1]デグルデク(高力価)週3回皮下注射(61人),[2]デグルデク(低力価)連日皮下注射(60人),[3]デグルデク(高力価)連日皮下注射(61人)
C(比較対照):グラルギン連日皮下注射
O(アウトカム):HbA1cに差がでるか?
I(治療):[1]デグルデク(高力価)週3回皮下注射(61人),[2]デグルデク(低力価)連日皮下注射(60人),[3]デグルデク(高力価)連日皮下注射(61人)
C(比較対照):グラルギン連日皮下注射
O(アウトカム):HbA1cに差がでるか?
研究方法
デザイン:無作為化比較試験、[1]群は1回20単位から投与開始,他群は1回10単位から投与開始
盲検化:なし
追跡期間:16週,追跡率:100%,治療中断率:11%
盲検化:なし
追跡期間:16週,追跡率:100%,治療中断率:11%
結果
デグルデク各投与法とも,グラルギンとほぼ同程度のHbA1c低下度であった.重症低血糖頻度は非常に低く,各群の有意差はなかった.デグルデク高力価連日皮下注射群では体重が平均約1キログラム増加したが,他群では増減なかった.
アウトカム | [1]デグルデク(高力価)週3回皮下注射 | [2]デグルデク(低力価)連日皮下注射 | [3]デグルデク(高力価)連日皮下注射 | グラルギン連日皮下注射 |
---|---|---|---|---|
HbA1c変化(SD) | -1.5%(1.1) | -1.3%(1.1) | -1.3%(1.1) | -1.5%(1.1) |
グラルギン群とのHbA1c差(95%信頼区間) | 0.08%(-0.23から0.40) | 0.17%(-0.15から0.48) | 0.28%(-0.04から0.59) | |
体重変化(SD) | 0.1キログラム(2.6) | 0.0キログラム(1.9) | 0.7キログラム(2.5) | -0.3キログラム(2.4) |
コメント
第II相試験であるため,盲険化はなく追跡期間が短い点でバイアスが大きく妥当性が低いため,過大評価しないよう注意する必要がある.実際,各群とも短期間で通常以上のHbA1c低下となっており,生活習慣改善などインスリン以外の要因の関与が示唆される.
臨床的には,長期効果・臨床転帰・副作用が不明であること,強化療法としての効果が不明であること,週3回注射の場合の混乱が予測されることなどから適応が限定される.しかし訪問看護や透析クリニックでのインスリン投与に頼っている場合には治療効果が期待できそうである.長期的な大規模臨床試験が待ち望まれるが,現時点では生活改善による血糖コントロール改善効果(コストを含め)を見直す上でこのエビデンスは臨床的価値があろう.
臨床的には,長期効果・臨床転帰・副作用が不明であること,強化療法としての効果が不明であること,週3回注射の場合の混乱が予測されることなどから適応が限定される.しかし訪問看護や透析クリニックでのインスリン投与に頼っている場合には治療効果が期待できそうである.長期的な大規模臨床試験が待ち望まれるが,現時点では生活改善による血糖コントロール改善効果(コストを含め)を見直す上でこのエビデンスは臨床的価値があろう.