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Prandial inhaled insulin plus basal insulin glargine versus twice daily biaspart insulin for type 2 diabetes: a multicentre randomised trial.
最終更新日:2011年2月8日
タイトル
吸入インスリン+基礎インスリンは混合型インスリンと同等以上の効果を持つ可能性がある
著者
Rosenstock J, et al.
掲載誌
Lancet. 2010;375:2199-201.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者): コントロール不良の2型糖尿病患者(多国籍・男性47%・平均年齢56歳・平均HbA1c 8.7%)
I(治療):毎食時吸入インスリン+眠前基礎インスリン(グラルギン):334人
C(比較対照):混合型インスリン(70%アスパルト-プロタミン+30%アスパルト)1日2回:343人
O(アウトカム):HbA1c低下度は劣らないか?
I(治療):毎食時吸入インスリン+眠前基礎インスリン(グラルギン):334人
C(比較対照):混合型インスリン(70%アスパルト-プロタミン+30%アスパルト)1日2回:343人
O(アウトカム):HbA1c低下度は劣らないか?
研究方法
デザイン:無作為化比較試験(per-protocol解析・非劣性検定:non-inferiority margin 0.4%)
盲検化:なし
追跡期間:52週・追跡率96%・中止率32%(吸入インスリン+基礎インスリン);25%(混合型インスリン)
盲検化:なし
追跡期間:52週・追跡率96%・中止率32%(吸入インスリン+基礎インスリン);25%(混合型インスリン)
結果
吸入インスリン+基礎インスリン群のHbA1c低下度は混合型インスリンと比較し,同等以上であることが示唆された.吸入インスリン+基礎インスリン群では混合型インスリン群よりも体重増加や低血糖頻度が少なかった.吸入インスリン+基礎インスリン群で咳や呼吸機能の悪化が著明であったが,その他の有害事象頻度は同等であった.
アウトカム | 吸入インスリン+基礎インスリン | 混合型インスリン | 両群間差 |
---|---|---|---|
HbA1c低下度(95%信頼区間) | -0.68% (-0.83~-0.53) | -0.76% (-0.90~-0.62) | 0.07% (-0.13~0.27) |
コメント
2006年に初の吸入インスリン(Exubera)が発売されたが財政的理由から2007年に販売中止となった.Exuberaは肺癌リスクを増加させる可能性も示唆された.本試験での吸入インスリン(Technosphere inhaled insulin powder)は呼吸器系副作用は増加したもののその他の有害事象は同頻度の出現であったが,追跡期間が短いため長期的有害事象は不明である.また,持続型吸入インスリンの開発やデバイスの小型化が課題である.
本試験では吸入インスリン+基礎インスリンは混合型インスリンと同等以上のHbA1c低下効果を持つことが示唆された.しかし以下の点で妥当性が高くないことに注意する.
(1)両群とも中止率が高い,
(2)per-protocol解析(当初割り付けられた治療を完遂した人だけを解析)による結果はバイアスが大きい,
(3)非劣性検定で設定されたmargin値の妥当性は未確立である.
本試験では吸入インスリン+基礎インスリンは混合型インスリンと同等以上のHbA1c低下効果を持つことが示唆された.しかし以下の点で妥当性が高くないことに注意する.
(1)両群とも中止率が高い,
(2)per-protocol解析(当初割り付けられた治療を完遂した人だけを解析)による結果はバイアスが大きい,
(3)非劣性検定で設定されたmargin値の妥当性は未確立である.
備考
吸入インスリン(Technosphere inhaled insulin powder)15単位=超速効型インスリン皮下注3.8単位