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Insulin analogs versus human insulin in the treatment of patients with diabetic ketoacidosis: a randomized controlled trial.
最終更新日:2012年5月30日
タイトル
DKA治療においてインスリンアナログはヒトインスリンよりも低血糖リスクが小さい可能性がある
著者
Umpierrez GE, et al.
掲載誌
Diabetes Care. 2009;32:1164-9.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):DKA患者(68人・平均年齢39歳・男性66%・平均BMI28)
I(治療):DKAに対しグルリジン静注治療後、グラルギン1日1回+グルリジン毎食前皮下注射に移行(34人)
C(比較対照):DKAに対しレギュラーインスリン静注治療後、NPH+レギュラーインスリン1日2回皮下注射に移行(34人)
O(アウトカム):皮下注射へ移行後低血糖(血糖値70mg/dl未満)リスクは減少するか?
I(治療):DKAに対しグルリジン静注治療後、グラルギン1日1回+グルリジン毎食前皮下注射に移行(34人)
C(比較対照):DKAに対しレギュラーインスリン静注治療後、NPH+レギュラーインスリン1日2回皮下注射に移行(34人)
O(アウトカム):皮下注射へ移行後低血糖(血糖値70mg/dl未満)リスクは減少するか?
研究方法
デザイン:無作為化比較試験
盲検化:なし
入院期間:約3日±2.2日
盲検化:なし
入院期間:約3日±2.2日
結果
両群とも皮下注射期の平均血糖値に有意差はなかったがインスリンアナログ群のほうが低血糖リスクが少なかった。
両群とも入院期間やDKA消失時間(8.9~9.5時間)に有意差はなかった。
両群とも入院期間やDKA消失時間(8.9~9.5時間)に有意差はなかった。
アウトカム | インスリンアナログ群 | ヒトインスリン群 | p値 |
---|---|---|---|
低血糖発症者 | 5 (15%) | 14 (41%) | 0.03 |
低血糖頻度 | 8 | 26 | 0.019 |
コメント
DKAに対し超速効型インスリン静注により治療することは一般的ではないが、速効型インスリン静注と超速効型インスリンであるグルリジン静注を比較した結果、DKA消失までの平均治療期間やインスリン注入量に差はなく、同等に有効であった。
今回の結果により、DKAの初期治療に対し速効型インスリンだけでなく超速効型インスリンを静注で使用することが新たな選択肢となりうることが示唆された。
そして、DKA消失後、1日1回のグラルギン皮下注+食前のグルリジン皮下注に移行すると、1日2回のNPH+食前の速効型インスリンによる治療と同等の血糖コントロールが得られ、低血糖事象の発生率が低いことが判明した。
しかし、この研究の一次エンドポイントは皮下注時の低血糖頻度であってDKA治療効果ではないこと、使用されたインスリンアナログ製剤は無制限助成金提供源の製品でありことから割り引いて読む必要がある。
今後、大規模な無作為化試験によりインスリンアナログ製剤の有効性と費用対効果をさらに証明していく必要がある。
今回の結果により、DKAの初期治療に対し速効型インスリンだけでなく超速効型インスリンを静注で使用することが新たな選択肢となりうることが示唆された。
そして、DKA消失後、1日1回のグラルギン皮下注+食前のグルリジン皮下注に移行すると、1日2回のNPH+食前の速効型インスリンによる治療と同等の血糖コントロールが得られ、低血糖事象の発生率が低いことが判明した。
しかし、この研究の一次エンドポイントは皮下注時の低血糖頻度であってDKA治療効果ではないこと、使用されたインスリンアナログ製剤は無制限助成金提供源の製品でありことから割り引いて読む必要がある。
今後、大規模な無作為化試験によりインスリンアナログ製剤の有効性と費用対効果をさらに証明していく必要がある。
備考
吸入インスリン(Technosphere inhaled insulin powder)15単位=超速効型インスリン皮下注3.8単位