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Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170,000 participants in 26 randomised trials.
最終更新日:2011年2月8日
タイトル
コレステロール低下療法は心血管イベント・死亡を減少させる(日本人を含む)
著者
Cholesterol Treatment Trialists' Ctt Collaboration.
掲載誌
Lancet. 2010;376:1670-81.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者): 高LDL-コレステロール(LDL-C)血症患者または心血管疾患高リスク患者(全169138人・男性73%・心血管疾患既往59%・糖尿病19%)
I(治療):スタチン投与
C(比較対照):プラセボまたは他療法または低用量スタチン
O(アウトカム):心血管イベント・死亡は減少するか?
I(治療):スタチン投与
C(比較対照):プラセボまたは他療法または低用量スタチン
O(アウトカム):心血管イベント・死亡は減少するか?
研究方法
デザイン:メタアナリシス(1000人以上の対象者で2年以上追跡し、個人データ入手可能な無作為化比較試験26件・日本のデータ1件[*]を含む)
盲検化:あり・なし混在
追跡期間:中央値4.9年
盲検化:あり・なし混在
追跡期間:中央値4.9年
結果
追跡期間中に16070件(糖尿病患者では5414件)イベントが発生した。全死亡は15969人であった。
全心血管イベント・主要冠動脈イベント・冠動脈再建術・脳卒中の発生はいずれも有意に低下した。
全心血管イベント・全死亡はLDL-C 38mg/dl低下ごとにそれぞれ22%・10%有意に低下した。2型糖尿病患者でのイベント低下率は非糖尿病患者での低下率とほぼ同等で有意であった。
また、LDL-C 値78mg/dl未満の患者でも同程度の有意なイベン0.04%ト抑制効果を認めた。
なお、スタチンによる発癌リスクの増加はなかった(LDL-C 38mg/dl低下ごとのリスク比1.0:95%信頼区間0.96~1.04)。
横紋筋融解症は0.01~0.04%増加した。
全心血管イベント・主要冠動脈イベント・冠動脈再建術・脳卒中の発生はいずれも有意に低下した。
全心血管イベント・全死亡はLDL-C 38mg/dl低下ごとにそれぞれ22%・10%有意に低下した。2型糖尿病患者でのイベント低下率は非糖尿病患者での低下率とほぼ同等で有意であった。
また、LDL-C 値78mg/dl未満の患者でも同程度の有意なイベン0.04%ト抑制効果を認めた。
なお、スタチンによる発癌リスクの増加はなかった(LDL-C 38mg/dl低下ごとのリスク比1.0:95%信頼区間0.96~1.04)。
横紋筋融解症は0.01~0.04%増加した。
アウトカム | スタチン群 | 対照群 | リスク比/ LDL-C 38mg/ dl低下 | 95%信頼区間 |
---|---|---|---|---|
全心血管イベント (全患者) |
3.2%/年 | 4.0%/年 | 0.78 | 0.76~0.80 |
全心血管イベント (糖尿病患者) |
4.2%/年 | 5.1%/年 | 0.8 | 0.74~0.86 |
全死亡 | 2.1%/年 | 2.3%/年 | 0.9 | 0.90~0.93 |
コメント
この研究は、長期間追跡の大規模研究で詳細データを解析しているため妥当性・信頼性が高い。また、以前よりも厳格なLDL-C治療目標値が推奨されてきているため臨床的意義も大きい。
このメタアナリシスにより、スタチン投与による臨床的有用性と安全性があらためて確認された。
さらに、この相対リスク低下はLDL-Cの基礎値とは関係なく、LDL-Cを下げるほどさらに効果も増加することが示唆された。
ただし、絶対的なリスクの低下(差)はLDL-Cが低値であるほど減少するため、治療に当たっては臨床的な効果の大きさも検討する必要がある。
この研究から算出される糖尿病患者でのNNT(イベント1件を予防するために必要な治療人数)は約111人/年であるが、日本人の罹患率は欧米人よりも低値であり(*)、NNTはその約6倍(=約700人に1年間スタチンを投与して1人救われる)と推算されるため、治療に際しては臨床的効果の大きさの点で一層慎重にならねばならない。
このメタアナリシスにより、スタチン投与による臨床的有用性と安全性があらためて確認された。
さらに、この相対リスク低下はLDL-Cの基礎値とは関係なく、LDL-Cを下げるほどさらに効果も増加することが示唆された。
ただし、絶対的なリスクの低下(差)はLDL-Cが低値であるほど減少するため、治療に当たっては臨床的な効果の大きさも検討する必要がある。
この研究から算出される糖尿病患者でのNNT(イベント1件を予防するために必要な治療人数)は約111人/年であるが、日本人の罹患率は欧米人よりも低値であり(*)、NNTはその約6倍(=約700人に1年間スタチンを投与して1人救われる)と推算されるため、治療に際しては臨床的効果の大きさの点で一層慎重にならねばならない。
備考
* MEGA Study. Lancet. 2006;368:1155-63.