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Association of diabetes and HbA1c Levels with Gastrointestinal Manifestations
最終更新日:2015年9月2日
タイトル
高血糖は消化管症状と相関しないが内視鏡的異常と相関する
著者
Tseng PH, et al.
掲載誌
Diabetes Care. 2012;35:1053-60(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(対象者):台湾の健診受診者(総数7770人,女性43%,糖尿病722人,糖尿病患者のHbA1c 7.0%)
I(条件):糖尿病患者
C(比較対照):非糖尿病者
O(アウトカム):消化管徴候に相違はあるか?
I(条件):糖尿病患者
C(比較対照):非糖尿病者
O(アウトカム):消化管徴候に相違はあるか?
研究方法
デザイン:横断研究
結果
食道・上部・下部の消化管症状の出現は、DM群の方が低率(DM群30.3%,非DM群35.4%)であった。DM群で最も多く見られたのは、便秘の症状であった。その次に、心窩部痛・胃酸逆流を認めた。内視鏡所見については、DM群ではびらん性食道炎・バレット食道・消化性胃潰瘍・胃腫瘍が非DM群と比べて多かった。また、大腸腫瘍、複数の大腸腫瘍の指摘もDM群で多かった。癌の発見率については差を認めなかった。血糖コントロールと消化器所見の関係については、HbA1cが高値になるほど消化管症状は減少し、一方で、内視鏡検査での異常所見は増加した(表).
HbA1c(%) | <5.5 | 5.5-6.0 | ≧6.0 | トレンドp値 |
---|---|---|---|---|
消化器症状 | 37.7% | 33.3% | 32.1% | <0.001 |
消化性潰瘍所見 | 7.2% | 9.2% | 14.4% | <0.001 |
コメント
これまで糖尿病と糖尿病神経障害から生じる消化管症状の関連を示した疫学研究?(※)は多くあるが,本研究では、糖尿病患者で消化管の器質的な病変の関連を認める一方で、消化管症状との関連は認めなかった。糖尿病の神経障害合併症としての消化管症状は、通常は長期にわたる糖尿病罹患により生じるが、本研究では糖尿病罹病期間の情報は確認できていなかった。筆者らは感度分析として、糖尿病の既往があるかないか、糖尿病薬を使用しているか否か、糖尿病合併症があるかないか、にて消化管症状の有無を解析しているが、DM群と非DM群で消化管症状出現の有意差は認めていない。今回の対象者は健診患者を中心としており、長期罹患の糖尿病患者が少ないことや、血糖コントロールが比較的良好なものが多かったことなどが予想され、こうした対象者の選択バイアスが結果の相違となっている可能性はある。消化管症状で困っている糖尿病患者は少なくない.また,高血糖が消化管腫瘍・癌などに関連していることも提唱されている。日常診療において、糖尿病と消化器疾患の深い関連性について留意する必要がある.
備考
※Arch Intern Med 2001, 161:1989-1996.