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Plasma lipopolysaccharide is closely associated with glycemic control and abdominal obesity: evidence from bariatric surgery.
最終更新日:2014年3月17日
タイトル
血漿リポ多糖類(LPS)値は血糖コントロールおよび腹部肥満との関連性が高い
著者
Troseid M, et al.
掲載誌
Diabetes Care. 2013;36:3627-32(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):肥満ノルウェー人(総数49人,男性20%,糖尿病30%,平均年齢43歳,平均HbA1c6.5%平均BMI45)
I(介入):減量手術
C(比較対照):腹腔鏡下手術健常人(総数17人,男性30%,平均年齢48歳,平均HbA1c5.6%平均BMI25)
O(アウトカム):LPSとHbA1c・脂肪組織量・脂肪組織内細胞量の関連性はあるか?
I(介入):減量手術
C(比較対照):腹腔鏡下手術健常人(総数17人,男性30%,平均年齢48歳,平均HbA1c5.6%平均BMI25)
O(アウトカム):LPSとHbA1c・脂肪組織量・脂肪組織内細胞量の関連性はあるか?
研究方法
デザイン:コホート研究
盲検化:なし
追跡期間:1年間(患者のうち25人は腹部直径が大きすぎてCTスキャンの施行ができなかった)
盲検化:なし
追跡期間:1年間(患者のうち25人は腹部直径が大きすぎてCTスキャンの施行ができなかった)
結果
血漿LPS値はベースラインではコントロール群と比較して肥満患者群で高値であり,減量術後に有意な低下をみとめた.また術前において,HbA1c・内臓脂肪量は共に血液中LPS濃度と強い相関を認めたが,皮下脂肪量とLPSの相関は中程度であった.減量手術後1年の血液中のLPS濃度レベルは低下し,血糖コントロールの改善と関連を認めた(r=0.85,P<0.001).腸管近傍の脂肪組織に比較的多くの細菌DNAを認めた.腸間膜・大網・皮下の脂肪組織の細菌DNA量は腸管から遠い組織になるに従って有意に減少していた.
LPSとの相関 | r | p値 |
---|---|---|
HbA1c | 0.56 | 0.001 |
内臓脂肪量 | 0.61 | <0.001 |
皮下脂肪量 | 0.33 | 0.038 |
コメント
肥満と腸内細菌の変化についての近年着目されている.肥満患者における腸内細菌が腸管透過性の亢進から腸管近傍組織へ移動し慢性炎症につながり得るという仮説をヒトにおいて支持するものであった.肥満のヒトから採取した腸内細菌を無菌マウスへ移植したところ肥満が進行しやせたヒトから採取した腸内細菌を同様にマウスへ移植する実験を行ったところやせ型のままであったという報告もあり(Science 2013;341:6150)肥満と腸内細菌叢の変化の関係は奥深い.
この論文では交絡因子調整が不完全であること(脂質の関与について言及されていない)や脂肪組織内の細菌の由来が未解析であることなどから,因果関係は究明できないことに注意する必要がある.
この論文では交絡因子調整が不完全であること(脂質の関与について言及されていない)や脂肪組織内の細菌の由来が未解析であることなどから,因果関係は究明できないことに注意する必要がある.