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Prevalence and characteristics of painful diabetic neuropathy in a large community-based diabetic population in the U.K.
最終更新日:2012年8月20日
タイトル
糖尿病患者の約3分の1に神経疼痛症状がある
著者
Abbott CA, et al.
掲載誌
Diabetes Care. 2011;34:2220-4.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):イギリスの一般診療所に通院中の糖尿病患者(15692人・平均年齢61歳・男性54%・糖尿病罹患期間5年・2型糖尿病91%)
I(条件):神経疼痛症状あり
C(比較対照):有痛性糖尿病神経障害あり
O(アウトカム):有病率の差異や関連せいはあるか?
I(条件):神経疼痛症状あり
C(比較対照):有痛性糖尿病神経障害あり
O(アウトカム):有病率の差異や関連せいはあるか?
研究方法
デザイン:コホート研究
研究機関:4年間
研究機関:4年間
結果
神経障害の評価はneuropathy disability score(NDS)、神経疼痛症状の評価はneuropathy symptom score(NSS)を用いた。神経疼痛症状の有病率は、症状のないもの(NSS 0-2)52%、軽度(NSS 3-4)14%、中等度(NSS 5-6)18%、重症(NSS 7-9)は16%であり全体で神経疼痛症状があると判断されるもの(NSS ≧5)は、34%であった。神経障害を認め、かつ疼痛症状を持つもの(NSS≧5かつNDS ≧3;有痛性神経障害)は、全体の21%であった。一方、神経障害がないもの(NDS≦2)の26%に疼痛症状を認めていた。
神経障害が重症になるに伴い、症状も重症となることが示された( P< 0.0001)。さらにNSSとNDSの有意な相関 (P< 0.0001)を認めた。1型糖尿病と2型糖尿病の比較では、疼痛症状の有病率 (NSS ≧5) 、有痛性神経障害(NSS≧5かつNDS ≧3)の有病率ともに、2型糖尿病患者で有意に多かった。性別の比較では、女性は疼痛症状の有病率が高く、年齢・糖尿病罹患期間・神経障害の重症度で調整しても、男性より高リスクであった。
神経障害が重症になるに伴い、症状も重症となることが示された( P< 0.0001)。さらにNSSとNDSの有意な相関 (P< 0.0001)を認めた。1型糖尿病と2型糖尿病の比較では、疼痛症状の有病率 (NSS ≧5) 、有痛性神経障害(NSS≧5かつNDS ≧3)の有病率ともに、2型糖尿病患者で有意に多かった。性別の比較では、女性は疼痛症状の有病率が高く、年齢・糖尿病罹患期間・神経障害の重症度で調整しても、男性より高リスクであった。
ファクター | オッズ比 | 95%信頼区間 | p値 |
---|---|---|---|
2型糖尿病 vs 1型糖尿病 | 1.8 | 1.2から2.5 | <0.0001 |
女性 vs 男性 | 1.5 | 1.4から1.6 | <0.0001 |
コメント
本研究では、神経障害の如何にかかわらず、全糖尿病患者の3分の1に神経疼痛症状を認めており、疼痛症状を持つものが非常に多いことが示唆された。さらに、検査により神経障害がないと判断されたものの約4分の1に神経疼痛症状を認めており、検査で判断される神経障害と神経症状には大きな相違があることが明らかとなった。それゆえ、神経障害がないと判断される糖尿病患者でも、神経疼痛症状の有無を聴取する必要があると考えられた。
本研究は、有痛性神経障害を調査した最も規模の大きな研究で、さらに地域参加型研究であることが強みである。一方、糖尿病に起因しない神経疼痛を除外できていない点、疼痛の発症期間や神経疼痛に対する薬剤使用の調査を行っていない点が弱みであろう。これらの欠点を補うデザインの観察研究や介入研究が切望される。
本研究は、有痛性神経障害を調査した最も規模の大きな研究で、さらに地域参加型研究であることが強みである。一方、糖尿病に起因しない神経疼痛を除外できていない点、疼痛の発症期間や神経疼痛に対する薬剤使用の調査を行っていない点が弱みであろう。これらの欠点を補うデザインの観察研究や介入研究が切望される。
備考
NDS,NSSの詳細は本文を参照