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Associations between features of glucose exposure and A1C: the A1C-Derived Average Glucose (ADAG) study.
最終更新日:2011年2月8日
タイトル
食後血糖値よりも食前血糖値の方がHbA1cと相関性が高い可能性がある
著者
Borg R, et al.
掲載誌
Diabetes. 2010;59:1585-90.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(対象者):成人糖尿病患者(1型268人,2型159人)および健常人(80人)(平均年齢48歳,女性54%,平均HbA1c6.8%)
I(検査):HbA1c
C(比較対照):持続血糖測定および自己血糖測定での血糖値による諸指標
Oアウトカム:相互関連性は?
I(検査):HbA1c
C(比較対照):持続血糖測定および自己血糖測定での血糖値による諸指標
Oアウトカム:相互関連性は?
研究方法
デザイン:横断研究
結果
1型糖尿病・2型糖尿病・健常者において,血糖変動や平均血糖・食前血糖・食後血糖の指標の相互関連性は高かった(r=0.39から0.89).また,1型糖尿病者では朝食前・昼食前・昼食後の血糖値がHbA1cとよく関連し、2型糖尿病者ではインスリン治療の有無に関わらず、朝食前・昼食後・夕食前の血糖値がHbA1cとよく関連した。また、1型糖尿病・2型糖尿病で、平均食前血糖の方が平均食後血糖よりHbA1cと強い関連を認めた.
血糖値 | β係数(重回帰) | 信頼区間 | p値 |
---|---|---|---|
朝食前 | 0.122 | 0.086から0.157 | <0.05 |
全食前 | 0.257 | 0.204から0.310 | <0.05 |
全食後 | 0.163 | 0.120から0.260 | <0.05 |
コメント
血糖コントロールの代表的な指標に血糖値とHbA1cがあるが,持続血糖モニターにより連続的な血糖測定が可能となった.日本では2010年4月に保険適用となり臨床的に実用化できるようになった.持続血糖モニターの登場により,本研究の様に今まで血糖コントロールの指標として使用されてきた血糖指標等が日常の血糖変動をどの程度反映しているかを考察できる様になったことは非常に興味深い.ただし,本研究対象者のHbA1cは比較的低値に限定されている点と,このようなHbA1c域では食前より食後血糖値のほうがHbA1cへの寄与率が高いという先行エビデンス(*)と一致しない点で一般性には乏しい.HbA1c等の血糖指標との相関は強くない指標は,血糖についての異なる情報を含んでいる可能性があると考えられる.
持続血糖モニター等の普及に伴い膨大なデータを臨床で取り扱う機会も増えると予測されるが,個々の患者で適切にデータや指標を選択し活用していくことが重要となると考えられる.今後,異なる患者層での研究報告が待ち望まれる.
持続血糖モニター等の普及に伴い膨大なデータを臨床で取り扱う機会も増えると予測されるが,個々の患者で適切にデータや指標を選択し活用していくことが重要となると考えられる.今後,異なる患者層での研究報告が待ち望まれる.
備考
(*)Contributions of fasting and postprandial plasma glucose increments to the overall diurnal hyperglycemia of type 2 diabetic patients: variations with increasing levels of HbA1c. Monnier L, et al.
Diabetes Care. 2003;26:881-5.
Diabetes Care. 2003;26:881-5.