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Novel glucose-sensing technology and hypoglycaemia intype 1 diabetes: a multicentre, non-masked, randomized controlled trial
最終更新日:2016年11月8日
タイトル
1型糖尿病患者に対する新型血糖測定器の使用と低血糖
著者
Bolinder J et al.
掲載誌
Lancet. Volume 388, No. 10057, p2254–2263, 5 November 2016(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):1型糖尿病患者(全241人・介入群男性65%、対照群男性49%・平均年齢43.5歳・平均HbA1c 6.7%・平均BMI 25.0kg/m2・平均糖尿病罹患歴20年・自己申告平均SMBG測定回数1日5.5回)
I(介入):新型血糖測定器(アボット社 Freestyle Libre。日本未承認。CGMと同様に間質の糖濃度(本稿では便宜的に血糖値と表記する)を計測、センサー側には15分ごとに結果が保存される。計測器を皮膚表面のセンサーにかざすと血糖値、ならびに上昇・下降のトレンドが表示されそれまでの8時間分の血糖値が読み込まれ表示される。14日間連続使用可能。SMBGによる較正不要)。6ヶ月間使用
C(比較対照):血糖自己測定器(SMBG)による血糖測定6ヶ月間
O(アウトカム):血糖値が低血糖域(70mg/dL未満)である時間は、 新型血糖測定器とSMBG使用時で差があるか?6ヶ月の介入が終了する最後の14日で検討する。
I(介入):新型血糖測定器(アボット社 Freestyle Libre。日本未承認。CGMと同様に間質の糖濃度(本稿では便宜的に血糖値と表記する)を計測、センサー側には15分ごとに結果が保存される。計測器を皮膚表面のセンサーにかざすと血糖値、ならびに上昇・下降のトレンドが表示されそれまでの8時間分の血糖値が読み込まれ表示される。14日間連続使用可能。SMBGによる較正不要)。6ヶ月間使用
C(比較対照):血糖自己測定器(SMBG)による血糖測定6ヶ月間
O(アウトカム):血糖値が低血糖域(70mg/dL未満)である時間は、 新型血糖測定器とSMBG使用時で差があるか?6ヶ月の介入が終了する最後の14日で検討する。
研究方法
デザイン:23施設、無作為化比較試験
盲検化:なし
試験期間:14日間新型血糖測定器を装着した後(この間は血糖値の表示はされない)、6ヶ月間新型血糖測定器を使う群と、SMBGを用いる群にランダム化割り付けされた。
盲検化:なし
試験期間:14日間新型血糖測定器を装着した後(この間は血糖値の表示はされない)、6ヶ月間新型血糖測定器を使う群と、SMBGを用いる群にランダム化割り付けされた。
結果
- 日内で血糖値が低血糖域(70mg/dL未満)である時間は、新型血糖測定器群で有意に短くなった。
- 日内の低血糖エピソードの回数も、新型血糖測定器群で有意に減少した。
- 夜間(23:00から翌6:00時)の低血糖の回数、時間も新型血糖測定器群で有意に減少した。
- 高血糖域である時間、また適正血糖域である時間は、新型血糖測定器群でそれぞれ、減少し、増加した。
- 終了時のHbA1cは両群で差が無かった。
- MAGE、血糖値の標準偏差などの血糖変動の指標も新型血糖測定器群で有意に減少していた。
- 治療の満足度は新型血糖測定器群で有意に改善した。
- センサーに関連する有害事象は10人に13回起こった。アレルギー反応4件、そう痒感1件、発疹1件、刺入部の症状4件、発赤2件、浮腫1件であった。
- 1日インスリン使用量は、両群で開始時からの変化もなく、差も認められなかった。
アウトカム | 新型血糖測定器群 | SMBG群 | 終了時調整後群間差 | p値 |
日内低血糖 (70mg/dl未満) 時間 |
3.38時間→ 2.03時間 |
3.44時間→ 3.27時間 |
- 1.24時間 | p<0.0001 |
日内低血糖回数 | 1.81回→ 1.32回 |
1.67回→ 1.69回 |
- 0.45回 | p<0.0001 |
夜間 (23:00から翌6:00) 低血糖時間 |
1.32時間→ 0.68時間 |
1.48時間→ 1.23時間 |
- 0.47時間 | p<0.0001 |
日内高血糖 (240mg/dLより上) 時間 |
1.85時間→ 1.67時間 |
1.91時間→ 2.06時間 |
- 0.37時間 | p<0.0001 |
血糖値適正 (70~180mg/dl) |
15.0時間→ 15.8時間 |
14.8時間→ 14.6時間 |
1.0時間 | p=0.0006 |
HbA1c | 6.79%→ 6.94% |
6.78%→ 6.95% |
0.00 | p=0.9556 |
コメント
- 血糖コントロールがよく、試験前のSMBG回数も多い患者が選ばれており、無自覚性低血糖の診断がついている患者は除外されているが、実際にはさまざまな程度の無自覚低血糖が認められている。すべての1型糖尿病患者にこの試験結果を援用するのは難しい。
- 新型血糖測定器群では、SMBGを併用して良いが、その回数は1日0.5回に減少した。新型血糖測定器群では、血糖値を測定するのに相当する、測定器本体をセンサーにかざす回数は一日15.1回であった。
- 低血糖の減少は、新型血糖測定器使用開始後速やかに認められる。
- インスリン治療の変更に関しては、プロトコール等で定められたものが有るわけではなく、患者と医療者がともに変更できるようになっている。
- 具体的に、どのような行動がとられて低血糖が減少したのかは不明である。捕食が増えたのか、インスリンの調整がどのようになされたのかは調査されていない。
- 新型血糖測定器は90%以上の時間、使用されていた。この点も新型血糖測定器群で有意に血糖プロファイルが改善している原因と考えられる。
- 明記はされているが、スポンサー会社が統計解析を行い、依頼されたメディカルライターが論文を執筆している。
備考
- 1型糖尿病にリアルタイムCGMを使った臨床試験のメタ解析では(BMJ 2011;343:d3805)、CGMを装着する時間がながければ長いほど、血糖コントロールを改善しやすくなる、というモデルが提唱されている。