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Continuous glucose monitoring for patients with type 1 diabetes and impaired awareness of hypoglycaemia (IN CONTROL): a randomised, open-label, crossover trial
最終更新日:2016年10月24日
タイトル
無自覚性低血糖のある1型糖尿病患者に対する持続血糖測定器(CGM)の使用
著者
van Beers CAJ et al.
掲載誌
Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Sep 14(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):1型糖尿病患者(全52人・男性54%・平均年齢48.6歳・平均HbA1c 7.5%・平均BMI25.0kg/m2・無自覚低血糖Gold Score 平均5.4点・平均糖尿病罹患歴30.5年)
I(介入):ミニメド社パラダイム・ベオ・インスリンポンプ(日本未承認。低血糖を予測してインスリン持続注入の一時停止機能があるが、この試験ではこの機能は使用していない)をリアルタイムCGMとして16週間使用
C(比較対照):血糖自己測定器(SMBG)による血糖測定16週間。この間も非表示型のCGMは装着。
O(アウトカム):血糖値が適正血糖値域(72mg/dL~180mg/dL)に入っている割合に、 リアルタイムCGM使用時とSMBG使用時で差があるか?
研究方法
デザイン:2施設、クロスオーバー、無作為化比較試験
盲検化:あり
試験期間:6週間の準備期間(糖尿病に関する再教育、介入前CGMデータ測定)ののち、16週間のCGM期間に続けて、12週間隔を開け、16週間のSMBG期間か、その逆でSMBG期間ののちCGM期間とした。
盲検化:あり
試験期間:6週間の準備期間(糖尿病に関する再教育、介入前CGMデータ測定)ののち、16週間のCGM期間に続けて、12週間隔を開け、16週間のSMBG期間か、その逆でSMBG期間ののちCGM期間とした。
結果
- 適正血糖値域(72~180mg/dL)に入っている時間は、CGM期間で有意に長かった。
- 低血糖、高血糖の両者の時間帯ともにCGM期間で減少した。
- 他者の助けを必要とする重症低血糖もCGM期間で減少した。
- 重症低血糖の発生回数は減った(重症低血糖を発症する人数は減少するが、有意ではない)。
- Gold と Clarke の無自覚性低血糖の点数、PAIDなどの生活の質の指標もCGM期とSMBG期で差がなかった。
アウトカム | CGM期間 | SMBG期間 | 絶対差 | 信頼区間、p値 |
適正血糖時間割合 (72~180mg/dL) |
65.0% | 55.4% | 9.6% | 8.0~11.2, p<0.0001 |
低血糖時間割合 (71mg/dl以下) |
6.8% | 11.4% | -4.7% | -5.9~-3.4, p<0.0001 |
高血糖時間割合 (180mg/dLより上) |
28.2% | 33.2% | -5.0% | -6.9~-3.1, p<0.0001 |
低血糖頻度 (週あたり) |
10.1 | 11.1 | -1.1 | -2.1~-0.1, p=0.028 |
低血糖持続時間 (分) |
60.7 | 98.5 | -37.8 | -44.6~-30.9, p<0.0001 |
低血糖時間割合・夜間 (0時から6時) |
7.6% | 13.3% | -5.7% | -8.2~-3.2, p<0.0001 |
重症低血糖 | 10人が14件 | 18人が34件 | オッズ比 0.48 | 0.2~1.0 |
コメント
- Gold Score 4点以上、とは患者の自己申告で低血糖が分かるか否か、五分五分かそれよりも悪い、という状態である。
- クロスオーバー試験であるので、少ない人数で差のある結果が得られている。
- CGM期間のセンサー使用率は89.4%と高い。センサーを使用する意欲があり、表示血糖に応じて生活や治療を変更する対象者が便益を受ける可能性が高い。
- CGMデータを比較しているが、CGM期間(リアルタイム表示で使用)はSMBGによる補正を毎日行い、そのたびに表示血糖値が修正されるが、SMBG期間のCGMは補正があとでまとめて行われる。
- CGMやSMBGの値に応じてどのような対応が取られたのかは記録されておらず、どのような行動や治療変更によってCGM期間で血糖値が適正に保たれたのかは不明である。
備考
- 同じく無自覚性低血糖を示す1型糖尿病患者にCGM+低血糖時のインスリン注入停止ポンプを使った無作為試験がある(JAMA. 2013;310(12):1240-1247.)。センサー使用率は68%で、低血糖は減少したが、平均年齢が18.6歳である。
- 同様に成人の無自覚性低血糖を示す1型糖尿病患者(平均年齢 48.6 歳)で、リアルタイムCGMとSMBGを用いて低血糖を減少させてことが出来るかの無作為試験がある(Diabetes Care 2014;37:2114–2122)。センサー使用率が平均57%、そのためもあってか、リアルタイムCGMとSMBGでは低血糖の減少率に差はないとの結果になった。サブ解析でセンサー使用率が高い被検者ほど低血糖時間が短い結果が得られている。