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Diabetes and cause-specific mortality in a prospective cohort of one million U.S. adults.
最終更新日:2013年3月4日
タイトル
糖尿病により全癌および種々の臓器癌による死亡リスクが有意に増加する
著者
Campbell PT,et al.
掲載誌
Diabetes Care. 2012 Sep;35(9):1835-44.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):癌の既往のないアメリカ人(総数1,053,831人、男性44%)
I(条件):糖尿病あり(52,655人)
C(比較対照):糖尿病なし
O(アウトカム):各種死因のリスクは増加するか?
I(条件):糖尿病あり(52,655人)
C(比較対照):糖尿病なし
O(アウトカム):各種死因のリスクは増加するか?
研究方法
デザイン:コホート研究
盲検化:なし
追跡期間:26年間
盲検化:なし
追跡期間:26年間
結果
追跡期間中に男女計465,160人が死亡した,死因の第1位は男女とも心血管疾患死であり,第2位は癌死であった.男女とも糖尿病では総死亡(女性RR1.90[95% CI:1.87から1.93],男性RR1.73[1.701.75])・両疾患死のリスクが有意に増加した.女性糖尿病冠者の相対死亡リスクは肝臓癌(1.40[1.05から1.86]),膵臓癌(1.31[1.14から1.51]),子宮内膜癌(1.33[1.08から1.65]),結腸癌(1.18[1.04から1.33]),乳癌(1.16[1.03から1.29])であった。男性では肝臓癌([2.26(1.89から2.7]0),口腔咽頭癌(1.44[1.07から1.94]),膵臓癌(1.40[1.23から1.59]),膀胱癌(1.22[1.01から1.47]),結腸癌(1.15[1.03から1.29]),前立腺癌(0.88[0.79から0.97])であった。
アウトカム | 男性死亡率 糖尿病/非糖尿病(対10万人) | 相対リスク(95%信頼区間) | 女性死亡率 糖尿病/非糖尿病(対10万人) | 相対リスク(95%信頼区間) |
---|---|---|---|---|
総死亡 | 4892/2503 | 1.73(1.70から1.75) | 3584/1659 | 1.90(1.87から1.93) |
心血管疾患死 | 2497/1066 | 1.92(1.88から1.96) | 1781/689 | 2.09(2.05から2.14) |
癌死 | 793/692 | 1.09(1.06から1.13) | 499/423 | 1.11(1.06から1.15) |
コメント
糖尿病では全癌の発癌リスク・癌死リスクや種々の臓器別癌の発癌リスクが高まり,前立腺癌の発癌リスクが減少することが国内外で報告されている.日本人糖尿病患者の臓器別癌では肝臓癌と子宮体癌のリスクが有意に高値である.臓器別癌の発癌リスクを分析した報告は多いが,その癌死リスクについての研究は少ない.本研究は,糖尿病患者での臓器別癌による死亡リスクの解明だけでなく,他の死因との同時比較をしている点で斬新であり,臨床的に意義が大きい.ただし,他人種への一般化が困難であること,糖尿病の罹患期間・血糖コントロール状態・治療薬が不明であること,糖尿病の診断が自己申告で不正確である可能性があること,などの限界点に留意して解釈すべきである.ちなみに日本人糖尿病患者の死因第1位は癌である.一方,前立腺癌や乳癌の罹患率は日本人ではアメリカ人より低い.そのため臓器別癌死の順位がそのまま日本人に当てはまるわけではないが,癌は食生活の影響も受けるため本研究結果は今後の参考資料として役立つと考えられる.
備考
(*)Lancet. 2011;378:156-67. http://www.ncgm-dmic.jp/public/articleInfoDetail.do?articleInfoId=505