メニューにジャンプ コンテンツにジャンプ

トップページ > 医師・医療スタッフの方へ > EBM論文情報

Effect of early intensive multifactorial therapy on 5-year cardiovascular outcomes in individuals with type 2 diabetes detected by screening (ADDITION-Europe): a cluster-randomised trial.

最終更新日:2012年8月20日

タイトル

糖尿病大血管症を抑制するための早期多面的介入は無効

著者

Griffin SJ, et al.

掲載誌

Lancet. 2011;378:156-67.(PubMedへリンクします。)

臨床問題

P(患者):検診で新規診断された2型糖尿病患者(デンマーク・オランダ・イギリス人,総数3057人,男性58%,平均年齢60歳,平均HbA1c7.0%,心筋梗塞既往6%,平均BMI32)
I(治療):強化療法(血糖・脂質・血圧の強化管理およびアスピリン投与)
C(比較対照):従来療法
O(アウトカム):大血管症リスクが低下するか?

研究方法

デザイン:無作為化比較試験(pragmatic trial)
盲検化:あり(患者・アウトカム評価者)
追跡期間:平均5.3年間,追跡率99.9%

結果

強化療法群では従来療法群と比較してHbA1c(-0.08%)・LDL-C(-8ミリグラム/デシリットル)・血圧(-2.9/-1.4mmHg)の有意な改善を認めたが体重・喫煙率に有意差はなかった.大血管症(心血管疾患イベント・心血管疾患死・血管再建術・下肢切断)・全死亡とも有意差は認めなかった.低血糖頻度に有意差はなかった.
アウトカム強化療法群従来療法群ハザード比リスク差
大血管症 7.20% 8.50% 0.83(0.65から1.05) -1.3%(NS)
全死亡 6.20% 6.70% 0.91(0.61から1.21) -0.5%(NS)

コメント

本研究は糖尿病の早期発見・早期介入により合併症がどの程度予防できるかを検証した点で臨床的意義が大きい。Steno-2研究では強化療法により大血管症(心血管疾患死を含む)が有意に低下したことが報告されているが,本研究では有意差がなかった。その理由として,本研究ではSteno-2やUKPDS(新規2型糖尿病患者対象)よりもベースラインの大血管症罹患率が低かったこと,体重変化や喫煙率に両群間で有意差がなかったこと,アドヒアレンスが高くなかったことなどが示唆されている.一方,イベント発症曲線は4年目から2群間で解離していることから,追跡期間が短かったことも考えられる.

本研究は日本で現在進行中の類似介入研究J-DOIT3同様のpragmatic trialである.そのような研究では,「従来療法」の内容や治療薬はSteno-2やUKPDSが実施された時の従来療法よりも「強化」されているために,両療法の差異が小さく検出力が予想以上に小さい可能性があること,結果に有意差が出たとしてもどの要素が影響していたのかを究明するのは困難であることに留意する.

備考

*固定打ち療法やインスリンポンプ療法の通常投与量に,血糖値に応じてインスリンを増量することは「調整」といい,スライディングスケールとは区別する.
**周術期患者を対象とした同様の研究でも有用性が実証されている(Diabetes Care 34:256,2011)

このページに関するアンケート

Q1 あなたの年代を教えてください。
Q2 あなたの性別を教えてください。
Q3 あなたと「糖尿病」のかかわりを教えてください。
Q4 このページの情報は分かりやすかったですか?
Q5 このページに対するご意見をお聞かせください。

個人のご病気などについてのご質問やご連絡先などの個人情報に関するご記載はしないでください。こちらにご記載頂いた内容についてはご返答致しません。予めご了承ください。