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Electronic health records and quality of diabetes care.
最終更新日:2013年11月15日
タイトル
電子カルテにより糖尿病診療の質とアウトカムが改善する可能性がある
著者
Cebul RD, et al.
掲載誌
N Engl J Med. 2011;365:825-33.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):アメリカの糖尿病患者(総数27207人・平均年齢58歳・男性48%)
I(条件):電子カルテ使用のクリニック(24547人)
C(比較対照):紙カルテ使用のクリニック(2660人)
O(アウトカム):糖尿病診療の質とアウトカムに差はあるか?
I(条件):電子カルテ使用のクリニック(24547人)
C(比較対照):紙カルテ使用のクリニック(2660人)
O(アウトカム):糖尿病診療の質とアウトカムに差はあるか?
研究方法
デザイン:後ろ向きコホートスタディ
盲検化:なし
追跡期間:1年・データ利用可能率:95%以上
盲検化:なし
追跡期間:1年・データ利用可能率:95%以上
結果
電子カルテ群では紙カルテ群より診療の質・アウトカム(両者とも複合エンドポイント*)とも有意に優れていた.HbA1c測定は電子カルテ群の方が有意に実行率が高かったが,HbA1c<8.0%達成率に有意差はなかった.
達成率 | 電子カルテ群 | 紙カルテ群 | 達成率差(調整後) | 95%信頼区間 |
---|---|---|---|---|
診療の質 | 50.90% | 6.60% | 35.10% | 28.3から41.9% |
アウトカム | 43.70% | 15.70% | 15.20% | 4.5から25.9% |
HbA1c<8.0% | 70.50% | 48.00% | 10.90% | -1.7から23.6% |
コメント
電子カルテ導入による診療の質やアウトカムの改善が期待されている.一方,診療の効率や満足度については不十分な面も多く残されている.この研究では情報化社会における電子カルテの臨床的効果を評価した点で社会的意義が大きい.ほぼ期待通りの結果が報告されたが,電子カルテの効用を盲信する前に以下の課題に留意すべきである.
- 短期間の追跡であるため臨床的アウトカム(合併症や死亡など)が不明
- 費用対効果が不明
- 診療満足度(特に,患者とのアイコンタクトの減少など)が不明
- 医療システムの違いによる電子カルテ構成の差異が大きい(**)
備考
*複合エンドポイント項目
診療の質:HbA1c測定・腎症管理尿中(アルブミン測定・ACEI/ARB投与)・眼底検査・肺炎ワクチン接種
アウトカム:HbA1c<8.0%,血圧<140/80,LDL-C<100・スタチン投与,BMI<30,禁煙
**Ann Fam Med 2012;10:221(3年間追跡の小規模研究.紙カルテ使用クリニックの方がガイドライン遵守率・アウトカム目標達成率が高かった)
診療の質:HbA1c測定・腎症管理尿中(アルブミン測定・ACEI/ARB投与)・眼底検査・肺炎ワクチン接種
アウトカム:HbA1c<8.0%,血圧<140/80,LDL-C<100・スタチン投与,BMI<30,禁煙
**Ann Fam Med 2012;10:221(3年間追跡の小規模研究.紙カルテ使用クリニックの方がガイドライン遵守率・アウトカム目標達成率が高かった)