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Glycemic control, complications, and death in older diabetic patients: the diabetes and aging study.
最終更新日:2012年5月30日
タイトル
高齢糖尿病患者の血糖コントロール目標値はHbA1c(NGSP)<8.0%が妥当
著者
Huang ES, et al.
掲載誌
Diabetes Care. 2011;34:1329-36.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):アメリカの医療保険登録 2型糖尿病患者(総数71092人・60歳以上・平均年齢71歳・男性53%・平均HbA1c7.0%)
I(条件):HbA1c 6.0%以上(1.0%ごとに層別化)
C(比較対照):HbA1c 6.0%未満
O(アウトカム):死亡率・合併症のリスクはどのくらいか?
I(条件):HbA1c 6.0%以上(1.0%ごとに層別化)
C(比較対照):HbA1c 6.0%未満
O(アウトカム):死亡率・合併症のリスクはどのくらいか?
研究方法
デザイン:後ろ向きコホート研究
盲検化:なし
追跡期間:平均3.1年間・追跡率:100%
盲検化:なし
追跡期間:平均3.1年間・追跡率:100%
結果
発症率は,大血管症47.2/1000人年,死亡40.4/1000人年,細小血管症26.7/1000人年,急性代謝疾患1.2/1000人年であった.非致死的合併症の各要素はHbA1cの増加とともに発症増加を認めた.またいずれかの非致死的合併症発症率はHbA1cの増加と共に増加した.死亡率はHbA1cの増加に対してU字型の関係を認めた:HbA1cが6.0%未満に対して6.0-9.0%では低く,11%を超えると増加し,HbA1c 11 %以上では有意に死亡率が高かった.)合併症と死亡をあわせたリスクはHbA1c8.0%以上で有意に高く,これらのパターンは60-69歳,70-79歳及び81歳以上の各年齢グループで一貫性が見られた.
アウトカム | HbA1c 6.0から6.9% | HbA1c 7.0から7.9% | HbA1c 9.0から9.9% | HbA1c ≧11% |
---|---|---|---|---|
死亡 | ハザード比 0.84(CI 0.79から0.90) | 0.83(0.76から0.90) | 1.02(0.88から1.17) | 1.31(1.09から1.57) |
合併症 | 1.09(1.02から1.16) | 1.18(1.10から1.27) | 1.42(1.27から1.58) | 1.86(1.63から2.13) |
死亡または合併症 | 0.98(0.93から1.03) | 1.03(0.97から1.09) | 1.25(1.14から1.37) | 1.63(1.46から1.84) |
コメント
日常臨床において60歳以上の高齢患者が占める割合は大きいが,高齢者に対する厳格な血糖コントロールが適正か判断に窮することがある.本研究より高齢者における血糖コントロールの目標が示唆された.すなわち,非致死的合併症予防にはなるべくHbA1cを下げることが有効であるが,HbA1c6.0%未満では死亡率の上昇がみられたため下げすぎには注意が必要であることが示唆された.
ただし,高齢者では個人差が大きいこと,本研究では追跡期間が短いこ,限定患者を対象とした観察研究であることから,無作為化比較試験でのさらなる追究が必要である.また,HbA1c低値での死亡率上昇の原因については不明確なため,今後そのメカニズムの解明が期待される.
ただし,高齢者では個人差が大きいこと,本研究では追跡期間が短いこ,限定患者を対象とした観察研究であることから,無作為化比較試験でのさらなる追究が必要である.また,HbA1c低値での死亡率上昇の原因については不明確なため,今後そのメカニズムの解明が期待される.
備考
(*)JAMA 2003;290:2159-67.