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Postoperative hyperglycemia and surgical site infection in general surgery patients.
最終更新日:2012年12月11日
タイトル
術後高血糖により手術部位感染のリスクが高まる可能性がある
著者
Ata A, et al.
掲載誌
Arch Surg. 2010;145:858-64.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):入院手術を受けたアメリカ人(1561人)
I(条件):年齢・血糖・糖尿有無・輸血有無・術種等の危険因子
C(比較対照):各因子最低リスク群
O(アウトカム):手術部位感染のリスクは増加するか?
I(条件):年齢・血糖・糖尿有無・輸血有無・術種等の危険因子
C(比較対照):各因子最低リスク群
O(アウトカム):手術部位感染のリスクは増加するか?
研究方法
デザイン:後ろ向きチャートレビュー
追跡期間:入院中
追跡期間:入院中
結果
手術部位感染を合併したのは全体の7.4%であった.一般外科手術に関する多因子分析の結果有意な危険因子は加齢・救急手術・全身状態・手術時間・糖尿病であったが,術後血糖値で調整すると術後血糖値以外はいずれも有意でなくなった.
"
術後血糖値(ミリグラム/デシリットル) | ≦110 | 141-180 | 181-220 | >220 |
---|---|---|---|---|
オッズ比 | 1 | 6.26 | 5.92 | 12.13 |
95%信頼区間 | 2.17から18.17 | 1.73から20.22 | 3.71から39.64 |
コメント
高血糖は感染症の危険因子であることが想定されている.特に糖尿病では種々の機序も加わり易感染状態になると考えられているが妥当性の高いエビデンスはほとんどない.本研究は体系的にデータを解析した点で意義が大きい.しかし後ろ向き研究でありバイアスが大きいこと(実際,信頼区間が非常に広い)や敗血症頻度・入院期間・予後が評価されていないことから,この研究結果の妥当性や一般性は高くはないことに気をつける.
近年のメタアナリシスで,血糖の厳格な管理により非重篤入院患者の感染症リスクが有意に低下することが示された(*).感染症リスク増加の血糖閾値や血糖管理目標値に関する妥当性の高いエビデンスが切望される.
近年のメタアナリシスで,血糖の厳格な管理により非重篤入院患者の感染症リスクが有意に低下することが示された(*).感染症リスク増加の血糖閾値や血糖管理目標値に関する妥当性の高いエビデンスが切望される.
備考
(*)J Clin Endocrinol Metab 97: 49-58, 2012