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Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials.
最終更新日:2011年11月17日
タイトル
厳格な血糖管理をしても総死亡・心血管死のリスクは減少しない
著者
Boussageon R, et al.
掲載誌
BMJ. 2011 Jul 26;343:d4169. doi: 10.1136/bmj.d4169.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(患者):2型糖尿病患者
I(治療):強化血糖管理
C(比較対照):従来管理
O(アウトカム):死亡率が低下するか?
I(治療):強化血糖管理
C(比較対照):従来管理
O(アウトカム):死亡率が低下するか?
研究方法
デザイン:メタアナリシス(無作為化比較試験13件・強化管理18315人・従来管理16218人)
盲検化:なし8件・あり5件
追跡期間:1から10年間(平均5年間)
盲検化:なし8件・あり5件
追跡期間:1から10年間(平均5年間)
結果
両群間に総死亡・心血管死のリスクの有意差を認めなかった。強化管理群では非致死性心筋梗塞(RR 0.85, NNT 117-150, P<0.001)・微量アルブミン尿(RR 0.90, NNT 32-142, P<0.001)のリスクの有意な低下を認めたが重症低血糖リスクの有意な増加を認めた(RR 2.33, NNH 15-52, P<0.001)。
アウトカム | 強化管理群 | 従来管理群 | 99%信頼区間 |
---|---|---|---|
HbA1c | 6.70% | 7.50% | |
総死亡リスク(全9件) | 1.04 | 1 | 0.91から1.19 |
心血管死リスク(全10件) | 1.11 | 1 | 0.86から1.43 |
コメント
疫学調査により、血糖上昇に伴って死亡率が増加することが報告されている。しかし本研究では、血糖を厳格に管理しても一部の合併症は減少するものの死亡率は改善しないことが示された。この結果は、大規模無作為化比較試験(RCT)のメタアナリシス(*)とほぼ合致する。
このメタアナリシスはすべてRCTに基づいているものの、追跡期間の短い研究も含まれているため医学的妥当性がやや不明である。また、厳格管理によるリスク増加の機序(薬剤種類・血糖降下速度などの交絡因子も含め)が未解明である。このことから現時点では、低血糖のリスクの高い患者には厳格な血糖管理は推奨されない、ただし、血糖厳格管理により血糖管理不良よりはアウトカムは改善することから、血糖管理は無意味というのではなく、高血糖は下げるべきだが下げすぎても付加価値はないと解釈すべきである。
このメタアナリシスはすべてRCTに基づいているものの、追跡期間の短い研究も含まれているため医学的妥当性がやや不明である。また、厳格管理によるリスク増加の機序(薬剤種類・血糖降下速度などの交絡因子も含め)が未解明である。このことから現時点では、低血糖のリスクの高い患者には厳格な血糖管理は推奨されない、ただし、血糖厳格管理により血糖管理不良よりはアウトカムは改善することから、血糖管理は無意味というのではなく、高血糖は下げるべきだが下げすぎても付加価値はないと解釈すべきである。
備考
(*)Lancet 2009;373:1765