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Glycaemic control and incidence of heart failure in 20,985 patients with type 1 diabetes: an observational study.

最終更新日:2011年9月5日

タイトル

若年1型糖尿病患者では血糖コントロールが悪いほど心不全の罹患率が高まる

著者

Lind M, et al.

掲載誌

Lancet. 2011;378:140-6.(PubMedへリンクします。)

臨床問題

P(患者):1型糖尿病のスウェーデン成人 (総数20985人・平均年齢39歳・男性55%・平均HbA1c 8.2%・冠動脈疾患既往約5%)
I(条件):HbA1c 6.5%以上(1.0%ごとに区分)
C(比較対照):HbA1c<6.5%
O(アウトカム):心不全による入院リスクは?

研究方法

デザイン:コホート研究
追跡期間:9.0年間(中央値),追跡率100%

結果

追跡期間中,635人(3%)が心不全により入院した(罹患率:3.38/1000人年,).心不全発症の有意なリスクファクターはHbA1c,年齢,糖尿病罹患期間,収縮期高血圧,長期喫煙,肥満であった.HbA1c<6.5%群と比較し,≧10.5%群のハザード比は3.98(2.23から7.14)であった.なお,41から45歳の心不全罹患率は2.4/1000人年(55から64歳の一般スウェーデン人男性の心不全罹患率は2.1/1000人年)であった.
リスクファクターHbA1c(1%増加ごと)年齢(10歳増加ごと)BMI(1キログラム/m2増加ごと)収縮期血圧(10mmHg増加ごと)
ハザード比(95%信頼区間) 1.30(1.21から1.40) 1.64(1.46から1.83)
1.051.03から1.08)
1.15(1.09から1.22)

コメント

糖尿病で心不全のリスクが増加する機序として,advanced glycation endproducts (AGE)の心筋への沈着が左室拡張不全を引き起こすことが想定されている.また,心筋でのブドウ糖利用障害や遊離脂肪酸の代謝障害やカルシウム代謝異常の関与も提唱されている.2型糖尿病では高血糖以外の多くの他因子も関わるため血糖コントロールと心不全罹患の関連性の究明は容易ではないが,この研究は関与因子が少ない1型糖尿病での解析である点で臨床的・研究的意義が高い.また,観察研究ではあるが追跡率が高く追跡期間が長い点で妥当性も高い.1型糖尿病患者では同年代の健常者より心不全リスクが低いことも示されており,若年1型糖尿病患者の診療に際して心不全のリスクも念頭に置く重要性が示唆される.
本研究の解釈には以下の点に留意する.

  1. 心不全の診断基準として入院というイベントデータを利用しているため真のリスクが過小評価されている(無症候・軽症例が見落とされている)可能性がある,
  2. 観察研究であるため,血糖値の厳格なコントロールにより心不全リスクが減少するかは結論できない,
  3. アウトカム改善につながるようなスクリーニング検査や予防策は不明である.

備考

(*)Diabetes Care. 2007;30:1374-83

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