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Hypoglycemic episodes and risk of dementia in older patients with type 2 diabetes mellitus
最終更新日:2011年2月8日
タイトル
低血糖発作により認知症のリスクが増加する可能性がある
著者
Whitmer RA, et al.
掲載誌
JAMA 2009;301:1565-72.(PubMedへリンクします。)
臨床問題
P(対象者):アメリカの医療保険会社加入の2型糖尿病患者(平均年齢65歳・男性55%)
I(条件):低血糖大発作あり(1465人)
C(比較対照):低血糖大発作なし(15202人)
O(アウトカム):認知症の発症リスクは増減するか?
I(条件):低血糖大発作あり(1465人)
C(比較対照):低血糖大発作なし(15202人)
O(アウトカム):認知症の発症リスクは増減するか?
研究方法
デザイン:コホート研究
追跡期間:平均3.8年間・追跡率100%
追跡期間:平均3.8年間・追跡率100%
結果
低血糖発作により認知症のリスクは有意に増加した。
アウトカム | 低血糖発作あり | 低血糖発作なし | 調整ハザード比 | 95%信頼区間 |
---|---|---|---|---|
認知症 | 17.10% | 10.30% | 1.44 | 1.25-1.66 |
コメント
低血糖発作と認知症の関連性は理論的には説明可能であるが、この研究は観察研究であるためバイアスが大きく解釈には注意を要する。認知症の診断は、検査機械による測定値に基づくのではなく臨床診断である。診断基準は客観的に設定されているが、低血糖発作者に対しては低血糖の誘因究明の一環として認知症検査がより頻繁に行われた結果、認知症が発見されやすかった可能性がある。また、交絡因子として認知症発症前に診断されない程度のごく軽い認知症(特に血管性)が潜んでいて、それが低血糖発作と認知症顕性化の両者のリスクを高めていた可能性がある。さらに、アルコール依存症も両者のリスクを高める。両者の関連性は臨床的意義が高いが、この研究をもとに低血糖発作が認知症の誘因であると結論づけるのは短絡的である。
備考
(*)Pepine CJ, et al. A Calcium Antagonist vs a Non-Calcium Antagonist Hypertension Treatment Strategy for Patients With Coronary Artery Disease: The International Verapamil-Trandolapril Study (INVEST): A Randomized Controlled Trial. JAMA, Dec 2003; 290: 2805 - 2816.
(**)ACCORD Study Group. Effects of intensive blood-pressure control in type 2 diabetes mellitus. N Engl J Med. 2010;362:1575-85.
(**)ACCORD Study Group. Effects of intensive blood-pressure control in type 2 diabetes mellitus. N Engl J Med. 2010;362:1575-85.