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ピオグリタゾン塩酸塩を含む薬剤について

2012年1月24日掲載

患者・一般向け情報

わが国の薬事・食品衛生審議会(平成23年6月23日開催)は、ピオグリタゾン塩酸塩(以下 ピオグリタゾンと省略、英語表記は pioglitazone)を含む製剤の使用に関する膀胱癌のリスク上昇のおそれに対し、「重要な基本的事項」として、添付文書の使用上の注意への追記を決定し、添付文書が平成23年6月24日付けで改訂されました。

[重要な基本的注意]への追記

海外で実施した糖尿病患者を対象とした疫学研究において、本剤を投与された患者で膀胱癌の発生リスクが増加するおそれがあり、また、投与期間が長くなるとリスクが増える傾向が認められているので、以下の点に注意すること(「その他の注意」の項参照)。

  • 膀胱癌治療中の患者には投与を避けること。また、特に、膀胱癌の既往を有する患者には本剤の有効性及び危険性を十分に勘案した上で、投与の可否を慎重に判断すること。
  • 投与開始に先立ち、患者又はその家族に膀胱癌発症のリスクを十分に説明してから投与すること。また、投与中に血尿、頻尿、排尿痛等の症状を認めた場合は、直ちに受診するよう患者に指導すること。
  • 投与中は、定期的に尿検査等を実施し、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。また、投与終了後も継続して、十分な観察を行うこと。

[その他の注意]への追記

海外で実施した糖尿病患者を対象とした疫学研究の中間解析において、全体解析では膀胱癌の発生リスクに有意差は認められなかったが(ハザード比 1.2[95%信頼区間 0.9-1.5])、層別解析で本剤の投与期間が2年以上で膀胱癌の発生リスクが有意に増加した(ハザード比 1.4[95%信頼区間 1.03-2.0])。 また、別の疫学研究において、本剤を投与された患者で膀胱癌の発生リスクが有意に増加し(ハザード比 1.22[95%信頼区間 1.05-1.43])、投与期間が1年以上で膀胱癌の発生リスクが有意に増加した(ハザード比 1.34[95%信頼区間 1.02-1.75])。

なお医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、現在これらの医薬品を服用中の方に対して、不明な点は主治医に相談し、ご自身の判断のみで服用を中止したり、服薬量を減らしたりしないように呼びかけています。

今回の添付文書改訂のきっかけとなったのは、2011年6月9日にフランス保健製品衛生安全庁(Afssaps)が、KNPC研究の中間解析報告およびCNAMTS研究の報告をうけ、ピオグリタゾンが膀胱癌発症リスクをわずかに高める可能性があると判断し、声明を発表したことです。ドイツ連邦医薬品医療機器庁もこれに追随し2011年6月10日にピオグリタゾンの新規処方の差し止めを通達、Afssapsも2011年7月11日にピオグリタゾンのフランス市場からの回収を通達しました。

欧州医薬品庁(EMA)は、ピオグリタゾンが膀胱癌発症リスクにどのような影響があるかについてこれまでの報告を分析して2011年7月21日に添付文書の変更推奨についての声明を発表しました。その後2011年10月21日に見解を更新し、「他の治療(メトホルミン)の使用が適切でない時やよく効かない時に、ピオグリタゾンは、一部の2型糖尿病の方にとって有効な治療の選択肢である。」とし(声明の全容についてはこちら(PDF:103KB)をご参照ください)、これに基づく添付文書の改訂を欧州委員会(EC)が承認しました。2012年1月21日EMAにより新しい添付文書が公開され、上記の適応の他、禁忌(膀胱癌(既往も含む)および原因の精査されていない肉眼的血尿のある人)、使用上の注意(ピオグリタゾン処方後は3から6ヵ月ごとに効果を確認し、治療による恩恵があると判断される場合のみこの薬剤を継続すること)などが添付文章に掲載されました。

ピオグリタゾンを含む薬を服用している糖尿病の方は、ご自身の判断のみでこれらの薬剤の服薬を中止したり、服薬量を減らしたりしないでください。ご不明な点は主治医にご相談ください。

国内で認可されているピオグリタゾンを含む薬の商品名は以下のとおりです(2011年9月20日現在)。

先発医薬品

  • アクトス錠15 アクトス錠30
  • アクトスOD錠15 アクトスOD錠30
  • メタクト配合錠LD メタクト配合錠HD
  • ソニアス配合錠LD ソニアス配合錠HD
  • リオベル配合錠LD リオベル配合錠HD

後発医薬品(**の部分(製薬会社名を示す)には、各社に固有の略称が入ります。詳細につきましては診療報酬において加算等の算定対象となる後発医薬品(新規収載分)(外部リンク)の3ページ目をご参照ください)

  • ピオグリタゾン錠15ミリグラム(注)
  • ピオグリタゾン錠 30ミリグラム(注)
  • ピオグリタゾンOD錠15ミリグラム(注)
  • ピオグリタゾンOD錠 30ミリグラム(注)

なおピオグリタゾンなどのチアゾリジン薬(PPARγ作動薬)という種類の薬ですが、国内で認可されているこの種類の糖尿病薬は、ピオグリタゾンのみです。

緻密な計画のもと、長期間にわたり多数の2型糖尿病の方を調査する研究により、2型糖尿病と癌のリスクについての正確な知識が深まることが望まれます。

新しい情報に注意を

上記の情報は現時点のものです。今後、随時状況が変わったり、情報が追加されたりする可能性がありますので、最新情報にご留意ください。当糖尿病情報センターでは今後も正確な情報を提供していく予定です。

詳細について

ピオグリタゾンなどのチアゾリジン薬(PPARγ作動薬)は、実験動物や動物由来の培養細胞などで、ある種の腫瘍の増殖を抑制したり、逆に増殖を促進したりすると報告されています。ピオグリタゾンの添付文書によりますと、ラットおよびマウスに24ヵ月間ピオグリタゾンを投与した試験で、雄のラットで毎日体重あたり3.6mg 以上を与えた群に膀胱腫瘍がみられたとのことです。これをうけ、ピオグリタゾンと膀胱癌の関係を評価するための大規模疫学研究が米国および欧州で続けられており、その結果の一部が最近公表されました。

CNAMTS研究:フランス国内の保健データベース(SNIIRAM)による糖尿病の方のがん発症の後ろ向き研究です。ピオグリタゾン塩酸塩を投与された方(約 16 万人)と、投与されたことのない方(約 133 万人)を比較しています。ピオグリタゾンの使用者においては調査された膀胱癌以外のがん発症リスクが有意に上昇することはなかったものの、膀胱癌の発症リスクは1.22倍(統計学上の95%信頼区間 1.03-1.43倍)であったと推計されました。

KNPC研究:米国北カリフォルニアKaiser Permanente社のデータベースを用いた糖尿病の方のがん発症の観察コホート研究です。ピオグリタゾン塩酸塩を投与された方(約 3万人)と、投与されたことのない方(約 16万人)を比較しています。中間解析の結果、ピオグリタゾンの使用者においては調査されたがん(膀胱癌を含む)の発症リスクが有意に上昇することはなかったものの、24ヵ月以上ピオグリタゾンを使用した群で膀胱癌の発症リスクは1.4倍(統計学上の95%信頼区間 1.03-2.0倍)であったと推計されました(今回の報告は中間解析の報告で、今後も観察を継続してより長期の影響について調査する予定とのことです)。

リンク先

医療関係者向け情報

上の「患者・一般向け情報」に記載した事項に加え、下記のサイトを参照してください。

リンク先

厚生労働省医薬食品局

医薬品・医療機器等安全性情報 No.283 p3-p8

医薬品医療機器総合機構(PMDA)

武田薬品工業株式会社

日本糖尿病学会

CNAMTS研究

KNPC研究

フランス保健製品衛生安全庁(Afssaps)

欧州医薬品庁(EMA)

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