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合併症が進行した2型糖尿病患者は高率に無症候性冠動脈疾患を合併していることが判明
狭心症や心筋梗塞といった心臓の血管のお病気をまとめて冠動脈疾患といいます。糖尿病の方は糖尿病でない方と比べて冠動脈疾患になりやすいことが分かっています。そして、糖尿病の方は冠動脈疾患によりお亡くなりになることも多く、そのお病気の早期発見・早期治療が望まれております。
しかし、今のところどのような方に積極的に心臓の検査をしたらよいのか分かっておりません。最近の研究では糖尿病の合併症が進行すると冠動脈疾患が発症しやすいことが報告されております。そこで私達は合併症が進行した糖尿病患者さんの心臓の血管の動脈硬化がどの程度進んでいるか調査しました。
研究方法
40歳から75歳までの冠動脈疾患を疑う症状や既往のない2型糖尿病患者さんの中で、
- 腎臓の機能が低下した方、
- 糖尿病の眼の合併症が進行した方、
- 手足の血管の動脈硬化が進行した方、
- 脳梗塞や脳出血の既往がある方、
以上の1から4のいずれか1つ以上を満たした患者さんを対象に調査しました。対象となった方に対し負荷心筋シンチグラフィという心臓に負荷をかけた時に心臓の筋肉に十分に血流があるかを調べる検査をしました。さらに血流に異常を認めた患者さんに対しCTもしくはカテーテル検査により心臓の血管を評価しました。心臓の血管が50%以上狭くなっている場合に冠動脈疾患ありとしました。
研究の結果
40歳から75歳の2型糖尿病患者さん1008人のうち、基準を満たし精査することに同意した122人が調査の対象となりました。対象となった方のうち96人(79%)が負荷心筋シンチグラフィで異常所見を認めました。異常所見を認めた方にCTかカテーテル検査で心臓の血管を評価した結果、対象となった方の約半数にあたる59人(53%)に冠動脈疾患を認めました。
解釈
今回の我々の研究で、2型糖尿病の患者さんの中で合併症の進行した方は無症状の冠動脈疾患を高率に合併していることが分かりました。
しかし、検査することで冠動脈疾患を早期に発見できたとしても死亡などが実際に減るかどうかはまだ解明できておらず、今後の研究課題と言えます。
論文名
Tsujimoto T, Kajio H, Takahashi Y, Kishimoto M, Noto H, Yamamoto-Honda R, Kamimura M, Morooka M, Kubota K, Shimbo T, Hiroe M, Noda M: Asymptomatic coronary heart disease in patients with type 2 diabetes with vascular complications:a cross-sectional study.
BMJ Open 1:e000139, 2011