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アジア人・非アジア人のデータ解析の結果、糖尿病では癌が増加することが判明
糖尿病の方は糖尿病でない方と比べて癌になったり癌で死亡したりする可能性が高いことが以前から報告されてきています。しかし、研究法法の違いや分析対象者のかたよりのために確実な研究はありませんでした。私達は論文として発表された研究結果を再分析することで精度の高い統合結果を出す研究をしています。
次に、体質が大きく異なると考えられるアジア人と非アジア人を比較対象としたデータ解析結果(英文医学誌に論文発表)を紹介します。
研究方法
2011年4月4日時点で英文誌に発表されていた糖尿病と癌の関連性に関する論文をデータベースから検索しました。その中から妥当性の高い33研究を精選しメタアナリシスという統計手法で統合解析しました。メタアナリシスとは複数の研究結果をコンピュータを使用して一つの研究としてまとめ上げる分析手段です。
糖尿病と癌の関連性の人種差
糖尿病と癌死の関連性を報告した論文の対象者は総数156,132人で,そのなかの約3%の人が癌で死亡しました。糖尿病と発癌の関連性を報告した論文の対象者は総数993,884人で、そのなかの約8%の人が癌を発症しました。私達の行った統合解析の結果、糖尿病ではアジア人でも非アジア人でも癌が確実に増加することが判明しました(増加倍率:アジア人1.32倍,非アジア人1.16倍)。また、癌発症率も糖尿病の方ではそうでない方と比較して増加することが分かりました(増加倍率:アジア人1.23倍,非アジア人では増加傾向が示唆)。男女別比較では、アジア人男性での発癌増加率は非アジア人男性より確実に高値でした。
解釈
世界的に、糖尿病患者では癌が増加することが報告されてきています。しかし人種差の影響は不明であり、私達の研究は人種差を分析したはじめての研究です。糖尿病が世界的に急速に増加していることを考慮すると、癌リスクが軽度であってもその社会経済的負担は莫大であることが予測されます。日常診療においても研究においても糖尿病予防や効果的な癌早期発見法が日本を含むアジアでは一層重要な課題となるでしょう。
論文名
Noto H, Tsujimoto T, Noda M: Significantly increased risk of cancer in diabetes mellitus patients: A meta-analysis of epidemiological evidence in Asians and non-Asians.
J Diabetes Invest 3:24-33, 2012