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Impact of type of preadmission sulfonylureas on mortality and cardiovascular outcomes in diabetic patients with acute myocardial infarction.

最終更新日:2011年2月8日

タイトル

急性心筋後の予後は入院前服用のスルホニル尿素(SU)薬の種類によって異なる可能性がある

著者

Zeller M, et al.

掲載誌

J Clin Endocrinol Metab. 2010;95:4993-5002.(PubMedへリンクします。)

臨床問題

P(患者):急性心筋梗塞で入院したフランスの2型糖尿病患者(平均年齢70歳・男性41%・心筋梗塞既往25%)
I(治療):SU薬を入院前に服用(459人)
C(比較対照):無投薬(215人)・インスリン療法(341人)・SU薬以外の経口糖尿病治療薬(295人)
O(アウトカム):入院中死亡率は異なるか?

研究方法

デザイン:後ろ向き観察研究
盲検化:なし
追跡期間:詳細不明

結果

87人が入院中に死亡した。入院前SU約服用群では他群よりも死亡率が有意に低かった。再梗塞・脳梗塞・不整脈などの発生には有意差がなかった。SU薬のなかでは、グリクラジドまたはグリベンクラミド服用者の死亡・不整脈・虚血イベントがグリベンクラミドよりも有意に低かった(調整後2.7% vs 7.5%: 前二者間は有意差なし。Propensity score-matched cohortにても有意差あり)。
アウトカム無投薬群インスリン群他経口薬群SU薬群/p値
死亡 8.40% 9.40% 6.40% 3.9%/p=0.014

コメント

SU薬はインスリン濃度上昇のために動脈硬化が進行することが理論上は懸念される。しかしUKPDSでは否定され、逆に大血管症発生を抑制する効果が示唆された。この研究ではSU薬(特に、膵β細胞に特異性の高いグリクラジドまたはグリベンクラミド)服用者の心血管イベントが有意に低くかったことから、SU薬の抗動脈硬化作用がさらに示唆される。
しかし、この分析は統計処理上は妥当性が高いものの、後ろ向き観察研究でありバイアスの入り込む余地が大きいため解釈には注意を要する。さらに、SU薬間の比較は、サブグループ解析であるため一層割り引いて解釈する必要がある。SU薬間の効果の違いは膵β細胞への特異性だけでなく低血糖頻度の違いによる可能性もある。
そもそもこの研究は心筋梗塞後の入院前服用薬の比較であるであり、SU薬の心筋梗塞予防効果には答えていない。あくまで仮説提唱研究として読むべきである。

備考

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