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Voglibose for prevention of type 2 diabetes mellitus: a randomised, double-blind trial in Japanese individuals with impaired glucose tolerance.

最終更新日:2011年2月8日

タイトル

ボグリボースは日本人において耐糖能異常から糖尿病への進展を抑制する

著者

Kawamori R, et al.

掲載誌

Lancet. 2009;373:1607-14.(PubMedへリンクします。)

臨床問題

P(患者):糖尿病への移行リスクの高い耐糖能異常患者(日本人)
(平均空腹時血糖値105mg/dl・平均糖負荷後2時間血糖値164mg/dl・平均年齢56歳・男性60%)
I(治療):ボグリボース0.6mg分3(897人)
C(比較対照):プラセボ(881人)
O(アウトカム):2型糖尿病への進展のリスクは減少するか?

研究方法

デザイン:無作為化比較試験
盲検化:あり
追跡期間:48週(試験中止までの平均値)・追跡率:85%

結果

ボグリボースは糖尿病への進展を抑制した。プラセボ群の進展率は12%であった。
アウトカムボグリボース群プラセボ群ハザード比95%信頼区間/p値
糖尿病への進展率 5.50% 12% 0.595 0.433~0.818/p=0.0014
有害事象 90% 85%    

コメント

この研究はボグリボースの「効果」を認めたためデータ監視委員会の勧告に基づき早期中止となったと論文中に記載されている。しかし、以下の問題点に留意し、大きく割り引いて読む必要がある。
(1)研究開始前に設定すべき客観的な中止条件が明記されておらず、主観的なバイアスを除外できない。
(2)早期中止の場合の効果は、統計学的に過大評価される(*)。
(3)糖尿病への移行リスクが高い人が対象となっているため一般化は困難。
(4)両群とも有害事象発生率がきわめて高値である。
(5)プラセボ群の糖尿病進展率は非常に高値である。生活習慣改善介入をしたことになっているがどの程度実施されていたのか疑わしい。
(6)生活習慣改善だけでも糖尿病への進展はかなり抑制できる日本のエビデンス(**)もあることや薬剤を使用するにしてももっと安価なメトホルミンの有効性が実証されていることから、ボグリボースを糖尿病予防薬として推奨することは妥当とはいえない。
(7)日本糖尿病学会のガイドラインでは糖尿病の初期治療の第一として生活習慣改善が推奨されている。ボグリボースを予防的に服用していながら糖尿病に進展した場合、治療内容に齟齬が生じる。
以上より、糖尿病発症予防策としてボグリボース処方を推奨するのは適切とは現時点ではいえない。

備考

(*)中間解析と早期終了の問題点 その1.週間医学界新聞.2010年8月2日号.p11.
(**)Prevention of type 2 diabetes by lifestyle intervention: a Japanese trial in IGT males.Kosaka K, Noda M, Kuzuya T.Diabetes Res Clin Pract. 2005;67:152-62.

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