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Left Main Trunk Coronary Artery Dissection as a Consequence of Inaccurate Coronary Computed Tomographic Angiography.

最終更新日:2011年4月5日

タイトル

情けが重篤な仇となることがある(冠動脈CTの功罪)

著者

Becker MC, et al.

掲載誌

Arch Intern Med. 2010 Dec 13. [Epub ahead of print](PubMedへリンクします。)

臨床問題

P(患者): 胸痛を主訴とする52歳女性(冠動脈疾患リスク低)
I(条件):冠動脈CTを「念のため」に施行
C(比較対照):(本来なら冠動脈CT施行は適応なし)
O(アウトカム):冠動脈CT結果(偽陽性)に基づき冠動脈造影を施行した際に左主幹動脈の解離を合併した.そのため冠動脈バイパス術を施行したが治療抵抗性の心不全を合併し,心移植が必要となった.

研究方法

デザイン:症例報告

結果

冠動脈CTを不適切に闇雲に施行した結果,まれではあるが悲劇的な転帰をたどった.
冠動脈疾患診断の検査特性感度特異度
冠動脈CT 79-100% 64-85%

コメント

症例報告は臨床研究としては妥当性・一般性が高くないためエビデンスの水準は低い.しかしEBMでは害・副作用に関するエビデンスはその水準を問わず重視する.しかも近視眼的な検査は臨床転帰を悪化させる危険性が高いことを示す教訓的な症例であるため掲載した.
特に冠動脈CTは臨床転帰改善のエビデンス(実証)がないまま急速に普及している.しかも特異度は低い(表)ため,冠動脈疾患のリスクの低い患者に対して「一応」,「念のために」という名目で不必要に濫用すると偽陽性(過剰診断)が増え,被爆に加えてその後の侵襲検査や過剰治療に伴う身体的危険性がいたずらに増加するためそのような検査方針は根拠がないばかりか無責任で支持できない.冠動脈CTの目的は冠動脈狭窄患者を発見することではなく,有症候患者のリスク評価とそれに応じた予防管理を決めることであり,危害より便益が上回る対象者を選別して施行すべきである(*).
画像診断や高感度CRPなどのマーカー検査は,病歴・身体所見・最善のエビデンスに基づく協働方針決定に取って代われるものでもなくそうあるべきでもない.検査は多ければいいというものではなく,少ない方が結果として優れる場合を見抜く能力が必要である.そのためにはまず検査をオーダーする前に検査特性と検査前確率(有病率)などをもとに「検査結果によって方針が変わるか」を必ず問うべきである.方針が変わらないような検査はするべきではないことを銘記したい.治療の対象は検査所見ではなく患者である.

備考

(*) JACC 2009;53:2201-29, Ann Intern Med 2009;151:474-82,496-507, 2011;154:413-20, N Engl J Med 2009;361:990-7.

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