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“Nonfunctional” Adrenal Tumors and the Risk for Incident Diabetes and Cardiovascular Outcomes

最終更新日:2017年2月9日

タイトル

非機能性副腎腫瘍と糖尿病、心血管イベント発症リスク

著者

Lopez D et al.

掲載誌

Ann Intern Med. 2016 Oct 18;165(8):533-542.(PubMedへリンクします。)

臨床問題

P (患者): ハーバード大学の関連病院で腹部CT・MRIを受けた患者

I (指標): 副腎腫瘍ありの患者(全242人・男性22.3%・平均年齢56.8歳・平均BMI 30.9kg/m2・耐糖能異常+2型糖尿病28.5%)

C (比較対照):副腎腫瘍なしの患者(全1237人・男性29.3%・平均年齢59.6歳・平均BMI 28.1kg/m2・耐糖能異常+糖尿病17.3%)

O (アウトカム):高血圧、耐糖能異常+ 糖尿病、脂質異常症、心血管イベント(心筋梗塞、脳梗塞、心不全、心房細動、冠動脈へのインターベンション)、慢性腎臓病

研究方法

デザイン:過去のデータの前向き検討。コホート研究

盲検化:なし
試験期間: 記載なし

結果

  • 腹部CT・MRIを受けた234,267名から、副腎腫瘍あり1346人、副腎腫瘍なし、かつ性・年齢・人種でマッチするように4041人が選ばれた。画像の再解析などで除外され、副腎腫瘍あり242人、副腎腫瘍なし1237人に絞り込まれ、3年以上の経過が追えたそれぞれ、166人と740人の解析が行われた。
  • 耐糖能障害+糖尿病が、調整後リスク比1.87(1.17-2.98)とリスクの上昇が見られた。耐糖能障害の調整後リスク比3.19 (1.83-5.59)、糖尿病0.99 (0.49-1.98)であった。
  • 高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病、心血管イベントの発生は二群間で差が認められなかった。
  • 1 mg デキサメサゾン抑制試験、24時間蓄尿コルチゾールでベースラインにおけるコルチゾール高値を呈する症例を除外しても、耐糖能障害+糖尿病の発症は有意に上昇していた(調整後リスク比はそれぞれ 1.78 (1.03-3.08)、2.10 (1.13-3.91))。
  • 観察期間のBMIの変化で調整しても、副腎腫瘍あり群の耐糖能異常+糖尿病のリスク比は2.05 (1.29-3.27)であった。
  • BMI 30kg/m2 未満の対象に限っても、副腎腫瘍あり群の耐糖能異常+糖尿病のリスク比は2.44 (1.17-5.08)であった。
  • 1 mg デキサメサゾン抑制試験で正常(50 nmol/L以下)と判定された副腎腫瘍あり群を、負荷後のコルチゾール値の四分位で分けると、コルチゾール値の高い群で、より耐糖能障害+糖尿病の発症が高い傾向が見られた。
表1:各アウトカムの群間比較
  副腎腫瘍あり (%) 副腎腫瘍なし(%) 調整後リスク比*(95%信頼区間)
耐糖能異常+糖尿病 30/110 (27.3%) 72/615 (11.7%) 1.87 (1.17-2.98)
高血圧 19/74 (25.7%) 125/400 (31.3) 0.93 (0.55-1.57)
脂質異常症 15/87 (17.2%) 66/461 (14.3%) 0.95 (0.51-1.78)
慢性腎臓病 15/152 (9.9%) 62/715 (8.7%) 1.00 (0.53-1.89)
心血管イベント 13/138 (9.4%) 55/629 (8.7%) 0.72 (0.37-1.39)
*年齢、BMI、性別、人種、喫煙、ベースラインの疾患状態(高血圧、耐糖能異常+ 糖尿病、脂質異常症、心血管イベント、慢性腎臓病)、薬剤の使用状況で調整

コメント

  • 耐糖能障害(prediabetes)は、診断がついていること、もしくはヘモグロビンA1c 5.7~6.4%が二度以上認められること、かつメトホルミン以外の糖尿病薬を使用していない、と定義されている。糖尿病は、診断がついているか、ヘモグロビンA1c6.5%以上が二度認められる、と定義されている。
  • 筆者自身でも認めているが、観察研究であるので、この研究で観察していない交絡因子があって、副腎腫瘍と糖尿病を来している、という解釈はなりたつ。
  • これも記載があるが、スクリーニングされた22万人のうちで1346人しか副腎腫瘍の診断名がついていない(約0.6%)。これは画像診断で1~10%に副腎腫瘍が認められるという以前の報告よりは頻度が低く、患者選択にバイアスが入った可能性は否定できない。すなわち、この研究で選ばれた副腎腫瘍群は特に念入りにフォローアップされている可能性はある。
  • 女性が4分の3を占める。米国でも女性が医療機関を受診し継続してフォローされる率は高いので、バイアスになっている可能性はある。
  • 耐糖能障害は有意に増加していたが、糖尿病の発生率は増加していなかった。論文題名や抄録などに耐糖能障害と書かずに、糖尿病と書いてしまっているのは誤解を招く可能性がある。しかし筆者らの立場は、耐糖能障害と糖尿病は連続するものである、と捉えている。
  • この研究のもう一つのメッセージとしては、1 mg デキサメサゾン試験を行って、「コルチゾール過剰分泌はない」と判断されるレベルのコルチゾールであっても、将来の耐糖能障害を来たす可能性がある、ということである。すなわち、耐糖能障害の発生に関する限り、このカットオフ値(50 nmol/L以下)が妥当かは検討されるべき余地を残す、ということである。
  • 副腎腫瘍の有無にかかわらず、コルチゾールの過剰分泌がある・なしによって、将来の耐糖能障害の発症や心血管イベント発症を比較することが将来の検討課題と考えられるが、現実の臨床では、クッシング症候群を示唆する所見があるか、副腎腫瘍がない限り、デキサメサゾン抑制試験などは行われることがないので、データを集めるのが困難と推測される。

備考

本研究で用いている、1mgデキサメサゾン抑制試験のカットオフ値 50 nmol/L は、本邦で用いられる単位に換算すると、1.8μg/dLとなり、クッシング症候群で用いられるカットオフ値 5μg/dLと比較すると低い値を採用している。

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