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Diabetes and risk of hip fracture in the Singapore Chinese Health Study.

最終更新日:2011年2月8日

タイトル

糖尿病により股関節部骨折のリスクが増加する

著者

Koh WP, et al.

掲載誌

Diabetes Care. 2010;33:1766-70.(PubMedへリンクします。)

臨床問題

P(対象者):45-74歳のシンガポール在住中国人男女
I(条件):糖尿病あり(5668人・男性43%・平均BMI24.0)
C(比較対照): 糖尿病なし(57486人・男44%・平均BMI23.0)
O(アウトカム): 股関節部骨折のリスクは増減するか?

研究方法

デザイン:前向きコホート研究
追跡期間:平均12年間・追跡率100%

結果

股関節部骨折リスクは糖尿病患者で男女とも有意に高かった.BMI層ごとのリスクは冒頭であった.糖尿病罹患期間が長いほどリスクは有意に高値であった(罹患5年未満の調整相対リスク1.40[1.08-1.82]・15年以上2.66[2.04-3.47]・トレンドp<0.0001).
男女別糖尿病患者での骨折人数非糖尿病患者での骨折人数絶対リスク増加調整相対リスク(95%信頼区間)
男女 232(4.1%) 981(1.7%) 2.40% 1.98(1.71から2.29)
46(1.8%) 296(1.2%) 0.60% 1.77(1.29から2.43)
186(5.8%) 685(2.1%) 3.70% 2.06(1.75から2.43)
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コメント

糖尿病では骨折リスクが増加することが白人のメタアナリシスで示されている.その機序としては網膜症・神経障害・末梢動脈疾患・高齢に伴う転倒リスク・チアゾリジン薬の副作用などの関与のほか,高血糖による骨形成抑制が示唆されている.本研究は,アジア人でのリスクを評価した点が斬新で臨床的意義が大きい.リスク増加は白人とほぼ同程度であった.また,白人同様に罹患期間が長いほどリスクが増加した.興味深いことに,一般に肥満は骨折リスクを低下させるが,本研究では骨折リスクは肥満度に無関係であった.
前向きコホート研究であるので妥当性は比較的高いが,この観察研究を解釈する上で以下の点に注意する必要がある.

  1. 糖尿病と骨折の関連性が実証されたが,種々の交絡因子のために直接の因果関係までは確証できない
  2. 骨折の診断はカルテに基づいているが糖尿病は自己申告である(1型・2型の分類も不明)

股関節部骨折により死亡率は2.5倍(*)に増加することも考慮し,転倒リスク評価・骨密度検査・歩行励行・転倒予防策が糖尿病では一層重要であろう.

備考

(*)Ann Intern Med. 2010;152:380-90. Meta-analysis: excess mortality after hip fracture among older women and men. Haentjens P, et al.

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