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Survival as a function of HbA(1c) in people with type 2 diabetes: a retrospective cohort study.

最終更新日:2012年5月30日

タイトル

厳格な血糖管理により死亡のリスクが増加する可能性がある

著者

Currie CJ,et al.

掲載誌

Lancet. 2010;375:481-9.(PubMedへリンクします。)

臨床問題

P(患者):50歳以上のイギリスの2型糖尿病患者 (総数27965人・平均年齢64歳・男性57%・平均HbA1c7.7%)
I(治療):HbA1c最低値群(第一10分位)
C(比較対照):リスク最低値群
O(アウトカム):死亡率は影響されるか?

研究方法

デザイン:コホート研究(1986年から2008年までのイギリスの医療データベース使用)
盲検化:なし
追跡期間:23年間

結果

死亡リスクが最低値であったHbA1c7.5-7.6%帯と比較し、HbA1c最低値群(6.1-6.6%)ではリスクが有意に増加した。HbA1c高値群でもリスクは増加し、全体でU字カーブを描いた。
アウトカムHbA1c 6.1-6.6%HbA1c 7.5-7.6%HbA1c 101.-11.2%
死亡率(95%信頼区間) 1.52(1.32-1.76) 1 1.79(1.56-2.06)

コメント

この分析ではACCORDと同様に厳格な血糖管理により死亡率が増加する結果となった。しかし解釈には注意を要する。ACCORDは無作為化割り付け介入試験であるのに対し本研究は観察研究であることが大きく異なる。前者では血糖厳格管理の結果、死亡率が増加したという因果関係が結論できるが、本研究では交絡因子を完全には排除できないために血糖低下が死亡を増やしたという単純な因果関係は成立しない。確かにHbA1c低値群は死亡率が増加しているが、血糖値(HbA1c)は単なるマーカーで、真の原因とは限らない。例えば死亡率と血糖低下を同時に引き起こす病態として腎不全があるが、この場合は腎不全が真の原因(交絡因子)として潜んでいるのであり血糖低下は死亡と関係あるとはいいきれない。
観察研究は仮説を提唱するのであり実証するのではない。血糖低下による死亡増加のリスクには注意すべきではあるが、血糖値を下げすぎてはいけないと解釈するのではなく、血糖値が予想以上に下がってしまった場合には隠れている交絡因子にこそ注意を向けるべきだと解釈するのが妥当である。

備考

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